第323話 白熱の姉妹対決
☆渚視点☆
3セット目も1回目のテクニカルタイムアウトを迎えたところ。
得点は私ら月ノ木が8-6と2点のリード中。 今日の試合、流れは完全にこっちにあるみたいや。
3人同時の高速連携もドハマリしてて決まりまくり。 せやけど、まだ私は最初の1発しか決めてへん。
清水先輩と神崎先輩が絶好調なんもあるやろうけど、トスはそっちに集中しとる。 そや言うても、文句は言えへん。 これは全国大会の決勝戦。 勝つことを優先するべきやから、個人的な感情はこの際無視しなあかん。
まだまだ、お姉ちゃんと勝負できる土俵にも立ってへんいうことか……。
「今日は本当にこのままいけそうね。 亜美ちゃんも紗希も調子良さそうだし」
「うん。 調子は良いよ」
「私はいつもぜっこーちょー!」
凄いなぁ、この先輩達は。 この舞台でしっかりと、自分のテンションやパフォ-マンスをピークに持ってこれる。 見習わなあかんな……。
「渚はどうなの?」
「え? あ、調子の方はええですよ。 ただ、今日は清水先輩と神崎先輩がええ感じやし……」
「んじゃー、渚にもトスガンガン上げるんでよろしくね」
「へ? は、はい」
な、なんや? このまま清水先輩と神崎先輩で押していくんとちゃうんか。
ま、まぁ、西条先輩にお任せしたらええか。 この人の判断は今まで何も間違ったことあらへんからな。
「よし、じゃあ行くよ! 皆、あと少しだから頑張ろうね!」
「おー!」
チームの士気がめっちゃ高い。 よし、私も負けてられへんで。
コートに入って、ポジションにつく。 サーブは清水先輩から。 今日はサーブでも大活躍してはるし、ここも期待してええはずや。
「っ!」
今回は珍しく、威力重視した強めのサーブを打ちはったな。
せやけど清水先輩、パワーは全然あらへんぁ……。 あんな非力やのに、なんであんな跳べるんやろ?
「ナイスサーブ! 返って来るわよー!」
上野先輩がレセプションを決めて眞鍋先輩がトスを上げる流れのようだ。
「月島にブロック2枚! 渚タイミング合わせて」
「はい!」
蒼井先輩の指示に従ってお姉ちゃんのブロックに入る。
「せーの!」
トスがお姉ちゃんに上がった。
「止めるで!」
「まだまだ止められたるわけにはいかんで!」
お姉ちゃんが思いっ切り腕を振って打ち込んでくる。
パァン!
私の腕に当たると、ボールは私とネットの間に入り込んでしまう。
あかん、スパイクの威力に負けてももうたか。
ピッ!
「渚、まだまだやな」
「くっ」
お姉ちゃんに煽られて、少しイラっとするもすぐに切り替えて冷静になる。
あかんあかん。 熱くなったらお姉ちゃんの思う壺や。
「次! 切るよ!」
清水先輩はキャプテンになってからよく声を出すようになった。
最初はキャプテンっぽくないなぁと思うてたけど、なんだかんだ最近は板についてきた。 うちのチームの大黒柱やな。
「次、渚に行くわよ。 お返ししてあげなさい」
「……はいっ」
西条先輩からのトス宣言。 私かて、お姉ちゃんに負けてられへん。
立華からのサーブが飛んでくるのを、雪村先輩がしっかりとレセプションする。
本当に凄い人やで……普段の頼りない感じとは打って変わって、コートの中ではめちゃくちゃ頼れるリベロプレーヤーになる。
私は、助走に入り、セミ攻撃を要求する。
蒼井先輩がDクイック、神崎先輩がBクイックの助走に入っている。
2人が先跳び、少し遅れて私が飛ぶ。
「渚!」
さっき聞いていた通り、私にトスを上げる西条先輩。
次期エースなんて言われてるけど、私はまだ藍沢先輩の跡を継げるほどのプレーヤーやない。
せやけど、そうならなあかん。
「なったる!」
目の前にお姉ちゃんとキャミィさんが手を上げて跳んでいる。 セミクイックに2枚?
