第639話 登別観光開始
☆希望視点☆
登別へ向かうバスに乗りそろそろ2時間になる。
奈央ちゃんの当初の話では、そろそろ今日宿泊予定の宿に到着する筈です。
その証拠に、バスの外は立派な温泉街の風景が広がっている。
「もうすぐで旅館に着きますわ」
「お、やっとだな」
「ふぁーっ……2時間もシートに座ってると腰痛くなるわねー」
「奈々ちゃん、年寄りくさ……」
ポカッ!
「いったーい……奈々ちゃん手はあげないでよぉ」
「口は災いの元ってね」
「あぅ……」
亜美ちゃんは頭をさすり涙目になりながら「痛いよぉー」と呟いていた。
亜美ちゃんも余計な事を言わなきゃ良いのに。
「皆さん、着きましたわよー」
「おー!」
どうやらバスは、本日宿泊予定の旅館に到着したようだよ。
バスから降りると目の前には、これまた立派な旅館が建っていた。
建物の裏側からは湯気が立ち登り、天然温泉街特有の硫黄の匂いが漂っているよぅ。
「ではではとりあえずチェックインして大きな荷物を置いたら、登別の観光へと繰り出しますわよ!」
「おー!」
という事で旅館に入り、代表して奈央ちゃんがフロントへ向かう。
少しすると鍵を受け取り戻ってきた。
鍵はやっぱり1つ。 今日も大部屋のようです。
奈央ちゃんに続いて部屋へと移動する。
1階の一番奥の広くなっている一角に部屋はあった。
「これまたまた立派な部屋ね」
奈々美ちゃんがそう漏らす。
それも仕方ないよ。 さっきまでいた小樽の旅館の部屋にも負けず劣らずの広い部屋に、大型テレビは当たり前。 窓の外には部屋専用の大きな露天風呂。
他にも色々な設備が整っている。
「こんな部屋に10人。 奈央、今回の旅費に一体どれだけかけてるのよ?」
「え? 150万ぐらいですわよ?」
何だか普通に言ってるけど、一人当たり15万円って考えると凄いんじゃないかな?
何だか感覚がおかしくなりそうだよぅ。
「さ、荷物を置きましたわね?」
「はーい」
「ではまずは地獄谷の散策しましょう! 登別といえばここを見なきゃね」
という事で、登別観光スタートだよぅ。
ここから登別地獄谷という場所へは、目と鼻の先という事。
バスで移動すれば約20分で到着する。
「はい到着」
もぅ到着したよぅ。 あっという間だったね。
まずは登別地獄谷観光の玄関口と言われる、パークサービスセンターへ入ってきた。
入り口の案内板を確認すると、色々な散策コースがあるみたいだよ。
「今日は目一杯楽しむために1時間半の散策コースを予約してありますわよ。 ガイドの人も予約してあるからゆっくり楽しみましょ」
「はーい!」
奈央ちゃんが話をつけてくれてガイドさん同行の元で散策を開始だよ。
まず最初に目指すのは、鉄泉池と呼ばれるスポットらしいよぅ。
「そこには何があるんですか?」
気になったのか亜美ちゃんがガイドさんに質問している。
「間欠泉がありますよ」
「間欠泉!」
「間欠泉ってクジラの潮吹きみたいに、パシャーッて吹き出して来るやつだよね?」
麻美ちゃんが興奮気味なっている。 テレビとかで見た事があるけど、結構凄い勢いで吹き出すんだよね。
ちょっと怖いけど楽しみでもある。
私達は、鉄泉池へと続く遊歩道へと入って来た。
観光スポットなだけあって、しっかりと整備されてるんだね。
「湯気がモクモクだわね」
「この辺りは噴気孔や湧出口が点在してますからね。 危ないんで遊歩道の柵から乗り出さないようしてくださいね」
「凄いねー。 ちょっと写真撮って渚にも送ってあげよー」
麻美ちゃんがデジカメで写真をパシャパシャ撮り始めた。 それに連れて皆もスマホやデジカメで撮影を始める。
「希望ちゃん落ちないようにねぇ」
「落ちないよぅ」
いくら私でもそこまでは鈍臭くないかな。
遊歩道を歩いて行くと、途中で別れ道が現れた。
片方は下へ向かう階段になっていて、ガイドさんはそっちへと向かっていくようだ。
私達はついていくしかないので、ガイドさんの後をついて歩く。
「この先には薬師如来堂という場所があるんですよ。 その昔、そこに湧く温泉で目を洗った人の目の病気が治ったという伝承が残る場所なんですよ。
「なるほどー」
「色々あるのねー」
「少ししたら鉄泉池に向かいますね」
「はーい」
少しの間、薬師如来堂を見学した私達は、ガイドさんの移動再開と共に如来堂を後にして、鉄泉池へと移動を始める。
「鉄泉池は地獄谷の中央に位置する間欠泉です。 先程言っておられましたが、鉄泉池の間欠泉はテレビとかで見るような高さまで噴き上がるような間欠泉ではないので、目の前で見る事ができますよ」
「おお、そんな間欠泉もあるんだねぇ」
「はい。 とはいえ80℃近いお湯が湧き出すので気を付けて下さいね」
ガイドさんも丁寧に案内してくれるし、かなり良いツアーだよぅ。
「ここが鉄泉池です」
「これが? 小さいな」
「水溜りみたいだね」
「いやいや、一応池でしょ」
「これが80℃のお湯?」
「いえ、今表面に出ている分はそこまでは……お、ちょうど湧き出すみたいですよ」
ガイドさんが指差したので池の方を見ると、先程まで静かだったものが、ブクブクと泡立ち始める。
まるでお湯が沸騰しているような感じになっている。
次第にその泡ぶくの勢いが激しくなり湯気が出始めた。
ボコボコボコボコ……
「これが間欠泉なんだ?」
「ここのは噴き出す程の勢いはないんですよ」
「うわわ、湯気で周りが真っ白に」
「熱気も凄いですね」
「80℃ってだけあるわねー」
「あはははー! 写真も真っ白ー」
しばらくその間欠泉を見ていた私達は、次のお客さんもいる事なのでその場を後にして更に先へと進む。
「そう言えばなんですが、この遊歩道の下に流れている川なんですが、これ三途の川って名前なんですよ」
「はぅっ?!」
三途の川って、此岸と彼岸を隔てる川って言われてるあれ?
「だだだ、大丈夫なの?」
「希望ちゃん、大丈夫だよ。 呼ばれてるだけで本当の三途の川じゃないんだから」
「あ、そっか」
よくよく考えたらそうだよね。
「この先は大湯沼遊歩道に入ります。 ここから大湯沼を目指して歩いていきます。 この辺りから少し勾配がキツくなってきますので気を付けてくださいね」
私達のグループは皆揃って健脚なので、多少の勾配ぐらいなら問題にせずスタスタ歩いてしまうだろうね。
「大丈夫ですよー。 私達これでも体力には自信あるんで」
「ははは、でしょうね」
「あら? でしょうねとは?」
ちょっと気になる反応だったが、そこに奈央ちゃんも食いついた。
「皆様は有名人ですからね。 北海道の人間の自分でも知ってるぐらいですから」
「あー……バレーボールとかですか?」
「バスケットボールもですよね」
「ふむ」
どうやら私達は引退した今でも全国的に有名なようです。 ガイドさんはどうやらバスケットボールを嗜むらしく、夕也くんや宏太くん、春人くんの事も知っているみたい。
大湯沼遊歩道を歩いている間、男子達はバスケットボールの話で盛り上がっていた。
ガイドさん、お仕事お仕事。
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