第188話 恋人としてのデート

 ☆亜美視点☆


 5月23日の土曜日。

 夕ちゃんとお付き合いし出してから初めてのデートの日。

 今まで私がデートのプランを立てていたけど、今日は夕ちゃんが立ててくれている。

 楽しみだよ。


 朝は夕ちゃんの家で、いつも通りに朝食を食べた。

 希望ちゃんは「いいなー」と羨ましそうにしていたけど、去年は私もそんな風に2人を送り出していたなぁ。

 10時頃に家を出て、夕ちゃんとの久しぶりのデートがスタートする。

 夕ちゃんはどこに連れて行ってくれるんだろう?


 方角的には駅方面だから、電車を使うんだろうけど。

 となると、隣町か市内が濃厚だねぇ。


「んふふ」

「どうした変な笑い方して?」

「変って……」


 そんなに変だったかな?

 夕ちゃんと手を繋ぎながら、いつも歩いている道を歩く。

 恋人になったっていうだけで、今までよりもなんだか特別な気がしてくる。


「うーん! 幸せだー」

「手を繋いで歩いてるだけだぞ?」

「うん。 そんなことでも幸せなの」


 夕ちゃんの手を強く握る。

 絶対に離さないよ。


「ね、今日は隣町? 市内?」

「今日はちょっと変えようと思ってる」

「おお? じゃあ楽しみにしてるね」


 いつも違う場所かぁ。

 どこだろ?

 切符買う時に大体わかるかな。


「うーん。 もうちょっとくっついていい?」

「ん? いいぞ」

「やった」


 私は繋いでいた手を一旦離して、夕ちゃんの腕に自分の腕を絡める。

 こ、恋人っぽい。

 他の通行人が、たまにこちらを見てくるが気にならない。

 もう、完全に自分の世界に入り込んでしまっている。

 そのままで駅までやって来た私達は、券売機の前に立つ。


「切符はいくらのやつ?」

「ん? 380円」

「高っ?!」


 380円っていうと。

 私は路線図を見て確認する。 3か所ほど候補があるけど、デートできそうなのは下りの方のこっちかな?

 とりあえず切符買って、ホームへ向かう。

 予想通り下り方面へ向かう。

 

「ということは動物園とかかな?」

「どうでしょうなぁ」

「むぅ、他になんかあるかなぁ」


 頭の中で色々と候補を考えてみたが、動物園ぐらいしかなかったはず。

 それとも新しいデートスポットが出来たのかな?

 とにかく、行ってからのお楽しみってことで。


「亜美は進路希望出したか?」

「うん。 とりあえず東大って書いておいたけど」

「……とりあえずでそれ書けるのなんてお前ぐらいだろ」

「いやいや、奈央ちゃんも多分書けるよ?」

「あー、そうだな……本当に化け物の見本市だな」


 なんか最後に小声で言ってたけど良く聞こえなかったなぁ。

 ただ一句だけは絶対に聞き逃さないよ。


「人間だよ!」

「ははは、聞こえてたか」


 その言葉にだけは敏感なのである。

 やってきた電車に乗り込む私達。 進路希望調査、希望だから別に書いた通りにしなきゃいけないわけじゃないしね。

 今は目標を東大法学部に設定しておく。

 何かやりたいことでも見つかれば、それに目標をシフトすればいい。

 奈々ちゃんは、そのへん結構楽観的に考えているようだ。

 何だかもう、宏ちゃんと結婚するところまで考えているみたい。


「夕ちゃんも出したの?」

「俺か。 とりあえず一番通いやすい大学書いておいたけどな。 まだ良く分からねぇよ」

「やっぱりそうだよね」


 うーん、私も夕ちゃんと結婚する体で行こうかなぁ?

