第606話 オランダエリアでのんびりと

 ☆希望視点☆


 私達は西條グループが経営している、欧州村へとやって来ています。

 フランスエリア、イタリアエリアと見て回った私達は、次にオランダエリアへと向かい歩を進めています。


「フランス、イタリア、んー! 良かったねぇ。 是非実物も見てみたいものだよ」

「ふふ、いつか行きましょう」


 亜美ちゃんはというと、先程から興奮しっぱなしです。

 知識欲の強い亜美ちゃんは、歴史的建造物等についても当然詳しい。 詳しいんだけど、実物を見た事のある物は数える程しかなく、完全に亜美ちゃんの欲を満たすには至っていなかった。

 今日は、そんな世界的建造物を模造した物とはいえ、かなり実物に近い物を見られたという事で、亜美ちゃんのテンションは今までに無いほどの急騰ぶりを見せています。

 夕也くんの事すら放っぽり出してしまうぐらいだ。


「亜美ちゃん可愛いよね」

「まるで子供みたいだよな」


 完全に小学生ぐらいの子供に退行しているまである。

 今も、麻美ちゃんと2人で先頭を歩いているよ。


「奈央ーオランダには何があるのよー?」

「オランダエリアには、アムステルダム中央駅やキンデルダイクを再現したものがありますわよ。 美術館関係は、絵画を集めるのが不可能だったので再現はしていませんのよ」

「さすがにそこまでは無理だったわけね」

「アイ・アムステルダムサインはありますわよ。 集合写真スポットですわね」


 オランダエリアも色々と見るものがあるみたいだよぅ。


「他にもアムステルダム王宮やマヘレの跳ね橋、ダム広場にキューケンホッフ公園も再現してありますわ。 更に、運河を船で回るクルーズなんかもありますわよ」

「オランダも楽しみだな」

「あははー! 亜美姉が楽しみ過ぎて目がキラキラしてるよー!」

「亜美ちゃん、説明お願いしますー」


 奈央ちゃんが亜美ちゃんに各スポットの説明を促すと、亜美ちゃんはキラキラさせた目をこちらに向けて説明を始める。


「アムステルダム中央駅はね、赤レンガ造りの駅舎でアムステルダムの玄関口になってる駅だよ! 東京駅のモデルになった駅で、今はしまい駅にもなってるよ!」

「せ、先輩、もうテンション振り切ってもうてはるで……」


 何というかちょっと怖いぐらいだよぅ。 夕也くんももう敢えて何も言わないらしい。 どうせ聞いてくれないもんね。


「あ、亜美ちゃんもういいわ」

「らじゃだよ!」

「ここからのスケジュールですが、中央駅、クルーズ、キンデルダイク、アムステルダムサイン、王宮、跳ね橋、キューケンホッフ公園、ダム広場のレストランで夕飯を食べて帰りましょう」


 どうやらオランダエリアで時間を使い切りそうだね。

 

「じゃあ、中央駅へ向かいますわよー」


 奈央が先頭を歩く亜美ちゃんや麻美ちゃんの前に立ち、私達を先導し始める。

 それにしても、千葉にいながらにしてヨーロッパを旅しているような感覚になれるこのテーマパークは本当に凄い所だと思う。

 先程から日本人客だけではなく、外国人観光客も多く見かける。


「西條グループ凄いよなマジで。 日本を支配してるんじゃないのか?」

「まだそこまではいってないですわよ。 まだ」


 何か不穏な事を言ってる気がするよぅ。

 これはいずれ、経済界から日本を裏で牛耳るき満々だよぅ。


 歩く事数分、大きな駅舎らしきものが見えてきた。


「ほう、これが……」

「本当に東京駅にそっくりだなぁ」

「遥ちゃん、東京駅がこれの真似をしたんだよぅ」

「しかしまあ、良くこんなもの再現出来たよな。 西條グループ恐るべしだぜ」

「おほほ」


 調子に乗った時だけに出るお嬢様笑いをする奈央ちゃんを尻目に、亜美ちゃんは恒例の撮影タイムを始めている。


「パシャパシャ!」


 口でシャッター音を口ずさまなくても良いと思うんだけど、今の亜美ちゃんには言っても無駄だろう。


「亜美ちゃんが写真撮影を終えたら次に行きますわよ。 運河クルーズの船の時間が決まっているのよ」

「らじゃだよ。 じゃ行こう」


 話を聞いていた亜美ちゃんは、写真撮影をピタリと止めて振り返る。 ただ落ち着きを取り戻したわけではないらしく、相変わらず目をキラキラさせている。

 今日一日ずっとこんな感じでいきそうだよぅ。


 アムステルダム中央駅を後にして、運河クルーズのクルーズ船乗る為に船着場を目指す。

 運河まで再現してしまう辺り、もう何でもありになりつつある。



 ◆◇◆◇◆◇



 運河クルーズとやらに間に合った私達一向は、クルーズ船に乗り込み、アムステルダム中央駅を中心に環状に流れるとされている運河を再現したものをクルーズしています。


「あ、歩き通しだったから疲れた……」

「裕樹はだらしないわねー。 一緒に京都の大学受かったら体鍛えてあげるから覚悟なさい」

「ひぇ」


 と、仲良さそうな紗希ちゃんと彼氏君を尻目に、クルーズ船からの街並みを写真撮影しまくる亜美ちゃん。


「私、ここまでになる亜美ちゃんは初めて見たなぁ」

「私もですわ」


 昔ならまだしも、最近は中々こういう亜美ちゃんを見る事は出来ないね。

 話に聞くところによると、東京のお母さんが倒れた際に東京に行っている間に、東京スカイツリーを見た亜美ちゃんが凄くテンションが上がったいたらしい。

 新田さんからのタレコミだよぅ。


「この後はどうするんだっけ?」

「次はキンデルダイクよ。 のどかな風車村を再現してありますわ」

「おー、オランダといえば風車村よね」

「チューリップも有名だよ」


 写真撮影を終えたらしい亜美ちゃんが話に入ってきた。 チューリップかぁ。


「チューリップも後で見に行きますわよ」


 どうやらキューケンホッフ公園という所がチューリップを見れたる場所らしい。

 楽しみだよぅ。


「亜美、ちょっとは落ち着いたか?」

「私は常に落ち着いているよ!」


 という亜美ちゃんだけど、目がキラキラしていてまだまだ落ち着いているとは言えない状態のようだ。

 次の風車の村へと行ったらまた興奮するのは目に見えているよぅ。



 ◆◇◆◇◆◇



 クルーズを終えて、次なる目的地である風車村へと移動を開始。

 また亜美ちゃんのテンションが上がり始めている。

 またはしゃぎ出すのは時間の問題だと思われるよ。


「キンデルダイクには19基の風車があるオランダ最大の風車網ですわよ。 再現度はかなり高いので期待してくださいな」

「楽しみだよ!」


 あ、テンション上がって来たみたい。

 こうなってくるともうダメだよぅ。


「今日はもう、完全に亜美に振り回されてるわね」

「たまには良いだろ」

「そうね」


 こんなに楽しそうな亜美ちゃんは中々見られるものじゃないからね。

 楽しんでいる亜美ちゃんの邪魔はしないようにしよう。

 

「もうすぐで風車が見えてきますわよー」


 奈央ちゃんの言葉通り、少し歩いていくと、風車が見えて来た。

  

「おー! これがキンデルダイクの風車網! パシャパシャ!」


 あ、始まった。 こうなると亜美ちゃんが満足するまではここから動けなくなるよ。

 私達も亜美ちゃんが満足するまでの間、私達ものんびりと風車を眺めながら談笑するのだった。

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