蒼井先輩にはブロック無し……読まれてたんか。
空中で相手のコートの中を見渡す。 時間は一瞬。
次の瞬間には腕を振る。
パワーでゴリ押すだけやのうて、技術を……。
「磨く!」
スパァン!
2枚のブロックの間を抜くスパイクで、ストレートコースに突き刺す。
昨日、都姫の宮下先輩もやっていたやつや。
「っしゃ! どや!」
「……へぇ、ちっとはやるようになったやん? どんどん来ぃや」
お姉ちゃんは、ニッと笑い指をクイクイッとしている。
どうやら私を戦う価値のあるプレーヤーだと認めたらしい。
よし、勝負や。
「西条先輩、どんどん下さい」
「トスは私に任せてもらうわよ」
「はい」
これは個人戦やなくてチーム戦や。 それでええ。
私にトスが上がった時だけ全力で応えるだけのことや。
「蒼井先輩ナイスサーブたのんます!」
次は蒼井先輩のサーブや。 このローテになると、前衛には雪村先輩に代わって麻美が入ってくる。
清水先輩曰く、今の最高の選手起用法らしい。
常に前衛にMBがいて防御力も補えるっちゅうことらしい。
蒼井先輩のサーブが、凄い勢いで飛んでいく。 蒼井先輩のパワーも藍沢先輩やお姉ちゃんに負けてへんなぁ。
「はいよっ!」
それを拾うのは後衛に下がっているMBの人。
あれを普通に拾えるのは正直凄いと思う。 リベロならまだしも、MBでもあのレシーブ力……やっぱ京都立華は層が厚いなぁ。
お姉ちゃんがセミクイック攻撃に走っている。 それやったら私はそこを止めるまでや。
「渚! お姉さんは神崎先輩に任せて、キャミィさんにつくよー!」
麻美がそう言って移動していく。
MBがそう言うんやったらしゃーないな。
「強烈だから、威力に負けないように! せーの!」
トスはキャミィさんに上がった。 平行トスをクイックで打ってくるキャミィさん。
パァン!
「ぐ!?」
クイックでこの威力は反則やろ。
ブロックした手に当たったはいいが、そのままぶち抜かれてしまう。
「っ!」
そのボールに清水先輩がダイビングで飛び込む。 ディグは成功し、ボールが上がる。
「ナイス亜美姉!」
麻美は早くもクイック攻撃の助走を始めている。
神崎先輩はセミクイックに。 せやったら私はオープン攻撃や。
「ほら渚!」
私にトスが飛んでくる。 これは予想外や。 普通に神崎先輩の方に上げる思うてたけど……。
せやけど、私を選んでくれはったんやから、期待には答えなあかん。
ブロック2枚、さっきと同じでお姉ちゃんとキャミィさんや。 今度はきっちり間を詰めてきとるから、さっきみたいな間を抜くスパイクは無理や。 こういう時は……。
「これや!」
パァン!
キャミイさんの左手に上手く当てて、ブロックアウトを狙う。
跳ね返ってきたボールは、サイドラインを割り見事ブロックアウトを取ることに成功した。
「っし!」
思わずガッツポーズが出る。
「ナイス渚ちゃん! 良いスパイクだったよ!」
ポンッと肩を叩いて清水先輩が声を掛けてくれる。
私は「おおきにです!」と返事をしてポジションに戻る。
今日はなんや良い感じに空中で落ち着いて相手コートが見れてるな。 先輩達もこんな感じでスパイク打ってるんやろうか?
なんか、ブロックを手玉に取ったりするのは楽しいもんやな。
ここでブレイクも取れたし、このままほんまに3セットで決着するかもしれへんな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます