第679話 困ってます

 ☆亜美視点☆


 現在少々困ったことになってしまっています。

 大学内で私と奈央ちゃんが実は静かなキャラじゃないことが広まってしまったどころか、全国的に有名な人間であることがバレてしまい、人に囲まれてしまいました。


「うわわわ」

「困ったわねぇ」


 現在も色んな人に囲まれて質問攻めを受けたり、合コンに誘われたりと大変な目に遭っています。

 まさか、ここまでの大騒ぎになるとは思っていなかったよ。

 奈々ちゃん、希望ちゃん、遥ちゃん、紗希ちゃんはどうやって避けているんだろう。

 皆からはそんなに大騒ぎになったっていう話は聞いてないよ。


「こうなったらお金の力で黙らせるしか……」

「奈央ちゃんその発想は危ないよ」

「でもー」


 どうすればこの騒ぎを収められるんだろうか?

 こういう事に詳しかったり慣れてる知り合いなんているわけが……。


「……いるねぇ」

「?」



 ◆◇◆◇◆◇



 というわけで講義が終わり落ち着いたところで、私はとある人物に連絡を取ってみる事にした。


「ね、誰に連絡したの?」

「私達と同じく、大学生で全国的に有名な女の子だよ」

「私達にそんな知り合いいたかしら?」


 奈央ちゃんは首を傾げながら考え込んでいる。 そもそもは奈央ちゃんの人脈から仲良くなった人なんだけどねぇ。

 一応メッセージは送っておいたけど、お相手さんは何分忙しい身。 いつ返事が来るかはわからない。

 さて、今日はお疲れだし帰りに緑風へ寄ろう。

 今日は夕ちゃんも奈々ちゃんもシフト入れてるって言ってたし、話を聞いてもらおう。


 チリンチリーン


「いらっしゃいませー何名様ですか?」

「2人」

「こちらへどうぞー」


 むぅ、どうやら接客は夕ちゃんと奈々ちゃんじゃないみたいだ。


「今日は2人いるの?」

「うん。 多分奥じゃないかな?」

「そうなのね」

「ご注文は……いつもので?」

「はい」

「私はアップルティーをお願いします」

「はい、フルーツパフェとアップルティーですね。 少々お待ちください」


 そういってウェイトレスさんが奥へと消えていった。


「むぅ、夕ちゃんか奈央ちゃん出て来ないかな?」

「どうして? 別に出てきても話とかできないでしょ?」

「どうだろう? 今お客さん他にいないし大丈夫な気がするけど」


 たしかに、2人に迷惑かけちゃうかもしれないね。

 でもなぁ。


 なんて感じで注文した物がやって来るのをを待っていると……。


「お待たせ」

「あ、奈々ちゃん! やほほー」

「はぁ。 やほほじゃないわよ。 はい、フルーツパフェとアップルティー」


 そういって商品をテーブルに並べてくれる、ウェイトレス姿の奈々ちゃん。

 うーん、似合うねぇ。


「奈々ちゃん奈々ちゃん。 休憩まだ?」

「まだよー」

「そっか。 残念……んむんむ」

「何? 何か用事でもあるなら上がった後でよかったら聞くわよ?」

「あとどれぐらいなの?」

「2時間半」


 2時間半パフェで粘るのはちょっと厳しいねぇ。 そういうことなら奈々ちゃんに話を聞いてもらうのは諦めよう。


「困ったことがあるなら言いなさいよ?」

「うん、ありがと」

「ずず……」


 メッセージを送った方も今のところ返事は無い。 これは困ったぞ。

 明日の講義はお休みなのが救いである。



 ◆◇◆◇◆◇



 緑風から家に帰ってくると、希望ちゃんがせっせと夕飯の支度を進めていた。 今日は講義も無かったみたいなので、家事を進めてくれていたようである。


「おかえりー」

「みゃうー」

「希望ちゃん、マロンただいまー」

「おじゃまするわよ」

「あ、奈央ちゃんいらっしゃいー」

