第216話 誕生日プレゼントは

 ☆希望視点☆


 今日は私の誕生日ということで、夕也くんとのデートを許されている。

 以前から夕也くんとのデートで行こうと思っていたサファリパークへやって来ているよ。

 今は車に乗せてもらい、サファリゾーンをゆっくりと見ているところだよ。


「希望、ちょっとはしゃぎすぎじゃないかぁ?」

「そうかなっ?」


 話し半分に聞きながら、周囲に動物がいないかキョロキョロと視線を動かす私。


「聞いちゃいねぇなこりゃ……」


 夕也くんが何か言ったような気がするけど、私は気にせず楽しんでいる。


「お、運が良いですね。 あそこにトラの親子がいますよ。 このあとかなり接近します」

「おートラさんだよ夕也くん」

「おう、さすがにかっこいいな」


 トラといえば、奈央ちゃんの家にいる2匹のトラさん元気かな?

 ジョセフとセリーヌだっけ? 今度行った時に会わせてもらおう。


「凄く近いよぅ!」

「近くで見ると本当に猫みたいなんだな」

「うんうん」


 近くで見ると本当に猫さんみたいなんだよね。

 ただ、ここにいる子達は奈央ちゃんの家の子達みたいに躾けられてるわけじゃないみたいだから、手とかは出さない様にという事らしい。


「トラさんバイバーイ」


 トラさんに手を振り別れた後も、色んな動物達と遭遇した。

 ライオンさんやキリンさん、ゾウさん。 池でのんびりしているカバさんなどなど、非常に満足の行く周園であった。


「ありがとうございました」

「はい、どういたしまして」


 夕也くんがガイドさんにお礼を言って、私達はサファリパークを後にした。

 わ、私もちゃんとお礼言わなきゃいけないのに、緊張して何も言えなかった。

 もっと頑張って克服していかないと。


「この後はペットショップだっけ?」

「うん。 この近くに大きなペットショップがあるんだって」

「んじゃあ、行くかね」

「うんっ」


 私達は、バスに再度乗り込み、ペットショップがある近くまで移動することにした。


「希望、サファリは楽しかったか?」

「うん、最高だったよっ。 ゾウさんとかをあんな近くで見れるなんて思ってなかったもん」

「そうか」


 次のペットショップでは、サファリにいた子達とは違い、可愛らしい子達を見て癒されよう。

 バスを降りて、少し歩いた所に巨大なペットショップが建っていた。


「ここだね」

「でかいなぁ」

「そ、そうだね。 私もここまで大きいとは思ってなかったかな」

「見応えありそうだな」

「うん。 入ろう」


 ということで、そのペットショップに足を踏み入れた。

 まず出迎えてくれたのは、ペットと言えばのワンちゃんニャンちゃん。


「見て夕也くん。 可愛い子達が一杯いるよぅ」

「だな。 皆半分寝てるけどな」

「それがまた可愛いんだよ。 あ、この子尻尾振ってる。 可愛い」

「愛想ふりまいてやがるなぁ」


 こういう子は人懐っこかったりするんだよね。

 ミニチュアダックスフントかぁ。


「いつかワンちゃん飼いたいなぁ」

「ははは、大変だぞ世話とか」

「大丈夫だよぅ!」

「ははは、叶うといいなぁ」

「うん」


 猫さんも見てみる。

 亜美ちゃんは犬より猫さんが欲しいって言うだろうなぁ。

 

「あはは、この子見て。 寝転んで足をピクピクさせてるよ」

「なんだろうなこれ。 何かの合図なんだろうか?」


 と、話していると、お店の人が話しかけてくれた。


「これはね、この子が餌をねだってる時のポーズなのよ。 この子だけやるのよ」

「ほぉ、面白い奴め」

「あ、ありがとうございます」

「いえいえ」


 私は頑張って声を出してお礼を述べる。

 頑張ったよ。 それは夕也くんにも伝わったようで──。


「良く頑張ったな?」

「うん。 ゆっくりでも克服していかないとね」

「そうだな。 将来は幼稚園の先生だもんな」

「あはは……まだまだわからないけどね」


 夢は夢だ。

 叶えられるように努力はするつもりだけど、なれるかどうかはわからない。


「夕也くん、こっちは小動物エリアみたい」

「おう」


 そのエリアにはハムスターやミニウサギ、ハリネズミなどのペット達がいた。


「はぅーっ。 か、可愛いっ!」


 なんて愛らしいのだろう。

 特にハムスターちゃん達が、私の心をギュッと鷲掴みにしてしまった。

 

