第416話 希望のトス特訓
☆希望視点☆
6月が終わり7月に入りました。
今日は7月1日の木曜日です。
この時期になると、夏の大会を勝ち抜けなかった部の生徒は引退して、受験勉強に集中し始めています。 私達バレー部と、夕也くん達のバスケ部はインターハイ出場が決まっているので、まだ部に在籍中。
今日も部活に励んでいます。
「はい! アタッカーとブロッカー、リベロに分かれて攻撃と守備の練習してねー!」
亜美ちゃんもすっかりキャプテンが板についてきて、頼れるようになってきた。
「リベロリベロー」
「あ、希望ちゃんは私と来て」
「はぅ?」
亜美ちゃんにそう言われたので、亜美ちゃんについて別コートの方へ移動する。
移動したコートの中には、月ノ木バレー部
「何するの?」
「うんとね、これから希望ちゃんにはトスの練習をしてもらうの」
「トスの?」
実は私はオーバーハンドトスが大の苦手なのです。 アンダーハンドなら得意なんだけどなぁ。
以前、都姫女子と練習試合をした時に一度だけやってみたけど、やっぱり上手く行かなかった。
亜美ちゃんは、あのチャレンジを褒めてくれて、今度練習しようって言ってくれてたっけ?
「1年生も手を離れて自分達である程度動いてくれるようになったし、やっと希望ちゃんのトス練習に付き合う時間ができたよ」
「ま、そういうこと。 インハイまであまり時間無いけど、頑張りましょ」
どうやら、私の為に貴重な時間を割いてくれるという事らしい。
これは期待に応えないとダメだね。
「私、頑張るよぅっ!」
◆◇◆◇◆◇
「はぅ……思い通りに上がらないよぅ」
ちょっとやってみるものの、強すぎたり弱すぎたり、全然違う場所に上がったりとまったくダメダメ。
「あはは、希望ちゃんがやるのはランニングジャンプトスだもん、難しいに決まってるよ。 ゆっくり上手くなろ? まだ1ヶ月もあるじゃない」
ランニングジャンプトス。
だから、私がオーバーハンドトスをしようと思ったら、アタックラインより後ろで踏み切ってジャンプし、空中でトスを上げなければならないのだ。
「そうそう。 最初から上手く出来るわけないんだから」
「うん……」
「よし、まずは普通に地面でオーバーハンドトスの練習だよ。 そこからトスして3つあるカゴにボールを入れてみるところから」
「トスの高さも意識して下さいね。 アタッカーの打てない高さでは意味がありませんので」
と、いうことで練習開始。
「よぅし!」
私は言われたようにオーバーハンドトスでカゴを狙う。
アタッカーが跳んでいるシーンをイメージして……。
「えいっ!」
トスを上げる。
ボールは程良い高さに上がって……。
トントントン……
狙ったカゴから大きく外れた場所に落ちるのだった。
その後も一杯練習したけど、まぐれで入る以外は全然ダメであった。
今日は部活も終わりという事で、私達は解散。
それぞれ家に帰るのだった。
「で、あれは何してるんだ?」
「トスの練習だよ」
家に帰っても、私はトスの練習を続けていた。
庭でひたすらオーバーハンドトスのリフティングである。
とにかく慣れないと。
「希望ちゃん。 ご飯だよ」
「あと100回ー」
「程々にねぇ」
「うん」
◆◇◆◇◆◇
朝起きてからも少しトスリフティングを行う。
まだ亜美ちゃんさえ起きてない時間である。
少しすると亜美ちゃんが起きてきて、びっくりしたような顔で私を見つめるのであった。
「そ、そこまで根を詰めなくても」
「でも、早く皆に合わせられるようにならないと」
「それはその方が良いけど、希望ちゃんがトスを上げるような事態はそんなに起きないよ? それに、私もいるし」
「私がトス出来たら、亜美ちゃんは攻撃に参加できるじゃない。 私が出来た方が良いんだよぅ」
「そうだけど……」
何より、都姫女子で1学年下の新田さんには負けたくないのだ。
「本当に無理しちゃダメだよ?」
「わかってるよぅ」
そのまま朝食の時間まで続けるのだった。
学校に着いたら着いたで、奈央ちゃんからトスのコツを聞く事にする。
「ジャンプトスのコツですか? んー……そうですわねー。 まずボールが送られてくる方を向いて、タイミング良く跳ぶ事が大事ですわ。 出来るだけ高い所でボールに触れるようにね」
「ふむふむ」
「で、トスそのものなんですが、腕の力で力任せに上げるんじゃなくて、肘のバネや手首のスナップを利かせてふんわり送り出す感じに上げると良いですわよ」
「な、なるほど! 私、力入れすぎてたのかも」
今日は奈央ちゃんのアドバイスを取り入れて頑張るよ。
◆◇◆◇◆◇
部活の時間。 守備の練習を一通り終えた私は、昨日と同じようにカゴを狙ってトスする練習を始める。
「肘のバネ……手首のスナップ……送り出す」
奈央ちゃんのアドバイスを意識して何度か試してみる。
トントントン……
「おお、入りはしなかったけど昨日より良い感じじゃん」
「本当だ。 希望ちゃんやっぱり筋が良いんだなぁ」
紗希ちゃんと遥ちゃんが、そんな風に褒めてくれる。
あれだけ練習したしね。
「もっと頑張るよぅ!」
更に練習を続けていき、この日はかなり手応えを感じる事が出来た。
亜美ちゃんにも上達が早いと褒めてもらえた。
この分なら、大会までに使えるようになるかもしれない。
家に帰ってもボールをトスする練習は欠かさない。 私は亜美ちゃんや奈央ちゃんみたいな天才じゃないから、こうやって頑張るしかないのだ。
そうやって私は、今のLとしての技能を身につけたんだから。
「希望ちゃん、付き合うよ。 私がボールを上げて走るから、ジャンプトスで返してね」
夕飯の支度が一段落したのか、亜美ちゃんが庭に出てきてそう言った。
その日は夕飯の時間まで練習を続けるのだった。
◆◇◆◇◆◇
お風呂には、久しぶりに亜美ちゃんと2人で入る事に。
やはり狭い。
「うーん! 慣れない練習すると疲れるよぅ」
「そうだよねぇ。 でも、2日でかなり上達したよ? 凄いよ」
「あはは、ありがとう。 大会までには完璧に皆に合わせられるように頑張るよ」
「うん。 期待してる。 でも、希望ちゃん頑張ってるなぁ。 何かご褒美上げないとねぇ」
「ご、ご褒美? い、いらないよぅ」
急に言われても、欲しい物とか特には無いのである。
「……んじゃさ、月末は希望ちゃんの誕生日だし、1日夕ちゃんを貸したげるよ」
「……え? い、良いの?!」
「頑張ってるし、誕生日ぐらいはね」
「あ、ありがとう亜美ちゃん!」
「あはは、大喜びしちゃって。 上げるわけじゃないよ? あくまで貸すだけなんだから」
「わ、わかってるよぅ……」
1日夕也くんを借りられる。 嬉しい。
最近は何だかんだ言って、亜美ちゃんが夕也くんとのデートを許してくれないし、たまーに夕也くんが「どっか行くか?」と誘ってくれる時以外は2人で出かける機会も無かった。
……あれ? そう言えばそういう時って必ず亜美ちゃんが居ない時だったような……。
「……何?」
「う、ううん、何でも」
もしかして夕也くんがたまに私を誘ってくれるのって、亜美ちゃんがそうしろって言ってるんじゃ?
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