「みゃうぅ」

「奈央ちゃんも夕飯いる?」

「必要無いわよー? 今日は隣に泊まってくから自炊するもの」

「はーい」


 奈央ちゃんをお部屋に呼んで、先方からの連絡を待つ。

 相当忙しいのかな? とか思いながら待っていると。


 ピロン


 ようやく返事が来た。

 そのお相手とは……。


「姫百合凛さん?」

「うん」


 連絡を取ってみた相手とは、今をときめくトップアイドルの姫百合凛さん。

 ひょんなことから、私達と友人関係となった姫百合凛さんとは以前一緒に遊んだことがある。

 その時、現役大学生の彼女の正体が学内でバレてしまったことがあり、一時大騒ぎになったという話を聞いた。

 その時にどういう対処をしたのかを聞きたくて、今回姫百合凛さんに連絡してみたのだ。

 電話で話せるという事なので、ここは直接電話で話を聞いてみた。


「ふーむなるほどねー。 清水さんも西條さんも、界隈じゃ超有名人だもんね」

「うんうん。 そこで、姫百合さんが大学でバレた時はどう対応したのかなって」

「今は普通に大学生活送れてるんですわよね?」

「うん。 どう対応したかって言われてもなぁ……特に何かした覚えは無くて、最初は普通に大勢に囲まれて大変だったけど、その内皆が慣れてくるのか飽きてくるのか知らないけど、自然と鎮静化したのよね」

「えぇ……」

「そ、そういうものですの?」

「うん、多分。 ただ、大変だからって皆から逃げたりとか、相手にしないってのは後々わだかまりが出来て大学生活送りにくくなるから、そこらへんは注意したかな?」

「うわわ、今日逃げ回っちゃったよ」

「し、仕方ありませんわよ。 あんなに囲まれたら」

「あははは。 大丈夫ですよ。 彼らもある程度はわかってくれますって。 大人なんですからー」


 そ、そうだよね。 皆は大学生の大人なんだし、それぐらいはわかってくれるよね。


「まあ、出来るアドバイスとしてはいつも通り変わらずに過ごしておくことだよ。 その内向こうもそれが当たり前になって普通に接してくるようになるから。 焦らない焦らない」

「う、うん。 なんか忙しいのにありがとうね」

「いやいやいやいや。 頼ってくれて嬉しかったよ。 なんか友達って感じ」

「そうですわね。 今日は助かりました」

「いえいえ、また何か力になれる事があればいつでもー」


 と、今日のお話はここまでとなりました。 どうやら、次の現場へ移動するまでの休憩時間だったようです。 こ、こんな時間からまだ仕事するんだね。 今をときめくトップアイドルさん。 忙しい時は本当に時間が無いぐらいに忙しいみたいです。

 お疲れ様だよ。



 ◆◇◆◇◆◇



 姫百合さんのお話を聞き終えた私と奈央ちゃんは、1階へ降りてきた。

 奈央ちゃんはこれから近くのスーパーへ行って隣の家で自炊して泊まるとの事。


「じゃ、また」

「うん」


 奈央ちゃんをお見送りしてリビングへ戻ってくると、奈央ちゃんの代わりにお客さんがやって来ていた。


「あ、奈々ちゃん!」

「やほ。 何か話しあるみたいだったから」

「あ、気にしてくれてたんだ」

「当たり前でしょ? どうしたのよ」

「うんと、とりあえずはなんとかなりそうかな」


 一応奈々ちゃんにも今回の事を話しておく。 奈々ちゃんは「あぁ、なるほど」と納得した上で相談相手に姫百合さんを選んだことは正解だとも言っていた。

 話を聞けて安心したらしい奈々ちゃんは、もう帰るのも面倒だから今日は泊まっていくと言い出したので、私は大喜びです。

 明日はお互い講義も無いので夜更かししてお喋りしようと思います。

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