第641話 クマ! クマ! クマ!

 ☆亜美視点☆


 現在私達は、好きなトッピングで海鮮丼を食べられるというお店でお昼ご飯を食べるところだよ。

 テーブルにやって来た海鮮丼を見て食欲も増す。


「宏太くんと遥ちゃんの凄い事になってるよぅ」

「本当にバカなんだから……」

「今に始まった事じゃないですわよ」


 2人の丼に山盛りになっている海の幸達を見て呆れ返る奈々ちゃんと奈央ちゃん。

 まあでもこれは呆れてしまうよね。

 またこれを簡単に食べ尽くしちゃうのがこの2人の凄いところなんだよね。 どんな胃袋をしているのかとても興味があるよ。


「それでは食べながらこの後の予定を話します。 いただきます」

「いただきますー!」


 両手を合わせて海鮮丼に早速手を付けていくよ。

 私の海鮮丼はプリプリのウニ、いくらが白米に乗った物だよ。


「はむ……んむんむ……」


 んー! いくらはプチプチしてるしウニもプリプリで美味しい。 口の中で弾けるよ。


 ガツガツ……


「美味い!」

「んぐんぐ!」


 宏ちゃんと遥ちゃんはいつも通りだねぇ。 凄い勢いでがっついてるよ。

 もうちょっと綺麗に食べられないのかなぁ?


「んむんむ。 それでこの後の予定ですけど、まずは予定通りクマ牧場へ行きます」

「んむんむ」


 皆も海鮮丼を食べながら黙って奈央ちゃんの話を聞いている。

 クマ牧場とは一体どんな牧場なんだろう。 いきなり襲い掛かってきたりしないよね?

 いや、さすがに観光スポットになってるような所だし安全面はしっかりしてるよね。


「その後は南に進路を取って時代村というとこへ行きます」

「時代村? 何それー?」

「江戸時代の日本を再現したテーマパークですわよ」

「江戸時代かー。 ちょっと楽しみだね」


 そこもどんなテーマパークなのか気になるよ。

 今日はそこを見た後は旅館でゆっくりタイムに突入するということ。

 明日は最終日だけど……。


「明日は空港へ行く前に少し観光してから自家用機で帰ります」

「はーい」


 最終日の予定も出たことで、この卒業旅行の終わりが近付いてきたことを実感するね。

 楽しい時間はいつかは終わるもの。 でも、またすぐに新しい楽しみがやって来るものでもある。

 この旅行の後には何が待っているんだろう。


「んぐんぐ! こりゃ美味い」


 相変わらずガツガツ食べている宏ちゃんと遥ちゃんはちゃんと話を聞いていたんだろうか?

 多分聞いてないけど、2人は食べるのが楽しみ的なとこあるから良いのかもしれない。


「とりあえずクマね」

「んぐ。 奈々美VSクマが楽しみだぜ」

「戦わないわよバカ」

「宏ちゃん話聞いてたんだね」

「当たり前だ。 飯食いながらでも話聞くぐらいは簡単にできるっての。 んぐんぐ」



 ふぅむ、宏ちゃんの事を少しナメていたね。 意外としっかり聞いてるんだねぇ。



 ◆◇◆◇◆◇



 お昼ご飯の海鮮丼を美味しくいただいた私達は、この近くにあるというクマ牧場へと向かう事にした。

 ここからバスで15分程で着くという事なので少しだけバスで移動。

 約15分バスで移動した場所でバスは停車する。


「さあさあ着いたわよ」

「おりょー? ロープウェイ乗ってくの?」

「えぇ。 2組に分かれてロープウェイに乗って行きますわよ」


 どうやらクマ牧場は山の上にあるようです。  ロープウェイで上に行くという事なので2組に分かれる。

 私のグループは私に夕ちゃん、希望ちゃん、麻美ちゃん、紗希ちゃんの5名。

 残り5名は前のロープウェイに乗っている。

 こっちの5名は見てもわかるように夕ちゃん大好き4人組のメンバー。

 なんというか夕ちゃんも大変だねぇ。


「……」

「夕也兄ィの隣ゲットー」

「はぅぅ、高いよぅ! 落ちないよね?」

「大丈夫でしょ」

「希望ちゃんは怖がりねー」

「はぅ」


 賑やかだねぇ。 特に麻美ちゃんと紗希ちゃんが揃うとねぇ。

 それにしても凄い景色だよ。 このロープウェイから見る風景だけでも一見の価値はあると思う。


 およそ5分ぐらいロープウェイで登ると、クマ牧場に到着。


「到着ー」

「皆揃いましたわね?」

「おう」

「ではクマ牧場の観光開始と行きますか。 まずは第一牧場と呼ばれるエリアらしいですわ。 オスクマの牧場のようね」

「襲ってこないよね?」


 希望ちゃんは心配そうに質問するが、奈央ちゃんは「大丈夫でしょ」と、軽い感じで返した。

 危険なら観光スポットにならないしね。


「そっか、大丈夫だよね」

「ではレッツゴー」

「ゴー」


 まずは第一牧場を見て回ることにする。

 

「おーいるいる! 佐々木君、あれ全部オス?」

「俺に聞くなよな。 まあ、オスしかいないエリアらしいからそうなんだろう」

「エゾヒグマだって。 北海道にしかいないのかな?」

「そうだなぁ。 北海道の森林に生息する日本最大の陸上生物だ。 デカい個体は2mを越えて450kgにもなるらしいぜ」

「さすが生き物博士だね宏ちゃん」

「ふふん、まあな」

「こういう所に来ると輝きますわねー」

「惚れたか西條?」

「惚れるわけないでしょ……」


 昔は惚れてたらしいけど今はそういう対象にはならないみたいだね。


「やっぱり生きてるクマさんはあんまり可愛くないよぅ」

「そうかしら?」

「意外と愛嬌あって可愛いよな?」

「あれなんてダレて寝そべってるわよー?」

「なははー、可愛いー」


 皆からは意外と可愛いという評価を得ているクマさん達。 希望ちゃんだけはそうでもないという評価らしい。 希望ちゃんあくまでもぬいぐるみのクマさん基準らしい。


「ねえあれはー?」

「んん?」


 麻美ちゃんが指さした先には、クマさん達の同じ目線の高さの窓ガラスからクマさん達を観察している他のお客さん達の姿が見える。

 あんな所から観察できるんだねぇ。

 奈央ちゃんがパンフレットを開いて確認してくれている。


「人のオリというらしいわ」

「人のオリ?」


 奈々ちゃんが首を傾げる。


「えぇ。 人間オリりに入れられている体でクマを近くから見ることが出来るみたい。 クマから狙われている気分を味わえるそうよ」

「なんか物騒ね」

「でも近くで見れるんならいいじゃーん」

「行きましょー!」

「はぅ、大丈夫かなぁ」


 不安そうな希望ちゃんを引っ張って私達も人のオリへと向かう。


 人のオリへと入るとと、周りにクマさん達が寄ってきてかなり迫力満点の江連が展開されていた。


「近くで見ると大きいんだねぇ……」

「身長はそうでもないけど体重がなぁ」


 さっきの宏ちゃんの話だと、大きいので450㎏って話だもんね。

 たまにニュースでクマに襲われたなんてのを見るけど、こんなのに襲われたらひとたまりもないよねぇ。 でも、そんなニュースの中でもクマを追い返したとか、投げ飛ばしたみたいなとんでもないニュースがあるのも事実。 一体どうやったんだろうねぇ。


「はぅ、怖いよぅ」

「大丈夫よ。 ここは安全じゃない」

「はぅぅ」


 希望ちゃん、これでクマさんが嫌いになれば良いけど大丈夫かなぁ?

 帰ったらクマさんのぬいぐるみ片付けちゃったりしないよね?


「ほら、あれなんか見てみなさいよ。 ボケーっとこっち見て可愛いじゃない」

「そうかなぁ?」


 希望ちゃんはクマさんをじっと見つめながら首を傾げるのであった。

 

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