第357話 春の旅行
☆希望視点☆
今日は4月2日。 皆で旅行へ行く予定の日です。
私も亜美ちゃんも今日を楽しみにしていた。
さて、今回の旅行も大所帯。
私達3人に奈々美ちゃん麻美ちゃん姉妹、宏太君。 奈央ちゃんに紗希ちゃん、遥ちゃん。
渚ちゃんの10名。
紗希ちゃんと遥ちゃんの彼は、どちらも用事で来れないとの事。 残念です。
とはいえ10名もいればかなり賑やかである。
集合は奈央ちゃんのお家に朝10時。 ここから、西條家の私有バスで目的の場所へと向かう。
「おはようございます皆さん」
「おはようございますー!」
奈央ちゃんのお家に集合した私達は、バスに乗り込んで点呼を取ったところである。
全員揃ったのを確認した奈央ちゃんが、今回の旅行についての説明を始めた。
「今回の旅行の主目的は、お花見です。 と言っても、今日は向こうに着いたら疲れてるでしょうから、お花見自体は明日になりますわ」
「はい!」
「はい麻美」
「今日は何して過ごすんですか!?」
元気だなぁ、麻美ちゃんは。
「向こうには色々遊べるスポットもありますので、各自自由行動にしようと思います。 向こうの周辺マップは後で配ります」
「ラジャー!」
納得したのか、麻美ちゃんは座席に座ってゲームを始めてしまった。
「別荘の設備ってどうなってるの?」
「設備は大していつもの変わんないわよ? ちょっと広めのバスルームやキッチン等々。 庭にテニスコートもあるわよ」
「ちょっと広いお風呂って、また全員が入れるような広さやないですよね?」
「え? 当然入れるけど?」
奈央ちゃんの感覚はよくわからないよぅ。 皆が入れる広さのお風呂が「ちょっと広い」って、じゃあ奈央ちゃんが思う「凄く広いお風呂」ってどんな広さ何だろう。
「他に何か訊きたい事はありますかー?」
「部屋割りはどうなってる?」
紗希ちゃんが訊くと。これまた当然のように1人1部屋あると言うのだった。
さすがの私達も、奈央ちゃんの常識外れ感には慣れてしまっているので「そうなんだー」程度の反応しかないのであった。
何だか、私達も感覚がおかしくなっていくよ。
「それにしても、柏原君と神山さんだっけ? 残念だったよねぇ……」
「そうねー。 裕樹は塾やら何やらで大変みたいなのよ……。 可哀想だわ」
「よく文句言わずに続くわよねー彼も」
奈々美ちゃんは「私なら家出てるわよ」と、菓子パンを頬ばりながら言う。
奈々美ちゃんなら本当にそうしていただろうなぁ。
「あいつはそんな度胸のあるタマじゃないもの……彼女として苦労が絶えないわよー。 今井くーん癒してぇーん」
「うおお、紗希ちゃん離れてくれー。 あ、亜美の目が怖いんだよ」
「夕ちゃんっ! 何で鼻の下伸びてるのよー!」
「ぐえぇぇ」
紗希ちゃんに抱きつかれて亜美ちゃんに頭をぽかぽか叩かれて、大変そうだなぁ。
私もちょっと頭をぽかぽかしたいけど、可哀想だからやめてあげよっと。
「紗ー希ちゃーんもーはーなーれーてー」
「いいじゃーんー」
「むにゅむにゅがー」
「むにゅむにゅなら私もあるよー!」
うわ、夕也くん2人の胸に挟まれてすごく幸せそうな顔してる。 わ、私にもむにゅむにゅあるんだけどなぁ。 あの2人と比べられるとちょっと劣るけども……。
「何をやってんのよあんた達……」
あ、奈々美ちゃんが呆れたような顔で止めに入った。 やっぱりこういう時は奈々美ちゃんだよねっ。
「私も混ぜなさいよ」
「えぇっ?!」
驚いて声出しちゃったよ。 あの奈々美ちゃんが2人に混ざって夕也くんに抱きついている。
宏太君もいるのに何て大胆な……。 宏太君は宏太君で何も気にしていないようで半分寝てるし。
