第457話 ワールドカップバレー

 ☆亜美視点☆


 私達女子組はインターハイ開催中に出来なかった受験勉強の遅れを取り戻すために、奈央ちゃんの別宅に集合して勉強会をして……いたんだけど。


「いけー夕ちゃんー!」

「ぶっつぶせ宏太! そこ! 殴れ!」

「殴ったら反則だよぅ」


 現在私達は勉強を一時中断し、リビングにある超巨大モニターをパソコンに繋いでインターハイバスケットボール競技大会の決勝をネット配信で観戦中。


「にしても、今年は余裕あるな」

「ねー」


 夕ちゃん達バスケ部は決勝までも余裕を見せて勝ち上がってきた。 更に決勝戦でも危なげない試合を見せている。

 多分、兵庫のあの人が卒業して夕ちゃん達の相手になれるようなチームがいないのだろう。


「いけいけー」

「おー、今井君また決めたー!」

「おおー夕ちゃんかっこいいー!」


 と、終始夕ちゃん達の圧倒でインターハイ優勝を決めた。 さすが私の夕ちゃんだ。


「凄いわね、バスケ部の皆」

「ま、私達程じゃないけどね」


 まあ、全国大会5連覇の私達はねぇ。 ちょっと比べるのは可哀想である。

 さて、バスケ部の応援も済んだという事で勉強を再開しよう……したんだけど。


 チャララー……


「あぅ? 電話だ」

「ん? 誰からよ」


 私はバッグからスマホを取り出して相手を確認する。

 んと……。


「弥生ちゃんだ」


 弥生ちゃんからはそこそこ連絡が来るんだけど今日はどうしたんだろう?


「はいはいもしもし」


 通話ボタンをタップして通話を開始。


「おう、亜美ちゃん、インターハイぶりやな。 足はどないや?」


 と、私の足の容態を心配してくれる弥生ちゃん。 まあ、大会からまだそんなに経ってないので。


「大丈夫だけど、たいして容体は変わらないよ? それよりどうしたの?」


 特に用事が無くてもかかってくることはあるけど、かかってくる時はバレーボール絡みか、渚ちゃん絡み事であることが多い。

 今日は……。


「昨日、小林監督から電話があってなぁ……あ、小林監督覚えとるか?」


 覚えてるかも何も、日本ユースの監督だった人である。 何度もラブコールを受けたので嫌でも覚えてるよ。


「もちろんだけど、どんな電話だったの?」

「あーバレー部の皆にも伝えたって欲しいんやけど」


 どうやらバレーボール関連のようだ。 でも私達皆に? ちょうど皆いるし。


「ちょっと待ってね。 今ちょうど皆いるからスピーカーにするね」

「さよか」


 ということでスピーカモードにしてテーブルの中央にスマホを置く。


「OKだよ」

「ほな、話を始めるで。 昨日、日本ユース監督やった小林監督から電話があったんやけどな、来年ワールドカップがあるやん? その大会の強化合宿に月ノ木の3年生6人と藍沢妹、んで渚も召集されとるんや。 監督があんさんらに伝えて返事もろてくれ言われてな」

「ワ、ワールドカップの強化合宿?」


 これはまた……。


「わ、私達も?」


 紗希ちゃんが自分を指さして聞いている。 弥生ちゃんが電話の向こうから「そやそや」と言っている。 それにしても月ノ木から8名も召集。 凄い事である。


「で、返答は?」


 弥生ちゃんが返事を急かしてくるけど、今この場で答えを出すのは少々難しい話である。

 ちなみに、宮下さん、大阪の姉妹も召集されている他、ユースで一緒だったメンバーも呼ばれているらしい。 他には前回大会で代表選手だった大人達も一緒という事。


「とりあえず考えをまとめる時間が欲しいから、返事はちょっと待ってもらえるかな?」

「了解や。 監督には伝えとく。 ウチ個人としては、またあんさんと組んで世界の舞台で戦いたいと思うてるけどな」

「あはは、ありがと」

「ほな、それだけやー。 渚にはウチから聞いとくさかいなー」

「うん、またね」


 話を聞いた私達は、一旦その話は置いて受験勉強を再開勉強。 ワールドカップの強化合宿に参加するかどうかは、それぞれが自分で考えて結論を出すことになった。

 私はどうしようかなぁ。



 ◆◇◆◇◆◇



 受験勉強会を終えた私達はそれぞれの家へと帰ってきた。 私はリビングで希望ちゃんと相談中。


「どうする?」


 希望ちゃんがジュースを飲みながら訊いてくる。


「うーん、難しいねぇ。 一応合宿は大学入試後ではあるんだけど」

「うん。 受験には影響ないね。 大会そのものは大学生になってからだ」


 そう来年9月頃に開催予定となっている。 皆とまだバレーボールが出来るのはとても魅力的ではある。 大学は単位さえしっかり取れれば、後は出席日数だけだし……。


「私、とりあえず合宿には参加するよ」

「おお……私も!」

「ちゃんと考えてる?」

「はぅ……」

「あはは、まあいっか。 じゃあ私達は参加だね」

「うん!」


 ということで、私と希望ちゃんはワールドカップバレー日本だ表合宿に参加することに決めた。

 まだバレーボールを続けられるんだねぇ。


 さらに翌日の受験勉強会で皆の気持ちを聞いてみた。


「私は参加するわよー。 ユースの時は呼ばれもしなくて悔しかったし」

「私もだ」


 紗希ちゃんと遥ちゃんは昨日の時点で答えは出ていたというう事らしい。

 さらに奈央ちゃんと奈々ちゃんも参加するとの事。

 決め手は受験が終わった後である事らしく、受験前なら辞退していたという事。

 多分私もそうだっただろう。

 ということで……。


「また6人でバレーボールできるね」

「そうね。 それも、思ってたよりずっと早く」


 1月末に合宿があるので、その時に月ノ木バレー部3年生組は再結集することになる。 楽しみである。

 麻美ちゃんも参加するとの事だけど、受験勉強真っただ中になると思うんだけど大丈夫だろうか?

 奈々ちゃんが聞いたところによると……。


「なはは! 何とかなるし何とかならなくても小説がある!」


 との事らしい。 私も小説があるとはいえ、そこまで楽観視していないけどなぁ。

 麻美ちゃんらしいと言えばらしいけど。

 全員参加するという事を弥生ちゃんに伝える為に電話する。


「おお、全員参加か。 了解やでー! 小林のおっさ……監督に伝えとくわ。 代表して亜美ちゃんの連絡先教えといてええか?」

「うん、お願い」

「よっしゃ。 そうそう、渚も参加って言うとったわ。 ほな、来年は皆で頑張ろうや」

「うん。 またね」

「おう、ほななー」


 元気だねぇ弥生ちゃん。


「よーし! 受験戦争を乗り越えて、すがすがしい気分で強化合宿に参加するよぉ!」

「おー!」


 大学合格の他に新たな目標が出来た私達。 これはバレーボールの腕が鈍らないようにちょこちょこと練習した方が良いかもしれないね。 たまに体育館に顔を出すようにしようかな?



 ◆◇◆◇◆◇



 夕方になると、インターハイから夕ちゃんが帰ってきたのでワールドカップと強化合宿のお話を伝えておく。


「すげーな相変わらず」

「そうだね。 日本の代表になるかもしれないし」

「うんうん」

「頑張れよー。 ってまだ少し先か」

「そだねぇ。 まずは大学受験だよ」

「そうだね! 夢は叶えたいし!」


 私達のバレーボールはまだ続くらしい。 世界を舞台にもう一度頑張るよぉ。

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