第660話 紗希京都へ行く
☆紗希視点☆
今日は3月27日。
大学の入学式および、京都での生活を始める為に京都へ向かう日よ。
裕樹と舞ちゃんも一緒に京都へ向かうので、お昼過ぎには家を出て駅前へ向かうわ。
「ふむ。 私の部屋もスッキリしたわね」
京都へ送る物はある程度送ってしまったし、家具は向こうで舞ちゃんと見繕う予定。
部屋ももう2人で決めてあるから、明日は家具探しで京都を散策となるわ。
裕樹? 裕樹は近くのアパートを借りたみたい。
普通に歩いて行ける距離だから、夕飯とかは私達の部屋に来るみたいよ。
「いよいよね」
夢へのスタート地点にようやく立つわけね。
私に色々教えてくれたデザイナーのお姉さんも応援してくれている。
何だか高いパソコンや液タブなんかをプレゼントしてくれたので、京都ではそれを使うわよ。
「さて、あとは向こうでのバイトよねー。 デザインの勉強に集中したいとはいえ、先立つ物は必要だし。 バレーボールはサークル活動で鈍らない程度にゆるーく続けるとして、バイトよねー」
デザインとかそういう関係のバイトがあれば良いけど、無難にコンビニかしらね。
「舞ちゃんと色々話し合ってみようかしら」
まずは大学に慣れるとこからよね。
◆◇◆◇◆◇
昼前、家を出るちょっと前の事。
「紗希ー! お友達が来てるわよー」
「ん? 友達? 皆今日は私が京都へ行く日だって知ってるはずだけど……」
そう疑問に思い玄関まで行くと、ちっこいのが1人待っていた。
まったくこの子は。
「奈央、どうしたのよ?」
「そろそろ出発でしょ? 駅まで一緒に行こうと思って」
「きゃははは! 何よ、私がいなくなるのがそんな寂しいわけー?」
「別にそういうわけじゃないわよ。 皆も駅前で待ってるんだから、さっさと行くわよ」
「あれ、寂しくないか。 ってか皆もいるの?」
「えぇ。 見送りしたいって集まってるみたいよ」
「まったく大袈裟な仲間達ねー。 ちょくちょく帰ってくるってのに」
「まあ、しばらく会えなくなるのはたしかだし」
「それもそっか。 荷物持って来るから待っててちょ」
「はいはい」
部屋から荷物を持ってきて両親に声をかけて家を出る。
「さあ、行きましょう」
「ええ」
奈央を引き連れ駅前へと移動を開始した。
「京都着いたら連絡しなさいよ?」
「はいはい」
「身体には気を付けるのよ?」
「わかってるってば」
「あとはー」
「奈央は私の母親か?!」
「ぐぬ……あ、あんたは私がいないとダメなんだもの」
「どっちがよ……」
奈央にしては珍しく狼狽えている。
私が京都へ行っちゃうのがよっぽど寂しいみたいね。
奈央はそんな事はないと思ってたんだけど、案外私に依存してるとこあったのね。
「毎日電話してあげるわよーん」
「べ、別に私はそんな事頼んでないけど、紗希がどうしても毎日私の声が聞きたいっていうなら仕方ないわね。 許可するわ」
「きゃははは」
わかりやすい子だこと。
その後は他愛無い話をしながら駅前へとやって来た。
駅前にはよく見知った仲間達が勢揃いしていた。
裕樹も舞ちゃんも、先に来て皆に何故か馴染んでいる。
「あ、紗希ちゃん!」
「おーす! 皆見送り? ありがとねん」
「京都でも頑張れよ」
「あぁん! 今井君に会えなくなるのだけが心残りだわ。 毎日ラブコールするから!」
「紗希ちゃん!」
亜美ちゃんにこうやって怒られるのも、しばらくお預けね。
「紗希ちゃん、あっちでもボケねこ布教頑張ってね!」
「もちろん!」
希望ちゃんと固く握手を交わす。
「まあ、無理しない程度に頑張りなさいよ。 あんた結構無理するから」
「りょ!」
奈々美は私の事をそれなりに気にしてくれているみたいね。 割と頭や身体能力も近い、いわゆる私のライバルってやつね。
「紗希。 身体も鍛えろよな」
「はいはい。 わかってるわよ」
遥はいつでも身体のことばかりね。
まあ、大事な事ではあるんだけど。
「おー、神崎先輩頑張れー!」
「京都はええとこなんで、休みの日はふらっと観光でも楽しんでください」
「ええ。 今度おすすめ教えてよね」
後輩2人からもエールを送られる。
京都出身の渚からは観光も楽しんで欲しいと言われたわ。
4年もあれば結構観光出来そうね。
京都マスターになれそうだわ。
「まあ、頑張って来いよ」
「佐々木君もペットシッターの仕事頑張ってねん。 帰って来た時は顔出すわよん」
「お元気で」
「北上君もね。 私がいない間、奈央の事頼んだわよ」
「はい」
「まったく。 私は貴女がいなくても別に寂しくないわよ」
「はいはい。 奈央、元気でね。 さっきも言ったけど毎日電話するわ」
「恋人じゃあるまいし……」
「親友でしょ」
そう言って奈央の手を握る。
「またね!」
私達は大きく手を振って、駅のホームへと歩いていく。
「紗希っ!」
「ん?」
奈央に呼ばれて振り返ると、奈央が物凄い勢いで走ってくる。
そして、その勢いのまま私に抱きついて来た。
「紗希ー……」
「奈央、泣いてる?」
「だって……今までずっと一緒だったし……」
寂しくないとか言っておいてこれだもの。
「まったく。 早く行かないと電車行っちゃうんだけど」
「ご、ごめんなさい……」
「よしよし。 いい子いい子」
「ぬぅ……」
「向こう着いたらすぐ連絡するから」
「わかった。 またね」
「じゃ!」
何とか奈央を宥めてもう一度駅へ向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇
電車で東京まで出て、新幹線で京都へと向かう。
新幹線の中でお弁当を食べながら、3人で話をする。
「皆、良い友達だね」
「まあね」
舞ちゃんが言うように、私には勿体ないぐらいに良い仲間よね。
「本当に彼等はいい人達だ。 僕も何度か遊んだけど、賑やかで楽しいね」
「私はたまに清水さんとメールのやり取りするくらいだったかなぁ。 最近はあまりしてなかったけど」
「亜美ちゃんとのメール続いてたんだ!?」
「本当にたまーにだけどね。 元気ー? みたいな」
それでも結構意外だわ。 高校1年の夏に連絡先の交換してたのは知ってるけど、2人に何か盛り上がる話題とかあるのかしらね?
「にしても寂しくなるわー」
今まで当然のように一緒に連んでいた仲間達と、少しの間とはいえ離れ離れになる事が、こんなに寂しいと感じるとは。
「わかるなぁ」
と、舞ちゃんもう共感している。
多分、舞ちゃんにもそういった仲間が沢山いるんでしょうね。
奈央にはあんな風に強がって見せたけど、私だって泣くの我慢してたのよ。
皆にはバレてないと思うけど。
「京都に着いたらとりあえず部屋へ行くでしょ? その後はどうする?」
と、舞ちゃん。
私は顎に手を置き「ふぅむ」と考える。
「疲れてなかったら周辺を散策しましょ」
「そうだね。 今日は外食になりそうだし、食べられる店も探さないとね」
友達と離れ離れになるのはたしかに寂しくはあるけど、新たな生活に対するワクワクも同じぐらいある。
大学生活や、舞ちゃんとのルームシェア。
新しい日々が始まるわよ!
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