「うおおおお……奈々美やめろー! 天国に逝ってしまう! いや、もうここが天国か」
「あはは、今井君モテモテー」
「紗希ちゃんも奈々ちゃんも離れてー」
「良いじゃん別にー」
夕也くんは巨乳3人組にに揉みくちゃにされて大変……もとい幸せそうなのであった。
◆◇◆◇◆◇
西條家私有バスは軽快に走り続け、現在は高速道路を走っている。 夕也くんは3人から解放されて亜美ちゃんの隣で座っている。
珍しく亜美ちゃんが夕也くんにべったりくっついてイチャイチャしているのは、旅行でテンションが上がってるからだろうか。
紗希ちゃんもまだ何か狙ってるようだ。
「ふぁーあ……眠いよぅ」
朝早かったから眠たいよ。 ちょっと寝ようかなぁ……。
「すー……すー……」
そう思ってすぐ寝れる私なのだった。
☆亜美視点☆
高速に入り、紗希ちゃんも奈々ちゃんも夕ちゃんから離れて自分の座席へ戻っていった。
紗希ちゃんは油断してるとまた何かしてきそうだねぇ。 奈々ちゃんも珍しくテンション高めだったね。 普段あんな風に夕ちゃんにべったりくっついたりしないんだけど。 とはいえ、去年は夕ちゃんと一晩過ごしたこともあるし、1人の男性として見ているって事なんだろうねぇ。
「ね、夕ちゃーん」
「ん?」
「楽しみだねぇー」
「そうだな」
「向こう着いたら何があるんだろうね」
「周辺マップ貰わねぇよ何とも言えないけど、とりあえずは出歩いてみようぜ」
「うん。 希望ちゃんも……って、寝ちゃってるよ」
「ははは、本当に寝つきが良いよなあいつは」
「寝るって決めたら3秒だもんねぇ」
正直あれはもう特技の域に達している。 私もアレにだけは勝てる気がしないなぁ。
寝顔可愛いなぁ、希望ちゃん。
「ねーねー亜美姉、渚が夕也兄ぃの隣に座りたいってー」
「言うてへんやろそんなこと! あんたやんかー!」
「にゃはは」
「良いよぉ? ちょっとだけ席替わろうか?」
「え? 良いんですか? やのうて、べ、別に私は……ごにょごにょ」
と、渚ちゃんはどもってしまう。 相変わらずだねぇ渚ちゃんは。 もうすぐ1年経つのに夕ちゃんへのアタックは全然である。 まぁ、アタックしないならしないそれは良いんだけどね。
「じゃじゃー、私が夕也兄ぃの隣行っても良い?」
「良いよぉ」
ということで、私は麻美ちゃんと席を交替。 渚ちゃんの隣に座る。
「そういえば春休みは帰らなかったんだね?」
「はい。 正月に帰ったんで」
「なるほどね」
「お姉ちゃんは帰ってるみたいですけど」
「同じ京都内だもんね? 帰るのも楽だろうしね」
「そうですね。 寮から家まで1時間掛からんみたいですわ」
なるほど、結構近いんだね。 話によると毎日通うのが面倒な距離だから寮に入ったらしい。
弥生ちゃんらしいと思う。
「渚ちゃんはさ。 数ある高校からどうして月ノ木選んだの? 弥生ちゃんと試合するなら、京都の高校とかあったでしょ? 京都じゃなくても大阪の銀光とか強豪だし月ノ木より近いじゃない」
「京都の高校じゃ立華には勝てないですからね。 大阪は考えたんですけど、お姉ちゃんから聞いてた月ノ木に興味があったっちゅうか……」
「そっかぁ。 弥生ちゃんのおかげかー」
「そうですね。 インハイの試合をテレビで見て『ここや!』って思うたんです」
「そっか。 うちに来てくれて嬉しいよ。 夏からはチームのエースとして頑張るんだよ?」
「任せてください」
と、頼もしい声でそう言うのだった。 恋愛もこれぐらい前向きならいいのにねぇ。
渚ちゃんと会話を楽しんでいると、バスは休憩のためにサービスエリアへと入っていた。
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