第590話 遥の大学入試前日
☆亜美視点☆
今日は2月18日。
「いよいよ明日だね、遥ちゃん」
「おー、いよいよだ」
明日はいよいよ遥ちゃんの大学入試初日だ。
私達の仲間内では誰よりも早く本番を迎えるのだ。
成績に不安があったものの、私の家庭教師や皆との勉強会で成績を上げている。
共通テストではかなりの手応えを感じたようで、自己採点の結果も上々。
自信も付けたようで、今の遥ちゃんならかなり期待できるよ。
「今日はあれだよな? コンディションを整えればいいんだよな?」
「そうだよ。 私達の勉強に付き合う事ないからね?」
「了解! 亜美先生の言う事に従ってれば間違いないんだ」
何だか私のことを神格化し始めているみたいだ。
私が教えたからというより、遥ちゃんが頑張ったからだと思う。
「今日の夕飯はトンカツにするわよー」
「おー、カツで勝つってやつだな!」
「定番ね」
何故か宏ちゃんが1番テンションが上っている。
受験とは1番関係ないのにね。
「じゃ、私達はいつも通り勉強って事で」
「だな。 やりますか」
遥ちゃん以外の皆はいつも通り勉強を始める。
私達の大学入試は来週だからね。
◆◇◆◇◆◇
勉強タイムを終えた私達は、夕飯の準備を進めていく。
献立はお昼に話していたようにトンカツだ。
何と今日の為に奈央ちゃんが取り寄せた超高級のトンカツ用豚肉を使用していくよ。
高級食材を取り扱うのは緊張するよ。
「凄いわね、この豚」
「だねぇ。 じゃあ早速調理していこっか」
「りょ!」
トンカツトンカツー。
私と紗希ちゃんは二手に別れてトンカツの調理を始める。
2人してお肉をリズミカルに叩く。 柔らかい食感にする為だよ。
あまり叩き過ぎるのも良くないので程々にすることが大事である。
「紗希ちゃん塩コショウ取ってー」
「あいよー」
叩き終えたら塩コショウだよ。 適度に振って味付けする。 この作業を9人分繰り返して下ごしらえ完了だ。
「本当9人分の夕食の準備は大変だわ」
「あはは、そうだね」
さすがの私も、毎日3食9人分の食事を準備するのは大変だと感じている。
お料理自体は好きなんだけどねぇ。
「じゃ、キャベツの千切り作っていきますか?」
「そだね」
ということで、やはり二手に別れてキャベツの千切りを始める。
私は包丁捌きには自信があるんだよ。
「てややー!」
トトトトト……
「うへー、相変わらず速っ」
紗希ちゃんも中々丁寧で速い方だけど、私はその紗希ちゃんより更に速いよ。
あっという間にキャベツの千切りを終わらせてしまう。
「え、もう終わったの? やばっ」
「あはは」
紗希ちゃんが千切りを終えるのを待ってから次の工程に進む。
次はカツを揚げていくよ。
180℃程まで上がった油の中に入れてサクサクに揚げていくよ。
ジュー! パチパチパチパチ……
「良い音してるわー」
「温度完璧だね」
次々とカツを揚げていくよ。 紗希ちゃんと交互に揚げていき、計9枚のトンカツを作り上げた。
ソースもかけて、キャベツの千切りとプチトマトを盛りつけたら。
「完成ー」
「きゃはは、美味しそうだわこりゃ」
「これで遥ちゃん勝利間違い無しだね」
「んだね!」
トンカツで勝つだよ。
皆の分のトンカツをダイニングへ運び、放送で夕食が出来た事を皆に知らせる。
これ本当に便利である。
間もなく皆がキッチンへ集まってきた。
1番早かったのは宏ちゃんである。 本当に食べる事に関しては貪欲だねぇ。
「これが高級なトンカツか」
「西條家が総力を持ってして手に入れた、超高級ロースですわ!」
「それを亜美と紗希が調理したんだから、超絶品間違い無しね」
それは大袈裟な気もするし、このお肉を手に入れる為に西條家の総力を使うのもどうかと思う。
しかも25日の夜にも調達するとの事。
25日の献立もトンカツになりそうだけど、味付けを変えてみるのも良いね。
「じゃ、明日の遥ちゃんの健闘を祈りつつ! いただきます!」
「いただきます!」
さて、ではではサクサクホカホカのカツを早速いただくよ。
サクッ……
「んん! 柔らかくて美味しい!」
「はぅ。 スーパーで買ってくる普通のお肉とは全然違うね」
「本当ね……また舌が肥えてしまうわ」
「私はどちらかって言うと庶民の味の方が好きだけど」
「西條はそうだろうよ……」
奈央ちゃんは高級料理ばかり食べてるからだろうね。
私達一般人にはわからない感覚である。
「にしても、亜美ちゃんも神崎も料理上手いよなぁ」
「いやいや。 奈央ちゃんとか奈々ちゃんも凄く上手だし」
ここにいる女子は皆それなりに料理上手だと思うんだよね。 遥ちゃん以外はだけど。
あ、これは本人に言ったら傷付くから声に出しちゃダメだね。
「本当、今井とか柏原は幸せ者だよなぁ。 それに引き換え、神山先輩のなんと可哀想な事か。 よりによって私なんかと付き合ってしまったばかりに……」
うわわ、自分で言って自分で勝手にテンション下がってるよ。
「きゃはは! 料理の練習もしなさいよー?」
「わーってるよ!」
「今度料理教えてあげるから、また家に泊まりに来なよ」
「かーっ! 亜美ちゃん先生は優しいねぇ! 皆も見習いたまえ」
「あ、あはは」
またまた大袈裟な。
「亜美ちゃんは本当に良い子ですわねぇ。 損する性格ってやつね」
「奈央だって優しいじゃない」
奈々ちゃんが言う。 私もそう思う。
「私が優しい? 結構ドライな性格してると思うけど……」
「いや、優しいだろ。 俺なんかの為にわざわざペットショップ紹介してくれたり、就職試験の話も通してくれたりよ」
「あ、あれは別に……友人の夢を応援したいと思っただけですけど」
「あ、奈央が赤くなったー! テレてんじゃん、可愛いなぁ」
「うー」
奈央ちゃん可愛いところあるねぇ。
奈央ちゃんは自分ではドライだの何だの言ってるけど、親しい友人に対してはとても優しい一面を見せる。
私達も色々助けてもらってるしね。
「そんなことより、明日、明後日は車で駅まで送らせるから遥は寝坊しないようにしなさいよ?」
「おう、サンキュー奈央」
普段使っている路線の駅までは少し距離があるので、車で送ってもらうとの事らしい。
私達の受験当日も同じようにしてもらうよ。
明日は私達も早起きして、遥ちゃんを見送る予定である。
◆◇◆◇◆◇
翌日──
「じゃあ行ってくる」
「とりあえず初日で終わったーなんて事ないようにしなさいよ?」
「今の遥ちゃんなら大丈夫だよ! 自身持ってこ!」
「ありがとう亜美ちゃん先生! やるぞー」
「はぅ。 これ必勝祈願のお守りだよぅ」
「おー、ありがとう希望ちゃん! これなら百人力だよ」
「先陣切るんだから、しっかりやって来なさい。 私達の士気にも繋がるし」
「わかってる」
「頑張ってきたんだから結果も出るさ」
「おう。 今井の家には世話になったな」
皆で遥ちゃんに声を掛けて見送る。
遥ちゃんは自信満々に屋敷を出て行った。
うん、あの調子なら大丈夫そうだ。
信じて待つしかないね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます