第628話 2日目の朝
☆亜美視点☆
さて、雪だるま作りを終えた私達4人は、冷えた体を温めるために再び温泉に浸かりに来ている。
それにしても、希望ちゃん達が作ったボケねこ型の雪だるまは本当にどうやって作ったんだろうか?
2人で並んでスマホで撮影してたけど、あれ結構凄い作品なのでは?
紗希ちゃんがSNSに投稿したところ、ボケねこファン達の「いいね!」が凄い勢いで付いてバズってしまったらしい。
「ふぅ、温まるわー」
「んー、外は寒かったからねぇ」
「ねぇ」
「でもこの時間は貸し切りじゃないんだねー」
と、麻美ちゃん。
まぁ、他のお客さんの兼ね合いもあるから、ずっと貸し切りというのは無理だろうからねぇ。
今は、他のお客さんも普通に入浴している。
「さてさて、今晩はどうやって今井君を襲いに行こうかなぁー」
不意にそんなことを言い出すのは当然紗希ちゃんだ。 相変わらずそんな事を考えているんだね。
そこに便乗して麻美ちゃんもノリノリになっている。 今晩はこの2人の動向に要注意である。
夕ちゃんを守るためには、夕ちゃんと同じ布団で一緒に寝るしかないね。
完璧な作戦である。
「希望ちゃんも参加するー?」
「はぅ……皆近くで寝てるのにそんなこと出来ないよ」
「甘いねー希望ちゃんはー。 そこにスリルがあって良いんじゃないのー」
「なははー」
こ、この2人はかなり危険人物の様だ。 私が隣で寝ててもお構いなしに夕ちゃんを襲うかもしれないし、夕ちゃんにも気を付けるように言っておかないと。 彼女は大変なのである。
◆◇◆◇◆◇
部屋に戻ってくると、既に布団が敷かれていた。 どうやらもう就寝準備は整っているらしい。
よし、すかさず夕ちゃんの布団に入り込むよ。
「って、夕ちゃんはまだ布団に入ってないの? というか、夕ちゃんは?」
そもそも夕ちゃんが部屋にいなかった。
何処に行ったのだろう?
「今井君なら奈々美と皆の分の飲み物買いに行ったわよー」
「あ、そうなんだ。 奈々ちゃんと……2人で?」
「じゃんけんで負けたんですよあの2人」
どうやら部屋に残ったメンバーでじゃんけんして負けた2人が近くの自販機にジュースを買いに行ったらしい。
「ふぅん、そういう事なんだ」
奈々ちゃんなら大丈夫だよねぇ?
いやいや、奈々ちゃんもたまに夕ちゃんをどうのこうのって言ってることあるよね。
「奈々美め」
「お姉ちゃんめー」
2人は奈々ちゃんに抜け駆けされたと言って怒っている。 いやいや、怒るのはふつう私なんだけども。
まあ、奈々ちゃんはこの2人に比べればかなり信用出来るよ。
少し待っていると、人数分のジュースを持った2人が帰ってきた。
ほら、やっぱり奈々ちゃんは信用に足る人物だよ。 さすが私の親友である。
「奈々ちゃん、私は信じてたよ!」
「え? 何が? メロンソーダ買って来る事?」
話が噛み合わないけどまあいっか。
っていうか、夕ちゃんだよ夕ちゃん。
「夕ちゃんはどの布団で寝るの? おすすめは一番角だよ! 敵に接する面が少ないからね!」
「敵ってのは何だよ……。 まあ角っこで良いけど」
「よし」
「だから何なんだよ……」
「亜美ちゃんやるわね」
「亜美姉強いー」
夕ちゃんは相変わらず首を傾げながら「何のこっちゃ」と言っている。 さて、あとは夕ちゃんと同じ布団で寝かせてもらうだけだね。
夕ちゃんがジュース片手に布団の上に座ったのを見計らって、私は夕ちゃんの隣の布団に陣取る。
「隣良いよね?」
「別に良いぜ」
「じゃあ私はここー」
「私はこっちー」
紗希ちゃんも麻美ちゃんもすかさず近い場所の布団を取ってきた。 本当に恐ろしい子達である。
「さ、明日も早いしそろそろ寝ますわよ」
「そうね」
「おやすみー」
「すーすー」
希望ちゃんに関してはすでに寝てしまっていたりする。 さてさて消灯となったところですぐさま夕ちゃんの布団に潜り込んでいくよ。
もぞもぞ……
「ん?」
「やほ」
潜り込むことに成功だよ。 夕ちゃんも特に追い出すようなことはしないし、このまま一緒に寝て夕ちゃんを守るよ。
◆◇◆◇◆◇
翌朝──
6時半に目が覚めた私は、夕ちゃんの無事を確認して一安心。
どうやら平和に夜は過ぎたようだ。
「んー……」
ただ、夕ちゃんの布団には麻美ちゃんと紗希ちゃんも潜り込んできていて大変なことになっていたけど。 何という執念。
起きて少しすると、皆が続々と起き出してくる。
「ふにゃー」
「おはよー」
「おはよー!」
それぞれ、朝から元気な者もいれば寝ぼけてボケボケな者もいる。
「お風呂は7:30から貸し切りだから、それまで少し待ってましょ」
「朝風呂も貸し切りなのね」
「ふにゃー」
「紗希ちゃんは朝は本当にダメだねぇ」
「この子は顔洗って目が覚めるまでずっとこんな調子よ。 ほら、顔洗ってきなさい」
「ほにょー」
ふらふらと洗面所の方へと歩いていく紗希ちゃん。 あのボケボケの紗希ちゃんは可愛いし危険度低くて好きなんだけどなぁ。
少しすると、顔を洗って目を覚ました紗希ちゃんが戻ってくる。 髪はボサボサだけど、これからお風呂に入るから良いとの事。
「んじゃ、朝風呂行きますか」
「おけー」
ということで、皆で朝風呂ー。
「はぁー……極楽極楽」
「奈々ちゃん、相変わらず年寄り臭いよ」
「うっさいわねぇ、自然と口から出ちゃうのよ」
奈々ちゃんは温泉に浸かるとまず年寄り臭い発言をするのである。 私もそのたびにツッコミを入れているよ。 もはや恒例行事だ。
「小樽の旅館にも露天風呂があるから楽しみにしててね」
「おー、毎日毎日露天風呂尽くしー!」
「最高ねー。 ずっと卒業旅行してたいわー」
「それはそれで疲れるだろ……」
紗希ちゃんの言う事もわかる。 こんなのならずっと続けばいいのにと思わずにはいらいられない。
「そういえば、昨晩は紗希ちゃんと麻美ちゃんは結局夕ちゃんを襲わなかったんだねぇ」
「いやー、あんだけガッチリガードされるとどうしようもないわよー」
「亜美姉のガード硬すぎるよー」
「あぁでもしないと2人は油断ならないんだもん」
「もーちょっとぐらいいいじゃーん」
「だめー!」
「亜美ちゃんは夕也くんの事となるともうね」
「むぅ。 誰にも上げないよぉ」
「亜美ちゃん亜美ちゃん。 私は別に今井君を奪いたいわけじゃないのよー? ただお気に入りなだけだから」
「むぅ」
「大体私が本気で奪おうとしたら今頃亜美ちゃんとバチバチやり合ってるわよー」
と、紗希ちゃんは言う。 たしかに紗希ちゃんは好きになったらどんなことしても奪い取るといった感じの子だ。 現にそうやって今の彼氏を手に入れた経緯もある。
私は紗希ちゃんとは仲良しでいたいから、そういう事にならなくて本当に良かったよ。
でも──
「それとこれとは別だよ。 絶対に夕ちゃんを襲わせないからね!」
「きゃははは」
「なははは」
「あんたも大変ねぇ」
と、奈々ちゃんは呆れたようにそう言うのであった。
この旅行の間は夕ちゃんの事もしっかり守って行かないといけないねぇ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます