第558話 マロンちゃん大人気
☆亜美視点☆
私は今まで我慢していた猫さんをついに飼うことになりました。
うちへやって来た新しい家族はマンチカンの女の子で名前はマロンちゃん。
まだまだ子猫さんだ。
「マロンちゃん朝ご飯だよー」
「みゃー」
「あはは、私がママですよー」
もう私はデレデレです。 それはもう希望ちゃんと夕ちゃんが呆れる程に。
もちろん、約束通り受験勉強や家事も疎かにはしていない。
「亜美。 そろそろ勉強会行くぞ」
「あ、うん。 マロンちゃんも行こうねー」
昨日皆に紹介する為に連れて行ったらもう皆がメロメロになってしまった。
希望ちゃんの飼っているハムちゃん4匹共々、皆のアイドルになってしまったのでした。
「ハムちゃんも連れてくの?」
「うん。 チョコクッキーの兄弟姉妹も揃うんだよ」
「お前ら勉強しに行くんだぞ……」
「わかってるよ」
私はマロンちゃんを猫ちゃん用のキャリーバッグへ入れてあげる。
この子は警戒心やらが薄いのか好奇心旺盛なのかはわからないんだけど、割とすんなりバッグに入るし誰にでも懐く。
さらに、猫とネズミというと仲が悪いイメージだけど、この子は希望ちゃんのハムちゃんを襲わないどころか、ハムスターボールに入って遊んでいるハムちゃん達と一緒になって遊ぶぐらい仲良しだ。
◆◇◆◇◆◇
という事で私達も西條家別宅へやって来た。
「お、来たわね」
「待ってました!」
私がリビングへやって来ると、すでに来ていた皆が目をキラキラさせて待っていた。
どうやら奈々ちゃんと紗希ちゃんが希望ちゃんから貰ったハムちゃんも連れて来ているようだ。
渚ちゃんのハムちゃんも、奈々ちゃんが一時的に預かっているらしく、バニラ、パフェの子供達大集合のようだ。
ハムちゃん達は皆ハムスターボールに入れて自由に走らせる。
フローリングだとゴロゴロと音が鳴って騒がしいけど、絨毯の上では静かなものである。
ただちょっと動きにくそうだ。
「マロン、出ておいで」
「みゃー」
バッグを開けてあげると、おずおずと顔を出して左右を確認するような仕草を見せる。
私の顔を視認すると安心したのか、短い足をゆっくりとバッグから出して私の方にすり寄ってくる。
すでに私をママだと認識しているのか、顔をすりすりしてくる。
「可愛いー!」
「やっぱり良いわね、子猫は」
「この子は大きくなるんですの?」
「いや、そこまででかくはならねぇよ。 この品種の可愛いところがな、短い前足を上げて後ろ足だけで直立することがあることなんだ」
宏ちゃんが簡単な説明をしてくれる。
尚、我が家に来てからその直立を見せたことはまだ無い。 まだ子供だし無理なのかな?
「んじゃ、ママは勉強してるからこのケージに入っててね」
「みゃう」
奈央ちゃんが昨日慌てて用意してくれたケージにマロンを入れてあげる。
さすがに勉強中にちょこまかと動き回られると皆の邪魔になるからね。
勉強タイムが終わるまではケージ内で大人しくしててもらうのである。
「マロンちゃん、後で遊ぼうねー」
何故か1匹だけハムスターボールにハムスターを入れずに頭に乗っけている紗希ちゃんが、マロンに声を掛けている。
「紗希ちゃん、その子頭の上でいいの?」
「うん。 この子、ここが好きなのよ。 ね、ゴン太」
頭の上のゴン太君に話しかける。
わかっているのかわかっていないのか、ゴン太君はボケーっとしている。
こうやって見ると、同じバニラとパフェの子供達なのに全然性格とかが違うらしい。
奈々ちゃんの子は何かちょっと気が強いらしく、麻美ちゃんの子は元気だ。
渚ちゃんの子はどうやらのんびり屋さんらしい。
面白いね。
◆◇◆◇◆◇
勉強タイムも15時ぐらいに終了して、マロンをケージから解放してあげる。
「みゃう」
「ほわわーん。 大人しくしてたねぇマロン。 遊んで良いよ」
マロンはケージから飛び出して、鬱憤を晴らすかのように部屋の中を走り回る。
まだまだ子供だし、遊びたい盛りなようだ。
たまにハムちゃんのハムスターボールを見つけて、前足で転がして遊んでいる。
ハムちゃんがちょっと困ってるようだ。
「癒されるわね」
「ですわねー。 うちのジョセフとセリーヌもあんな時期があったわね」
奈央ちゃんの家のトラさん達が赤ちゃんの時ってどんなんだったんだろうね。
さすがにマロンなんかよりは大きかったんだろうけど。
「みゃう」
「ん?」
マロンが紗希ちゃんの頭の上に乗っているゴン太君と目が合った。
うわわ、大丈夫かな?
「マロンちゃん、ゴン太食べちゃダメよー」
「みゃうー」
わかっているのわかっていないのか、返事らしきものをするマロン。
どうやらハムちゃんに興味はあるようだが、お家でも希望ちゃんのハムちゃんとは仲良くやっているように見えるし食べたりはしないだろう。
「マロン、こっちおいでー」
私が呼びかけると、首輪の鈴をチリンと鳴らしてこちらを振り向く。
「マロンちゃん、名前覚えてるんですの?」
「多分、亜美ちゃんの声に反応してるんだろう」
「なるほどね」
マロンは私が呼ぶとすぐに来てくれるんだよね。
何だかんだペットショップに通っていつもこの子の事見たり声かけたりしてたから、覚えてくれていたのかもしれない。
「麻美と渚が帰ってきたら、あの子達もメロメロになりそうね」
「写真は送ってあげたよ。 早く生で見たいって」
「あの子達、試合はどうだったって?」
「今日も勝って明後日が決勝らしいわよ。 決勝の相手は都姫女子みたい」
「へー、また立華倒して上がってきたんだ」
「弥生ちゃん抜けたからねぇ」
「宮下さんも引退してるから、条件は変わらないんじゃないの?」
「都姫には新田さんが残ってるよぅ」
最近になって新田さんと連絡を取り合っているらしい希望ちゃん。
色々とリベロについて情報交換しているみたい。
「あの子は今大会No1リベロでしょうしね」
「みゃーう」
バレーボールの話をしている私達の会話に入ってくるマロン。
自分も混ぜろという事だろうか? 可愛い。
「みゃう?」
「はぁん、可愛いー……亜美ちゃん、この子ちょうだい!」
「ダ、ダメだよ?! うちの子だもん!」
我慢して我慢して、やっと叶った猫ちゃんとの生活だ。 誰にも上げたりなんかしないよ。
「冗談冗談。 でもやっぱり良いわねー。 私も京都で一人暮らしになったら飼おうかしら? あーでもお金が……んー」
一人暮らしで大学通いだと中々ねぇ。
紗希ちゃんはしばらく頭を抱えて悩んでいた。
「で、その子は子供どうすんの?」
「んー、少し様子見ながら考えるかな。 あまり増えてもお世話大変だし」
「ハムスターみたいにはいかないもんね」
「うん」
まだまだこの子との生活は始まったばかり、これから一杯思い出作ったりしていきたいね。
今度猫カフェに連れて行ってみようかな? 他の猫さんとの交流とかもさせてあげたいものである。
「ほれほれ」
隣では紗希ちゃんが人差し指をフリフリしてマロンで遊んでいる。 マロンはお店にいた時のように猫パンチで対抗。 この子、猫パンチ好きだねぇ。
ふむ、色々教えたら芸とか覚えるかな?
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