第649話 陸族館

 ☆奈々美視点☆


 登別にあるマリンパークニクスという場所を観光している私達はニクス城というエリアを出て、広場へと戻ってきたわよ。

 ここマリンパークニクスの見所はニクス城だけではなく、他にもあるらしい。


「じゃあとりあえず、近場を見ていきましょうか。 えっと、こっちには陸族館っていうのがあるみたい」

「陸族館?」


 聞き慣れない言葉ね。 

 とりあえず奈央の後についていく私達。 陸族館とやらには一体何がいるのかしら。


「ここですわね」

「ふむ。 じゃあ入りましょうか」

「入ろー!」

「あはははー」


 皆と一緒に陸族館へ入っていくのであった。



 ◆◇◆◇◆◇



 陸族館は、いわゆる爬虫類や両生類の類が集められたところのようね。


 私達女子は少々苦手な部類に入るものよね。

 ただ麻美と紗希は爬虫類や両生類は大丈夫なようで「愛嬌があって可愛い」などと意味不明な事を言っている。


「あれはカメさんかな?」

「はぅ、カメさんは大丈夫だよ」


 マタマタというカメらしい。

 

「うわわ」

「何このカメ……」


 マタマタというカメは、私達が良く知ってるようなカメとは見た目が明らかに違う。

 なんというか、怪獣映画に出てくる四足歩行型の巨大怪獣をそのまま小さくしたような姿をしている。

 とてもいかつい見た目をしたカメが、大きな口を開けてボケーっとしながらじっとしている。


「佐々木君、これは何してるのかしら」

「これはエサを待ってるんだよ。 こいつは水中でこうやって大口を開けながら餌を待って、近付いてきた小魚を水ごとパクリと丸呑みしちまうんだ」

「ひぃ……私カメさんが怖くなったよぅ」


 宏太の話を聞いた希望がぶるぶると震え始めた。

 この水場エリアには他のカメもいるみたいね。


「これ知ってるよ! スッポンだよね?」

「ん? おうそうだな」


 亜美が指さしているのはひょっとこみたいな顔をしたカメ。 これがスッポン鍋で有名なスッポンなのね。

 でかいわね……。

 てかカメってこんなでかくなるものなの?


「インドハコスッポンていう種類みたいだな。 俺も詳しくは知らん」

「さすがに細かい種類の差異まではって感じか」

「それでも十分凄いですよ。 さすが宏太です」

「男に褒められてもなぁ」


 他には何がいるのかしらね。


「って、うげ……」

「ん、どうしたのよ奈々美って、うげげ」


 私の変な声に反応した奈央が隣に来て水槽に目を向けると、私と同じような声を上げる。

 他の女子も近付いて来ては少し引いているわ。

 そんな私達の前にいるのはカエル。

 カエルが得意な女子はそうそういないわよ。


「ベルツノガエルだなー」

「何ガエルでも良いわよ……さっさと次の水槽に行くわよ」


 私達はそのカエルの水槽の前をササっとスルーして次へ移動するわ。

 さて次は何かしら? 気持ち悪いのじゃなきゃいいけど。


「……何これ? ウナギ?」

「いやいや、この顔はウーパールーパーだよ」

「これはサイレンって生き物だな。 ペットとしても人気があるらしいぞ。 あんまり見た事はないけどな」

「中々愛らしい顔してるねー」

「きゃはは。 たしかにー」


 カエルに比べればずいぶんマシだわね。 まあたしかに、ペット人気が出てもおかしくはないわ。

 少しの間その見慣れない生き物を見てから次へ。

 何か見たこともない平べったいカエルやウーパールーパーのような生き物の水槽を通り過ぎていく。

 そして現在目の前にはまた不思議なカメが泳いでいる。


「何これ?」


 目の前にいるカメはやたらと首が長く見えるわ。


「見ての通りナガクビガメの一種だろうな」

「へえ。 さっきの怪獣みたいなカメもだけど、色んな形のカメがいるのねー。 家にいるのは普通のちっちゃいカメだけど」


 紗希は家でカメを飼ってるらしいわね。 お父さんが世話してるって話だけど。

 しかしまあ、首が長いわねぇ。


「凄いねぇ。 カメさんも色んな進化をしてるんだねぇ」

「そうだな」


 これから何千年、何万年もかけて、人間も環境に適応していって色々な形に進化してくのかしらね。


 さて次の水槽はっと……。


「ひぇぇ?!」

「うわわ?! どしたの奈央ちゃん?」


 私も水槽の中を覗いてみて、奈央の悲鳴の理由を理解した。


「これはまた……」


 水槽の中には巨大蛇、大アナコンダという蛇が水中から鼻を出すような姿で鎮座している。

 とんでもない大きさだわ。


「4m超って書いてあるー!」

「ば、化け物みたいな蛇ね……」

「アナコンダだなぁ。 でかいのはもっとでかいのがいるらしくて、確認されている中では9mぐらいのものもいるらしいぜ。 資料は残ってないが19mのものが発見されたこともあるって話があるらしい」

「19m……はぅぅぅ……」


 希望は19mの巨大蛇を想像して目を回している。

 でも、実際そんな超巨大蛇が目の前に現れたら、私でも腰を抜かすでしょうね。

 

 次の水槽へ移動してきたわよ。 今度の水槽にはこれはまたでっかいカメが大口を開けている。

 このカメは私でも知ってるわ。


「カミツキガメよね?」

「そうだな。ワニガメってやつだ。 人の指なんか簡単に食いちぎる顎力を持ってるぜ」

「はぅぅ……」


 また希望は目を回してしまったわね。 この子、いちいち反応が面白いんだから。

 でもいかついカメねぇ。


「こいつをペットとして飼ってた好事家が、でかくなりすぎて飼えなくなってその辺の池とかに逃がして問題になったりもするんだ」

「ああ、たまにニュースになったりしてるよね。 人がカミツキガメに嚙まれたって」  

「これに噛まれたら終わりだよー!」

「まあそうでしょうね」


 とんでもなく怖いカメを横目にしながらさらに進むわ。

 この先は陸上の爬虫類、両生類となるみたい。 結局トカゲや蛇ってわけね。

 陸上の方でも見たことのないトカゲや蛇を観察していく私達。

 宏太は喜んでるけど、ウネウネヌメヌメが苦手な女子は、常時悲鳴を上げながら移動している。


「カメさんだけが癒しだよ」

「うんうん」


 私達が唯一普通に見れるのはリクガメだけね。

 のっそりした動きで動いているリクガメを皆が微笑ましく見つめる。

 はぁ、可愛い。


 一通り陸族館を見て回った私達は、陸族館から出る。

 

「うう、ようやく出てこれたよぅ」

「あははは、希望姉はしょうがないなー」

「いやいや、あんたと紗希がおかしいんでしょ」

「ひどいわねー」

「はいはい、次行きますわよー」

「次は何? トカゲと蛇はもうお腹一杯だよ」

「アザラシリングプールってとこに行ってみましょうか」

「アザラシリング? なんだそれ?」

「さぁ? 行ってみればわかるんじゃないかしら」

「あはははー! じゃあ行こうー!」


 麻美がげらげら笑いながら歩きだすが……。


「麻美ーこっちですわよー」

「そっちかー!」


 普通に逆方向に歩いていく麻美を、奈央が呼び止める。

 先々行こうとするのは良いけど、麻美ってば何も考えずに歩き出すから困りものよね。

 奈央と麻美についていくと、アザラシリングプールへと到着した。


「アザラシリングプールってこれ……」

「そういう感じなんだね……」

「これは面白い」


 プールの中にリング状の水槽のようなものが立っており、その中にアザラシが入ってはグルグル回って遊んでいる。

 これはシュールな絵面ね。

 てっきりリング状のプールにアザラシがいるんだと思ってたけど……。

 少しの間そのシュールな絵面を見るのであった。

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