第233話 プールでサーフィン

 ☆夕也視点☆


 俺達は夏休みにプールへ遊びに来ている。

 西條グループの経営するプールらしい。


「じゃあ着替えね。 男子はあっち」

「はいよ」

「また後でな」


 ということで、男子女子に別れて着替える。

 女子の水着は楽しみではあるが、あまり他の女子に見惚れていると亜美が怒り出すかもしれない。


「やっぱ神崎の水着が楽しみだよな?」

「お前、奈々美にブチのめされるぞ」


 それは思っていても、口に出さない事が長生きの秘訣だ。

 

「大体、奈々美さんだって十分良い体してるじゃないですか」

「まぁ、そうなんだけどな」


 とかいう、変態丸出しの会話をしながら、さっさと着替えてプールへと向かう。

 女子は相変わらず時間がかかっているようだ。

 さて、今日は希望、紗希ちゃん、渚ちゃんにサーフィンを教えることになった。

 といっても、希望と紗希ちゃんには既に一度教えている。

 基本を覚えているか確認したら、あとは1人でも大丈夫だろう。

 問題は渚ちゃんだな。

 教えてほしいってことは、おそらくサーフィン未経験者なんだろう。

 基本を教えてやらねばなるまい。


「それにしても、サーフィン出来るプールってなんだよ……」

「考えるなよ夕也。 西條の家は色々ぶっ飛んでるなんて、今にわかったことじゃないだろ」

「そうだな」


 宏太はもう悟ったようだ。


「お待たせ―!」


 元気な声を上げてやってくるのは、元気っ子の麻美ちゃん。

 奈々美程発育しているというわけではないが、それでも十分女性らしい体つきをしている。

 可愛らしいスカート状になっている水着は、カラフルな水玉模様を散りばめてあり、元気な麻美ちゃんらしいチョイスだ。


「どぉどぉ? 夕也兄ぃ、惚れた?」

「可愛いけどそこまででは」

「ぶー!」

「こら麻美。 亜美が黒いオーラ出してるからその辺にしときなさい」

「だ、出してないってば……」


 その後ろからやって来たのは、奈々美と亜美。

 奈々美は、自分の魅力を知っているようで、ちょっと際どい水着。

 普段と違い、赤いものをチョイスしている。

 胸に目が行く。


「うわわ、夕ちゃんどこ見てるの?!」


 亜美の方は、白のビキニ。

 やっぱり白が似合うなぁ。 そして、今年の夏もヒモパンである。


「おお、さすが亜美ちゃんだぜ……眩しい」

「あ、あはは……ありがと宏ちゃん。 でも、奈々ちゃんが黒いオーラ出してるからその辺にね?」


 奈々美の方は本当にオーラが出ていた。

 宏太の奴、ワザとだなこれ。

 その後ろから、続々と皆がやって来た。


「どぉー?」

「はぅ……」


 紗希ちゃんと希望は、お揃いの水着で色違いのようだ。

 どちらもワンピースタイプだが、お腹と背中が大きく開いている。

 紗希ちゃんは黒、希望は黄色をチョイス。

 しかし、紗希ちゃんは相変わらず高校生離れした体してんな……。


「夕ちゃん、鼻の舌伸びてる」

「……」

「皆、好きに楽しんでねー」

「やっぱ私にこれは似合わんだろ……」


 奈央ちゃんは、可愛いフリルの着いたピンク色のワンピースタイプ。

 似合ってんなぁ。

 しかし、あんまり成長してないな……何がとは言わないが。

 遥ちゃんは、今年はビキニに挑戦……させられたんだろうな。

 青いビキニで特別凝った意匠ではない。

 そこは抵抗したのだろう。


「……」


 で、最後に渚ちゃん。

 ハイビスカス柄の可愛いパレオを腰に巻いている。上もハイビスカス柄だから、おそらくは下もそうなんだろう。


「全員揃った? んじゃ、自由行動開始!」


 と、奈央ちゃんの一言で、それぞれが自由にバラける。

 希望、紗希ちゃん、渚ちゃんがススーッと寄ってきて、早速サーフィンを教えろと催促してきた。

 亜美に手を合わせて謝ると、苦笑いしながら「いいよぉ」と、許してくれた。

 亜美はというと、奈央ちゃん、春人組と行動するらしい。

 久しぶり来た春人と遊ぶのはまあ、仕方ないな。


「今井君ごめんね」

「気にしなくて良いよ。 んじゃ行くか」


 という事で、美女3人を引き連れて高波の出るプールとやらへ向かった。


 ◆◇◆◇◆◇


「おおー!」

「凄いねっ!」

「ここプールですよね……?」

「お、おう……」


 目の前には、立派な砂浜があり、丁度良い高さの波が定期的やってくるプールがあった。

 いや、ちょっとしたビーチだぞこれは。

 これは想像以上だ。

 ボードのレンタルもしてくれるらしい。

 ウェアもあるが、せっかく水着を着てきたのだからと、拒否していた。


「よし、渚ちゃんはちょっと待っててくれ」

「はい」

「まず、希望と紗希ちゃんは去年教えた事が出来るか見せてくれ」

「よーし! まず私ー!」


 と、元気よく紗希ちゃんが手を上げる。

 それだけで胸がぷるんぷるん揺れるのは反則だと思う。

 紗希ちゃんは、サーフボード片手にプールへ入って行き、腹這いになって波を待つ。


「ふむ……」


 手で水を掻いて全身、波に乗ったタイミングで、素早く立ち上がる。

 素晴らしい。


「さすが紗希ちゃんだねっ」

「だなぁ。 1年ぶりなのにしっかり覚えてるみたいだな」

「凄いですねー……私にも出来るやろか……」


 と、ちょっと不安そうに渚ちゃんが言うと──。


「大丈夫だよ。 夕也くん教えるの上手だし、去年は私でも出来たんだから、渚ちゃんなら余裕だよぅ」


 と、希望がフォローを入れる。

 希望も運動神経自体はかなり良い方だけどな……。


「どぉだ!」


 帰ってきた紗希ちゃんが、偉そうにしながらそう言ってきた。

 胸を突き出すのはやめてほしい。


「お、おう。 合格だな。 さすが紗希ちゃんだ」

「まあね!」

「じゃあ次は希望な」

「おー!」


 と、ちょこちょことした動きでプールの中へ入っていく。


「いちいち動きが可愛いな……」

「わかるー」

「マスコットですかね……」


 ある種そんな感じかもしれない。

 希望は、大きく手を振ってスタートした。

 希望の方も、1年ぶりの割にはちゃんと波に乗れている。

 やっぱり運動神経は良いな。


「出来たよ!」


 戻ってきた希望は、子供のようにはしゃいでいた。

 んーむ、もう教えるような事は無さそうだが……。


「よし、2人はしばらく自由に波乗りを楽しんでてくれ。 ちょっと渚ちゃんに基礎を教える」

「「ラジャー!」」


 と敬礼した後、2人はサーフボードを持ってプールへ走って行った。

 元気だなぁ。


「よし! んじゃ、まずは陸で練習だ」

「……陸ですか?」

「うむ。 まずは陸で立ち上がる動きを感覚で覚えてもらう」


 俺はボードを砂浜の上に置いて、そこに腹這いになる。


「まずは見ててくれ」

「はい」


 まずは手で掻く動作をする。


「こうやって後ろから来た波に乗ったら……」


 すかさずボードに両手をつき、素早く立ち上がる。


「この時、両足で同時に立ち上がるのが大事なんだ」

「おぉ……なるほど」

「まあ、習うより慣れろだ。 やってみな」

「ラ、ラジャー」


 と、先程の希望達のように敬礼する渚ちゃん。

 実はお茶目なところもあるらしい。

 ボードの上に腹這いになる渚ちゃんを前からチェック。


「んん!」

「へっ? 何か変ですか?」

「いや、大丈夫」


 角度的に、渚ちゃんの胸の谷間がしっかりと見えてしまい、一瞬気を取られてしまった等と言えるわけがない。

 ただでさえ嫌われているのが、更に嫌われてしまう。

 それにしても、中々立派な物をお持ちだな。

 じゃなくてだな……。

 渚ちゃんは真剣に練習しているんだ。 俺も真剣にならないとな。



 ◆◇◆◇◆◇



 しばらく陸上練習をしてもらい、だいぶ形になったところで実際にプールで波に乗ってもらう。

 少し離れたところで、様子を見る事にする。

 

「パドリングは問題無いな」


 波に乗ったタイミングで、ボードの上に立つものの、波の上ではバランスを取らなければならない。

 陸上練習では、それは身に付かないので実践で慣れていくしかない。

 案の定、上手くバランスが取れずに落水した。


「ぷはー……む、むずい」

「大丈夫かー?」


 一応、ボードに体等をぶつけていないか確認。


「は、はい。 大丈夫です」

「そうか。 最初はそんなもんだ。 繰り返して練習して慣れていこうな」

「が、頑張ります」


 その後も何度か波に乗り、落ちるを繰り返す渚ちゃん。

 努力家な良い子である。

 

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