第575話 はしゃぎすぎて
☆奈々美視点☆
私、亜美、希望、紗希の4人は、勉強の休息日を利用して電車に乗りお出かけしているわ。
1駅隣へ来ただけでとんでもない都会へと来てしまったわ。
まあ私達が住んでる街がそこまで大きい街じゃあないから、ちょっと大きい街でも都会に見えちゃうのかもね。
「次どのお店見る?」
「んん。 本屋さんは入ってもいい? 今の過去問もう終わっちゃって」
希望が言う。 もちろん誰も反対などしないので。
「いいよ。 私も何か本でも買おうかな」
「そうね。 私もファッション誌でも買おうかしら」
お屋敷の中ではインターネットやテレビなどの娯楽はあるものの、それだけでは物足りないところもある。
本は暇つぶしにも良いわね。
「じゃあ行きましょ」
「本屋は3階だって」
亜美が案内板を確認してくれたので、近くのエスカレーターに乗り、上の回を目指す。
書店に着いた私達は、それぞれ目的の本を探すために別々のコーナーへ移動。
私は女性誌コーナーへやって来た。
「あったあった。 私愛読のファッション誌の今月号」
毎月買って読んでるのよね。 今月号は表紙が姫百合凛なのね。
可愛いわよねー。 クリスマスに西條家のパーティーで仲良くなって少し話したけど、亜美によく似たタイプだったわ。
「これは?」
目的のファッション雑誌を手に取った後、他のコーナーの雑誌に目を通していると、バレーボール雑誌に目が付いた。
表紙には春高で優勝した麻美達月ノ木学園のメンバーが写っていた。
「……これも買いますか」
大学へ行ったらバレーボールを続けるつもりだし、ワールドカップもあるし、バレーボール界について少し勉強するのも悪くないわね。
私はその雑誌も手に取りレジへ持って行く。
亜美達もそれぞれ目的の本を買い、本屋を出る。
紗希は何やら大量に本買ったみたいね。 一体何を買ったのかしら。
「紗希ちゃん凄いね。 何買ったのそれ?」
気になる事は何でも聞きたがる亜美が、すぐに紗希に訊いている。
「これー? 今話題の漫画全巻一気買いよー」
なるほど、漫画ね。
何巻ぐらいあるのか知らないけど、私も暇な時に読ませてもらおうかしらね。
「さて、次は?」
「本と服は買ったし、あとは常備薬とか?」
「それぐらいは屋敷にあるでしょ?」
「それもそっか」
「私、最近ハマってるヨーグルト買い溜めしときたいわ」
最近ハマってんのよね。 次の休息日までの分を買い溜めしときたいところ。
紗希もおやつ買い溜めには賛成らしく、1階の食品コーナーへ移動することにした。
「奈々ちゃん、ヨーグルトなんか食べてるんだ?」
「ええ、お腹に良いしね」
「ほー。 私も買おうかしらねー」
紗希も便乗。 これは屋敷の冷蔵庫内ヨーグルトだらけになる日も近いわ。 ちゃんと名札付けて袋にまとめておかないとね。
食品コーナーで乳製品のコーナーへとやって来た。
「あったあった。 これこれ」
「あ、これ最近よくCMで見るヨーグルトだよぅ」
「そうね。 結構売れててたまに売り切れてんのよね」
私はカゴにドカドカと入れていく。
大漁大漁。
「うわわ、買い占めちゃったねぇ」
「ふふふ、このヨーグルトは私達の物よ。 ふふふふふ」
「奈々美ちゃん怖いから……」
「さあ、他のお菓子も買いに行くわよ」
「おー」
買い物中にテンションが上がってしまい、少しばかり暴走してしまうのであった。
◆◇◆◇◆◇
買い物を楽しんだ私達は、ショッピングモールを出る頃には手に一杯の荷物を持っていた。
か、買い込みすぎたわね。
「……」
「きゃはは……調子に乗り過ぎたわねー……」
「はぅ」
「あ、あはは」
「帰る?」
これ以上の荷物も持てないし、帰った方が良いような気もする。
結局私達は、散策を次回の休息日に回して屋敷に戻る事にした。
うーん、ハメ外しすぎるのは良くないわね。
「また買ったものがほとんどヨーグルトっていうね」
「それは良いのよそれは」
これは必要な買い物なのよ。 これ無いとなんか1日が終わらないのよね。
◆◇◆◇◆◇
電車に乗って屋敷まで帰って来た私達。
門を潜ると、庭で奈央が走り回って遊んでいる姿が見える。
何かに追いかけられてるわね。
「あれ、トラさんだよ」
「ジョセフとセリーヌねー。 そういえば、行きにトラックが1台すれ違ったじゃん。 あれじゃない?」
「あー、あれか……」
ジョセフとセリーヌは奈央が可愛がっているペットのトラ。
奈央に懐いているし、奈央も本当に可愛がってるみたいだから連れてくるように連絡したのね。
「あら、皆おかえりー。 うわっ」
ドサッ……
私達に気付いた奈央が足を止めた隙に、ジョセフとセリーヌが奈央に追いついて飛び乗った。
普通に見たら人間がトラに捕食される衝撃的なシーンにしか見えないけど。
「くすぐったいわよー」
2頭のトラは奈央の顔を舐め回すだけであった。
「あはは、凄い懐きようだねぇ」
「赤ん坊の頃から世話してるもの。 当然よ」
「ところで、その2頭は何処で過ごさせるのよ?」
「何処って、屋敷内よ? 庭に出しとくなんて可哀想じゃない」
「きゃはは、屋敷内にトラかー」
まあ、大人しいし勉強とかの邪魔さえしなきゃ良いか。
「よいしょ。 ほら、ジョセフ、セリーヌ、中に入りましょ」
「がるー」
奈央がそう言うと、2頭は奈央からどいて奈央の後について屋敷の中へ入って行った。
躾まで完璧ね。
「んで、何をそんなに買ってきたのよ?」
こちらを振り向いてそう訊いてきたので私は応える。
「ヨーグルト」
「……はい?」
「ヨーグルト」
「ヨーグルト? それ全部?」
「そんなわけないじゃないの。 後は雑誌だとか服だとか」
「あ、あぁそう」
奈央は苦笑いしながら、私達が携える袋を見て引き攣った笑みを浮かべるのだった。
「紗希ちゃん、そろそろ夕食の準備しよ」
「りょ!」
「今日は私も手伝うわ」
たまには私も手伝わないとね。
私は2人についてキッチンへと向かう。
今日はビーフシチューにするという事らしい。
何かサイドメニューのサラダでも作ろうかしらね。
◆◇◆◇◆◇
食事は皆で広間に集まって食べる。
亜美と紗希が作ったビーフシチューがこれまた美味しい。
「うめー! ついて来て正解だったぜマジで。 こんな美味い飯が毎日食えるんだからよ」
「佐々木君は良いわよね、気楽で」
「受験生じゃないもんね」
「羨ましいぜ」
この中で唯一の就職組である宏太は、既に内定もらっている。 この合宿も資格試験の勉強をする為について来たに過ぎない。
私達に比べて余裕があるのだ。
「言うて、これでも初めて社会に出る不安ってのもあるんだぜ?」
「嘘つけ、お前が不安なんて感じるような奴かよ」
と言う夕也に「何をー?!」と突っかかる宏太。
騒がしい奴らね。
食事中だと亜美に怒られてすぐ大人しくはなったけど。
ま、でも楽しくて明るい食卓ってのは良いもんよね。
しばらくは楽しい毎日が過ごせそうだわ。
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