第515話 奈央と春人
☆奈央視点☆
現在、友人である紗希と遥が泊まりに来ている。 受験勉強の続きをやる為であるが今は入浴の時間。
我が家の入浴時間は時間で区切られていて、19時から21時が身内男性の時間。 21時から23時が身内女性。 23時からは使用人となっている。 使用人さんも男女の時間が分かれている為、遅い人は本当に深夜などに入浴しているようね。 そういう人は大抵翌日にお暇を貰っている場合が多いけど。
ザバーン……
「ふぅ。 広いお風呂はやっぱいいわねー」
「そうだな」
紗希と遥は足を思いっ切り伸ばして湯船に浸かっている。
今まであまり気にしたことはなかったけれど、別宅……元亜美ちゃんの家を買い取ってから何度かあっちで寝泊まりしてると、狭いお風呂は本当に窮屈に感じるようになった。
たしかに広い風呂はいいものね。
「奈央、本当に無いわね」
「うっさいわねー。 どうせ75よ。 だいたい96って何よ96って。 化け物なの?」
「羨ましいかー?」
「別に羨ましくないですわよー。 そんな脂肪の塊ぶら下げて自慢にもなりませんわよ」
「おお、言うねぇ」
「ふふん。 デカけりゃいいってもんじゃないのよ」
「そいつに関しちゃ私も同感だ」
と、腕を組んでうんうんと頷く遥。 そういう遥もまあ人並み以上のものは持っている。
何というか、私の周りは発育良好な子ばっかりね。
「北上君はどっちが好きなのかしらねー?」
「ぐぬ」
「亜美ちゃんに惚れてた時期があるぐらいだもんね。 大きい方が良いんじゃないのぉー?」
「ふ、ふん。 春人君はそんなところで選んだりしないわよ」
そう、春人君は胸で女を選ぶような男性じゃないわ。 ちゃんと人の内面を見てくれる人よ。
でもちょっと気になったりして。 後でそれとなーく訊いてみようかしら……。
「でもあれよね。 何だかんだ、あんたと釣り合う男の子見つけられてよかったわよね?」
「元々許嫁ですもの」
「一回破棄されたじゃないか」
「うぐっ」
あれは亜美ちゃんの所為よ亜美ちゃんの。 あの子ったら本当に何でも私から取っちゃうんだもん。 困っちゃうわよ。
そんな亜美ちゃんは、将来的には私の秘書になると言ってくれている。
彼女をスカウトしたのは私。 あんな有能な人間そうそう居ないもの、手元に置きたいと思うのは当然の事よね。
◆◇◆◇◆◇
入浴を終えた後、再度私の部屋に集まり、更に勉強を続ける。
私と春人君は最難関に挑むため、手を抜いている余裕は無い。 とはいえ、自信が無いわけではない。
絶対に受かるという自信はあるけど、何があるかわからないのが人生というもの。 決して手を抜いたりはしないのだ。
「奈央ー、ここなんだが」
「んん? あぁ、その式は面倒ね。 こっち来なさい、サルでもわかるように教えてあげるわ」
「サルって失礼な」
と言いつつも、私の隣へやって来て問題集を広げる。
この子も自分のやりたい事を実現するために必死になっているってことね。
「いい、まずはここをこうして」
「ふむ」
私はサルでもわかるようにゆっくりと説明していく。 遥だってその気で勉強すればそれなりにはできる子なのだ。 それなりには。
だから、それなりの成績は出せるはずだし、それなりの大学には入れるはず。
目標の体育大学はそこまで偏差値の高い大学ではないのでしっかり勉強すれば問題ないはず。
「北上君ー」
「はい?」
私が遥を教えているので紗希は春人君に教えてもらうようだ。
「北上君はおっぱいは大きい方が好き?」
「ぶふっ」
私は遥を教えながら噴き出してしまう。 紗希の奴、何を訊いてんのよ。
そんなのは私が自分で訊くってーの。
「む、胸ですか? そうですねぇ」
「春人君、答えなくていいですわよ」
「え、あ、はい」
「何よぉ。 良いじゃん別に」
「勉強に集中なさい」
「ちぇー」
紗希は残念そうに勉強を再開する。 全くこの子は……。
春人君も天然なとこあるから、私が止めなきゃ普通に答えてたでしょうね。
紗希の動向には細心の注意が必要ね。
亜美ちゃんも紗希の事は警戒してるとこあるけど、やっぱ紗希は思い立ったら即行動するタイプだから何するかわからないのが怖いのよね。
私も昔から振り回されてるけど。
その後もがっつり勉強を続けた私達は、深夜2時頃に勉強会を終了。
「かー、疲れたー! 今日1日ずっと勉強してたなー」
「そうね」
遥は本当に疲れたという感じで、そのままバタンと後方に倒れ込んでしまう。
「うー、もっかいお風呂入っていいかしらー?」
「いいですわよー」
「私も~」
「どうぞ」
この浴場は使用人達も含めて基本的に自由入浴となっている。
浴場前の札を男性か女性入浴中の札に切り替えておくだけである。
紗希と遥は2人で浴場の方へ向かい、私は春人君と2人になる。
「しかし、本当に疲れましたね」
「そうね。 受験ももう近いし、追い込みの時期だしこれぐらいはやっとかないと」
「奈央さんや亜美さんはそこまで追い込まなくてもいいような気もしますけど」
「甘いわよ春人君。 私も亜美ちゃんも、自分が天才だからってそこで気を抜いたりしないのよ」
「努力を怠らない天才には誰も敵いませんね」
春人君は「ははは」と笑う。 本当、それよ。 亜美ちゃんがちょっとでも怠ける人間なら、私がここまで負けるなんてことは無かったでしょうに。 私以上の天才が私と同等の努力を続ける所為でその差は縮まらない。
さて、せっかく2人になったしさっきの紗希がした質問を私もしてみようかしら。
「こほん。 春人君」
「はい?」
「そのですねぇ。 さっき紗希が訊いていた質問なんですが」
「あぁ、胸ですか」
それだけで春人君は察したようで「そうですねぇ」と考え込む。
なんか結構真剣に考えるわね。
「んー。 こだわりが特にあるわけではありませんが、多少あった方が僕は好みですかねぇ」
「がーん」
春人君はおっぱい大好き星人だった。 研究所にお金投資して豊胸装置を開発させようかしら。
「奈央さん。 僕は胸で女性を好きになったりはしないので心配しないでくださいね。 奈央さんも亜美さんも、ちゃんと内面を見て好きになったんですから」
「は、春人君……」
でもそのフォローって遠回しに私の事をペチャパイだと言ってるような気もするけれど。
こうなったらもう一つ訊いてみましょうかしら……。
「は、春人君はさ」
「はい?」
「そ、その……私と契りたいとかって考えてたりする?」
「契りというとつまりそういうことですか?」
「え、えぇ」
「んー……」
今回も深く考える春人君。 もし春人君がそういう事を私としたいというなら、私も吝かではない。
本当は結婚するまではしないつもりなのだけれど。
「たしかに、奈央さんとそういう事をしてみたくないと言えばうそになりますけど、奈央さんが結婚するまではしないつもりみたいですので、それまでは僕も無くていいと思っていますよ」
「は、春人君」
やはり春人君は私の事をよく理解してくれている。 私は目をうるうるさせて春人君の手を取り礼を言う。
「んちゅ」
「んん」
今は口づけだけで我慢してもらいましょう。
この先はまだまだ先になるけれど、春人君もちゃんとわかってくれているしきっと大丈夫。
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