 バレーボールに関しては今でも実業団チームからいくつも話が来ているけど、とりあえず全部蹴っている。

 バレーボールは好きだし、興味が無いわけでは無いのだけど、大人になってまで続けようとはあまり思っていない。


「夕ちゃんのお嫁さんって書いて出せばよかったかな」

「怒られるだけだぞ」

「あはは、やっぱりそうだよね」


 

 ◆◇◆◇◆◇



 電車は目的地と思われる駅に到着した。

 予想通りなんだけど、動物園じゃないのかなぁ?


「ほらいくぞ」

「あ、うん」


 改札を出て、夕ちゃんの隣でまた腕を絡めて歩く。

 動物園は逆方向だから、この時点で動物園の可能性は無くなった。

 わからないし、黙ってついて行こう。


「……」


 歩いて行くと、何やら大きな建物の前で夕ちゃんが止まった。


「んん? スパランド? 温泉?」

「まぁ、そんなとこだ」

「なるほど……」

「いわゆるスパガーデンみたいなとこだ」


 そういえば、去年奈々ちゃんと宏ちゃんも行ったって言ってたね。

 温水プール的なのかな?


「わたし、水着とか持って来てないけど?」

「借りられるってよ」

「そうなの? じゃあ心配ないね」


 ということで、早速中へ入ってお金を払う。

 水着レンタルで適当な水着を選び、更衣室で着替える。

 私が選んだのは、ピンクと白の縞模様の水着。

 夕ちゃんを悩殺しちゃうよぉ。


 更衣室を出て、夕ちゃんと合流。

 早速遊び倒すよ。


「まずはどこ行く?」

「スライダーでしょ!」


 入ってからずっと気になっていた大きなウォータースライダーを指差す私。

 夕ちゃんも気になっていたらしく「OK!」と頷いた。

 早歩きでスライダーの列に並び順番待ちをする。

 結構高い所から滑るんだね。


「亜美、ポロリするなよぉ?」

「希望ちゃんじゃあるまいし」

「あれは水着が悪かったな」


 あの時に希望ちゃんが着ていたのは、超際どいマイクロビキニだった。

 希望ちゃんにしては勇気出してたよねぇあれは……。


「きゃーっ!!」

「うわわ、凄い悲鳴上がってるね」

「思ったよりスピード出てるのかもな」

「みたいだね」

「次の組どうぞ―」


 呼ばれたので、夕ちゃんと手を繋いで前に出る。


「どちらが前ですかぁ?」

「夕ちゃん、私が前で良い?」

「おう、いいぞ」


 私が前に座って、その後ろに夕ちゃんが座る。


「夕ちゃん、おっぱい揉んじゃダメだよ?」

「良いだろ別に」

「うわわ」

「ふふふ、ではいってらしゃーい」


 夕ちゃんは背中を押されたようで、急にスタートする。

 グネグネとしたチューブの中を、凄い速度で滑っている。


「うわわわああ」

「うおおおお」


 ザバーンッ!!


 急に明るくなったと思ったら、水の中に放り込まれた。


「ぶくぶくぶく……ぷはぁっ」


 水面に顔を出して、空気を吸い込む。

 ちょっと水飲んじゃったよ。


「夕ちゃん大丈夫?」

「おう。 お前は? ポロリしてないか?」

「してないよ」


 ちゃんと水中で確認してから浮上したからセーフだもん。

 夕ちゃんは「つまらん」と言った。

 そんなぁ……。


 私達は水から上がって、ジャグジーに入る。


「うわわわわわ、気持ちいいぃ」

「年寄かお前は」

「同い年だよぉぉぉぉ」

「ははは。 もっと気持ちいことしてやろうかぁ?」


 夕ちゃんは、超手を私の方に突きだして、何かを揉む仕草を見せる。

 もう。


「変態さん。 そういうことは、夜にね」

「夜は良いのかよ」

「良いよぉ? 恋人だもんね」

「今晩覚悟しとけよぉ。 寝かせないからなぁ」

「あはは、楽しみにしてるよ夕ちゃん」


 デートはまだまだ始まったばかり。

 今日はとても楽しい1日になりそうだよ。

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