あみ・だんふぁんす～幼馴染～

第205話 恋愛相談？

　☆紗希視点☆

　夜の自由行動時間になり、亜美ちゃんと希望ちゃんが部屋を出て行った。

　旅館内を散策するらしい。

　今井君は亜美ちゃん達の誘いを断ったらしい。　どうやら相当疲れているようだ。

　しかーし、私はそんな事はお構いない。

「ここねー、今井君の班の部屋」

　今井君の泊まっている部屋にやって来た。

　私はドアをノックする。

「へいへいーって、女子キター！　しかも神崎さん！？」

「あー、今井君いる？」

「……ちっ、今井か。　おーい今井ー、神崎さんが呼んでんぞー」

「はぁ？　紗希ちゃん？」

「やほー」

　小さく手を上げて今井君に挨拶する。

「どうしたんだ？」

「ちょっと話があってさー」

「んー、場所変えるか」

「はーい」

　私は今井君と２人で、人気の少ない場所へ移動する。

　これは亜美ちゃんに見つかったら大変だねー。

「で、話しってなんだ？　また柏原君となんかあったか？」

「んー、ちょっと倦怠期なのかなーって」

「何年目だっけ？」

「この夏で４年目ー」

「さすがにそんなのはもう通り過ぎたんじゃないのか？」

「と、おもーじゃん？」

　ここまであまり嫌だなーとか、飽きたなーみたいにならなかったのよねー。

　あ、もちろん私の方は今でもそうなんだけど。

「裕樹の方がねぇ」

「また去年みたいに勘違いなんてことは？」

「んー、それは否定できないけど」

「だろー？　また、向こうに戻ってから話してみたらどうだ？　今回は浮気とかじゃないし大丈夫だろ？」

「んー……うん。　そーする」

「なんならまた、俺達がついて行くぞ」

「え、本当？」

「おう」

「じゃあ、お願い！」

「亜美達にも話しておくよ」

「ありがとー！」

　今井君に話してよかったわー。

「で、彼はどんな感じなんだ？」

「あー、えとねー。　なんだか私といても鬱陶しそうにしてるっていうか……」

「ふうむ」

　私、嫌われちゃったんだろうか？

　でも、別に別れ話をされたりはしてないし、そこまでではないと思うんだよねぇ。

　私何かしたかしら……。

「やっぱ聞いてみないと何とも言えないな」

「そっかー……」

「まぁ、でも大丈夫だろ。　俺は彼を信用しても良いと思うぞ」

「うん、わかってる」

　それでも多少は不安もある。

「今日はありがと。　疲れてるのにごめんねー」

「いいよ。　でもなんでまた俺なんだ？」

「去年何だかんだで頼りになったからねー。　奈央とか遥ってそういうの疎そうだし」

「そうかい。　ま、その時になったら呼んでくれ」

「うん、助かるー」

　今井君に手を振って、私達は別れる。

　向こうに戻ったら早速お願いしてみよう。

　☆亜美視点☆

「希望ちゃん、お土産コーナー行こう」

「はーい」

　私達は部屋を出て、まず１階のお土産コーナーへ足を向ける。

　お母さんとお母さんに何かと思い、物色を開始。

「食べ物で良いかな？」

「んーそうだねぇ」

　私は、一通り見た後で、抹茶のバウムクーヘンを手に取る。

　なんか抹茶のイメージがある。

「これでいっかな？」

「うんうん」

　お父さんとお母さんも、適当でいいと言っていたのでそこまで拘る必要もない。

「よーし、次は庭出てみよ」

「うん」

　昨日は夕ちゃんと奈々ちゃんのキスシーン何かを見ちゃって、ちゃんと庭を散策出来てないんだよね。

　他に誰かいるかなー？

　と、私と希望ちゃんは庭に出てみた。

　すると──。

「あれ、奈々美ちゃんと遥ちゃんじゃない？」

「そうだねぇ」

　ビビビッと来たよ。　これは遥ちゃんが奈々ちゃんに恋愛相談をしているに違いないよ。

　ふふふ、これは私達も加わらねばなるまい。

「希望ちゃん行くよ」

「え？　うん」

　ということで、私は２人の会話におじゃますることにした。

「ねねー、何話してるのー？」

　ワザとらしく聞いてみる。

　すると、奈々ちゃんが振り返って、予想通りの返事をしてくれた。

「遥の恋愛相談に乗ってるのよ」

「あ、そうなんだ」

「おお、私達も相談に乗るよっ！」

　希望ちゃんが、グッとポーズを取って前のめりになる。

「あ、あはは……」

　遥ちゃんは困ったような表情で、私達を見た。

　やっぱりお邪魔だったのかなぁ？

　と、思いつつも、庭にある丸太の椅子に腰かけて話に混ざる姿勢を崩さない。

「はぁ……しょうがないかぁ」

　諦めたように溜め息をつく遥ちゃん。

　さてさて、お悩みの相手は件のボクシング観戦デートの彼かな？

「なんだか、例の人に彼女がいるかどうか知りたいらしいのよ」

「なるほどぉ。　直接聞けばいいんじゃ？」

「それって恥ずかしいし、私があの人に気があるみたいじゃん？」

「あるんだよね？」

　希望ちゃんの鋭い一言に「うぐ」と言葉を詰まらせる遥ちゃん。

　指をちょんちょんとさせながら俯いて。

「そ、それは私も良く分からなくてさぁ」

「いや、もう恋でしょ」

　今度は奈々ちゃんの鋭い一言に「むー」と、声を漏らす。

　誰がどう聞いても恋する乙女の悩みである。

　中々自分で認めないねぇ遥ちゃん。

「聞くのが嫌なら、どうすればいいのよまったく……」

「そう言われてもさー」

「そうなると尾行？」

「び、尾行？！」

　私の言葉に、遥ちゃんが驚きの声を上げる。

　希望ちゃんも「それはちょっとどうなの？」と、あまり乗り気ではない様子だ。

　まぁ、色々良くない事ではあるからね。

「ほ、他には何かないでしょうか？」

　何故かちょっと丁寧語になる遥ちゃん。

「尾行も直接聞くのもダメとなると、他の人に聞くしかないよね？　ジムで仲良い人とかいないのその人？」

「いるけど、そんなこと知ってるかなー？」

「まあ、ダメ元でも聞いてみたら？」

「うーむ……それしかないかー？」

「本人に聞けば確実なのに……」

　と、言っていても埒が明かないので、ここは間接的な方法で妥協せざるを得ない。

　本当に奥手だよ、遥ちゃん。　意外過ぎる。

「だ、だったらさ、誰かが代わりに聞いてよ？」

「ええっ？」

　遥ちゃんからそんな言葉が飛び出す。

　私達３人は、顔を見合わせる。

「それはさすがに他力本願過ぎるのでは？」

「やっぱそうだよね」

「ちょっと勇気出せばいいだけじゃない」

「そうだよ！」

「希望ちゃんだって、夕ちゃんに告白したりできたんだから、彼女いるか聞くぐらい遥ちゃんなら余裕だよ」

「よ、余裕ではないけど……でもそうだなぁ」

　少し腕を組んで考える遥ちゃん。

「が、頑張って聞いてみる」

「おおー！」

「ついでに告っちゃえば？」

「いやいやいやいや！　無理だから！　っていうか、別に私は恋人とかになりたいってわけじゃ」

「あるんだよね？」

　再びの希望ちゃんの鋭い一言に「うぐぐ」っと声を詰まらせる。

　まったく困ったものである。

「ま、まあいいわ。　とにかく本人に彼女の有無を聞く。　それが第一歩ね」

「だ、第一歩ってさぁ……」

「頑張れ遥ちゃん！」

「ふれーふれー遥ちゃん！」

「そ、そんなに背中を押さなくても……」

　いまいち乗り気になれない遥ちゃん。

　多分だけど、今までは女子ばかりに人気で、男子の目とかもあまり気にしてこなかった遥ちゃん。

　恋人が欲しいとは言っていたけど、あまり自分に女の魅力が無いと思い込んで自信を無くしてたんだろう。

　それはイメチェンした今でも多分変わってなくて、だから怖いのだと思う。　「もしかしたら自分は女の子として見られないんじゃないか」と、そう思ってしまっているのだ。

　頑張れ遥ちゃん。　遥ちゃんには遥ちゃんにしかない魅力があるんだよ。