「はぅーっ」

「希望、近い近い」


 あまりの可愛さに、ケースに顔が付きそうな位の距離でハムスターちゃん達を凝視してしまっていた。

 破壊力が高すぎるよぅ。


「ちょっと待ってろよ」

「?」


 そう言うと夕也くんは近くの店員さんに声を掛ける。


「すいません。 あっちのケースのハムスターを出してくれませんか?」

「はーい」

「!!」


 夕也くんは、私の為にハムスターちゃんを触らせてもらえるように、店員さんにお願いをしてくれたのだ。

 店員さんがやって来て、ハムスターの入ったケースを開けてくれる。


「ほら、希望」

「う、うん」


 私は、ゆっくりと手を入れる。 

 すると2匹ほど、ちょろちょろ私の手に寄ってきて臭いをかぎ出した。


「か、可愛い……」

「だな」


 そうこうしていると、そのうちの1匹が私の手に乗ってきた。


「はぅ」

「人懐っこい子達だな」

「そうだね」


 私はしばらくの間、ハムスターと戯れて楽しんだ。

 その後も、インコさんや、トカゲさんなどを順番に見た後でもうい一度ハムスターちゃんを見てからショップを後にした。


 ペットショップに併設される感じで建っているドッグカフェで休憩することにした。

 私達には同伴のワンちゃんがいないのだけど、他のお客さんが連れてきている可愛いらしいワンちゃん達を見て楽しんでいる。


「夕也くん、あの子がこっち見てるよぅ。 可愛いね」

「そうだな。 あれはチワワだな」

「うんうん、 小さく愛らしい見た目だよね」

「抱きますかー?」


 そんな話をしていると、飼い主らしきお姉さんが声を掛けてきた。


「お、良いんですか?」

「どうぞー、この子も気になってるみたいなんで」

「だってよ希望」

「う、うん……あ、あのぅ、ありがとございましゅ」


 噛んでしまった。

 お礼を言って手を差し出すと、お姉さんがチワワちゃんをの腕に乗っけてくれた。


「大人しい子だから、硬くならなくても良いですよー」

「はぅー、可愛い。 本当に大人しい……」


 チワワちゃんは、私の腕の中でじっと大人しくしていて、時折クルッっと私の方を振り向いて舌を出す。

 しまいには、私の顔を舐めだした。


「あはは、くすぐったい」

「懐いてるな」

「人懐っこい子なんですよ」

「あの、ありがとうございました」


 私は頑張って声を出して、チワワちゃんをお姉さんに返してあげた。

 たまらなく可愛かったよぅ。

 しばらくドッグカフェで夕也くんとお話をしていたのだけど、どうしても私の心の中に引っかかることがある。

 このまま帰ると後悔する気がするのだ。


「ゆ、夕也くん」

「ん?」

「あの、誕生日プレゼントねだっても良い?」

「ん? まだ用意してなかったから良いけど?」


 よ、よぅし。


「あのね?」



 ◆◇◆◇◆◇



 帰りの電車の中──


「はぅーっ。 夕也くんありがとう」

「ちゃんと毎日世話しろよぉ」

「うん」


 私の手には、先程私に寄ってきた2匹のハムスターちゃんが入った箱がある。

 この子達が誕生日プレゼントである。

 夕也くんは、飼育ケースや藁などの飼育セットを持ってくれている。

 店員さんに買い方なんかを訊いてくれたりもした。

 本当にありがとう夕也くん。


 夕也くんの家まで帰ってくると丁度良き時間になっていて、家の中からは誕生日パーティーの準備をする賑やかな声が聞こえてきた。

 リビングでケースなどの準備をしていると、皆がやって来て。


「んん? 希望ちゃん何それ?」

「あ、亜美ちゃん。 夕也くんに飼ってもらったプレゼント」

「それ飼育ケース?」


 今度は奈々ちゃんが訊いてきた。

 私は、横に置いてある小さな箱からハムスターちゃんを出してあげる。


「おおー! ハムちゃんー!」


 紗希ちゃんが物凄く食いついてきた。

 私とは可愛い物隙同盟を結んでいるだけあって、ハムスターちゃんにはすぐにメロメロになっていた。


「ええー、可愛いっ」

「もう希望ちゃんったら……ちゃんと世話できる?」

「出来るよぅ! 店員さんにも聞いたもん。 この子達オスとメスだから上手くすれば繁殖も出来るって」

「へぇ……でも可愛いもんねー」

「希望姉! 私にも触らせて~」

「いいよぅ」


 ハムスターちゃん達は、あっという間に人気者になったのだった。

 この後の誕生日パーティーの主役は私なんだけどなー。

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