第295話 お泊まり会

 ☆亜美視点☆


 奈央ちゃんの家のクリスマスパーティーは終わった。

 だけど、奈央ちゃんからの提案でお泊り会が始まったのだった。


「でも、この人数泊められる部屋ってあるんですか?」

「私の部屋で良いでしょ? 雑魚寝になるけど。 ベッド端に移動させれば布団8枚ぐらいなら余裕よ」

「西条先輩の部屋広ーい!」

「凄すぎやろ……」


 なるほど、あの部屋なら確かに全員分の布団ぐらい敷けるだろう。

 とんでもない広さの寝室である。


「布団は使用人に敷かせるから、その間にお風呂入りましょ」

「お風呂の順番はどうしはります?」


 8人いるからねぇ……。


「え? 皆で入れば良いでしょ?」



 ◆◇◆◇◆◇



 浴場へとやって来た私達は、その広さに唖然としていた。

 奈央ちゃんが皆で入れば良いと言うだけある。

 余裕で8人ぐらいは入れる浴場だった。


「あ、ありえへん……こんな世界があるやなんて……」

「これ、床とか大理石よね?」

「あ、あはは……」


 渚ちゃんの反応が普通である。

 希望ちゃんは泡を吹いているよ。 ちょっと大袈裟すぎるよ……。

 紗希ちゃんは何度か泊まっているらしいので、この状況でも平然としている。

 私も最近は、奈央ちゃんの事に関しては普通じゃないと思うようにしてるから、これぐらいの事なら何とか受け止められるようになってきた。

 麻美ちゃんももう慣れたのかヘラヘラしている。 むしろ姉の奈々ちゃんの方がまだ慣れていないみたいだ。


「さ、ご自由にどうぞ」


 と、奈央ちゃん。

 本当に銭湯のようになっていて、シャワーや蛇口なんかも無駄に大量にある。

 何で?

 考えても仕方ないので、とりあえず先にシャワーを浴びる私達。


 シャー……


「年末のー新体測定!!」

「ふわわぁっ」


 もみもみ……


 油断していた。 紗希ちゃんはすぐこういう事をするんだった。

 無防備な状態で、とにかく揉みしだかれる。


「うーん、前回と変わらずかなー? ちゃんと揉まれてる?」

「お、教えないよぉ」


 うーん、成長してないのかー。 でもあまり大きくなりすぎても困るけど……。

 紗希ちゃんは大変じゃないのかな? てか聞いてみよう。


「そう言う紗希ちゃんはどれくらいあるのよー?」

「んー? 私の? 96だったかなー」

「ぶふっ……ば、バケモンやないですか?!」

「ひどいなー……でもそろそろ止まってほしいわねー。 3桁とか洒落になんないでしょ?」

「いや、すでに洒落になってないから……」

「ほぉーん。 そういう奈々美のはどうなのよっ!」

「はぁ……」


 奈々ちゃんは抵抗するだけ無駄だと理解しているのか、大人しく触らせている。

 紗希ちゃんもこういうのは面白くないらしい。


「んー、あんただってもう92ぐらいあるでしょ」

「……」

「お姉ちゃんも化け物じゃーん」

「うっさい」


 ぽかっ……


「いったーい! お姉ちゃんにぶたれたー」

「紗希、この子のはどうなのよ?」

「どれどれ」


 物凄い速さで麻美ちゃんの後ろを取った紗希ちゃん。 なんて動きなの……。


「うぇっ神崎先輩っ?! あぁん」

「ちょっと、良い反応すんじゃないのぉ!」


 あ、紗希ちゃんに目をつけられたねこれは。

 紗希ちゃんに揉みしだかれて、体をくねくねさせる麻美ちゃん。

 これはかなり効いているようである。


「83ってとこね」

「麻美、結構あるんだなぁ」

「遥先輩はぁ?」

「遥は85だったわよ」


 既に触られていたようである。


「この際だから奈央と希望ちゃんのも触っておきますかねぇ」

「はぅっ?!」

「あんたねぇ」


 などと言っている隙に、後ろに回り込まれている2人。

 もはや逃げ場はないのだ。


「はぅぅん……」

「おうおう、この反応たまらんねえ」

「おっさんかあんたは……」


 右手で希望ちゃん、左手で奈央ちゃんのを触っている。

 そんなことまで出来るのね……。


「希望ちゃんは麻美と一緒で83! 奈央は……73」

「いいじゃないのよぉ! 需要はあるわよ!!」

「春人、可哀想に……」

「むきーっ!」


 入浴時間中はこんな感じで、終始賑やかに過ぎていった。

 ちなみに、渚ちゃんのは85あったらしい。

 紗希ちゃんの手は、相変わらず謎である。



 ◆◇◆◇◆◇



 入浴を終えて奈央ちゃんの部屋に戻ると、人数分の布団が敷かれていた。

 お風呂といい、布団といい、どうしてこんな沢山あるんだろう?

 それを訊いてみると……。


「使用人の分よ。 使用人何人いるか把握してないから、何でも多めにしてあるの」

「把握しときなさいよ……」


 やはりスケールが違うのだった。

 まだ寝るには早いって事で、トークタイムが始まる。


「渚って京都でもバレーやってたんでしょ?」


 奈央ちゃんが話を始めた。


「はい……」

「京都の早波中でしょ? 全中にはいなかったわよね?」

「私、中学の部活やのうて、クラブチームに所属しとったんですよ。 言うて、そんな強いチームやなかったから、万年予選敗退でしたけど」

「ふーん。 なるほどね」


 奈央ちゃんはある程度察したのか、それ以上の事を聞き出す事はしなかった。

 代わりに……。


「京都では気になる男いなかったの?」

「い、いいひんかったです。 言い寄ってくる男は結構おったんですけどね」

「やっぱモテてたんだ」


 紗希ちゃんがそう言うと、渚ちゃんは「そ、そんな言う程では」と、謙遜した。

 しかし、それも麻美ちゃんの暴露により無駄になってしまう。


「今のとこ、21人斬りしてるよこの子ー」

「麻美っ!」

「きゃははは! やるねー渚」


 紗希ちゃんは、自分の太ももをパンパン叩きながら大笑いしている。

 希望ちゃんが「も、もうそれぐらいに」と渚ちゃんのフォローに回る。


「希望は最近どうなのよ?」

「わ、私?! 何でこっちに矛先が……」

「希望ちゃんは、最近全然だよ。 先月で4人だっけ?」

「あ、亜美ちゃん……」

「意外だね。 もっとモテるだろうに」

「違うわよー」


 と、そう言うのは紗希ちゃん。

 そう、違うのである。


「希望ちゃんはね、学校内で本人公認のファンクラブがあるのよ」

「えっ? 公認?」

「う、うん……」


 そうなんだよね。 希望ちゃん公認のファンクラブがあるのである。


「私が公認する代わりに、私へのアタックは控えて欲しいって条件を提示したの。 だから、会員の人は逆に告白とかしてこないんだよ」

「う、上手くやったわね……」

「ファンクラブって言ったら、亜美ちゃんと奈々美ちゃんのもあるでしょ?」

「らしいけど、私も亜美も公認してない非公式よ?」

「どんな活動してるのかとか、良く知らないよ」


 あるらしいという事を知っている程度で、それ以外の事は何も知らない。

 なんていうか怖いね。


「何だか、私達ってとんでも軍団ね……」

「私をあんた達と一緒にしないでくれ」

「遥はぁ……まあ、最近はでも割と人気あるじゃない? 女子からも男子からも」

「ぐぐっ……」


 イメチェンしてからの遥ちゃんは、本当に人気がある。

 女子からは相変わらずだし、男子からも一定の人気がある。

 やっぱりちゃんとすれば美人だしモテるんだよ。


「で、噂の彼とはどうなのよ?」


 奈々ちゃんが、遥ちゃんに突っ込んだ質問を投げかける。

 かく言う私も、少し気になってはいたんだよね。

 夏祭り以降、新しい話が無かったからね。


「あー、相変わらず良いトレーニー仲間って感じかな」

「はぁーっ! あれから進展無し?! マジ?」

「い、良いんだよこれでー!」


 遥ちゃんは、今の関係を維持したいのだと言う。

 本人がそう言うなら仕方ないけど、もし怖くて前に進めないって事なら……力になって上げたいと思う。

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