第178話 皆一緒のGW

 ☆亜美視点☆


 私達は今、西條家専用のバスに乗り込み、奈央ちゃんが所有する海辺の別荘へと移動中。

 今回の旅行は、過去最高人数となる11人。

 賑やかである。

 旅行のメインイベントは潮干狩り、翌日には観光も予定している。


「すー……すー……」

「奈央、よく寝てるわね……」


 紗希ちゃんの席から、通路を挟んだ隣の席で寝息を立てているのは、昨日アメリカから帰ってきたばかりの奈央ちゃん。

 夕方ぐらいに戻ってきたらしいので、まだ疲れが残っているのだろう。

 私の我儘を聞いて、今回の旅行を企画してくれた事に感謝だ。

 さてさて、今回初参加になる麻美ちゃんと渚ちゃんだけど……。

 2人は仲良く隣に座って、お菓子を頬張っている。


「2人とも、どう?」

「あ、はい。 楽しみです。 潮干狩りは小学生の頃に行ったきりなんで」


 と、渚ちゃん。

 そういえば、私もそれぐらいの頃に行ったきりかもしれない。

 夕ちゃんの家族と合同で行ったんだっけ。


「西條先輩、凄いとは聞いてたけど、専用のバスとか別荘とか持ってるのは凄すぎる!」


 隣の麻美ちゃんは、大はしゃぎしている。

 たしかに、凄過ぎるよね。


「柏原君はお久しぶりだねぇ。 紗希ちゃんとは仲良くしてる?」

「あー、うん」


 聞くまでもなさそうである。

 隣で紗希ちゃんがイチャイチャしているからだ。

 柏原君と最後に遊んだのは、1月のスキー旅行以来かな?

 あの時は、皆に心配かけちゃったなぁ。

 その反対側、眠る奈央ちゃんの隣には遥ちゃん。

 連休前にイメチェンして……させられてセミロングヘアになっている。

 今日は、後で纏めて括っている。


「遥ちゃん、髪型似合うね」

「ありがとう……でも落ち着かないなぁ」

「あはは……そろそろ慣れなよ」


 イメチェンして美人さんになったのに、あまり本人は気に入らないのかな?

 これなら、男子からも人気出ると思うんだけど。

 さて、次は奈々ちゃんと宏ちゃんの所へ移動。


「やほー」

「やほーってあんた、大人しく座ってらんないの?」

「暇なんだもの」


 バスに長時間座ってるのは、本当に退屈なんだよ。

 貸し切りで他のお客さんもいないし、やりたい放題だ。


「あれ、宏ちゃんも寝てる?」

「乗ってすぐに寝たわよ」

「そうなんだ。 イチャイチャ出来ないねぇ?」

「別にバスの中でイチャイチャしなくても良いでしょ。 最前列のバカップルじゃあるまいし」


 まあ、紗希ちゃんはやりすぎ感あるけども。

 奈々ちゃんのところは淡白だねぇ。

 上手くいってるんだろうけど。


「あんたも、暇ならちょっと寝たら?」

「んー、そだねぇ」


 そうしようかな?

 と、その前に夕ちゃんと希望ちゃんともお話ししよう。

 私は自分の席へ戻り、隣の希望ちゃんとお話しを開始する。


「あ、おかえり亜美ちゃん」

「ただいまだよー」

「希望ちゃんは潮干狩りした事ある?」

「あるよ。 小さい頃だけどね」

「そかそか。 楽しみだね」

「うんうん」

「夕ちゃんは、小学生の頃に一緒に行ったよね?」

「ん、あぁ行ったな。 お前、潮干狩りじゃなくて貝殻集めてたよな」

「あぅ……そだっけ?」

「あはは、亜美ちゃん可愛い」


 あまり昔の事は掘り返さない方が良いね。

 話を切り上げて私は、少し眠る事を伝えて目を閉じた。



 ◆◇◆◇◆◇



 気持ちよく寝ていると、不意に希望ちゃんから起こされた。

 寝ぼけ眼を擦りながら「何ぃ〜」と返事をする。


「海が見えてきたよ」

「んー……」


 目を細めて、窓の外を見る。

 山しか見えないんだけど?


「亜美ちゃん、あっちの窓だよ」


 どうやら反対側らしい。

 そちらに目をやると、眼下に海が見える。

 目的地が近いのだろうか?

 今は山道を走行中のようだね。

 バスの座席で寝ていた分、体が凝り固まっているようだ。


「ん〜っ!」


 腕を上に伸ばして、上体を軽く反らしながら伸ばす。

 気持ち良いよー。


「ふぅ……どれくらい寝てた?」

「1時間半ぐらいかな?」


 まあまあ寝ていたらしい。

 周りを見ると、奈央ちゃんも宏ちゃんも目を覚ましていた。


「奈央ちゃん、あとどれくらいで着くの?」

「あと30分くらいですわ」

「そかそか」

「亜美ちゃんも起きたみたいだし、着いてからの予定を伝えておきますわね」


 奈央ちゃんが席を立ち、マイクを握る。

 まるでバスガイドさんみたいだ。


「あーてすてす。 えー、本日は私、西條奈央主催の1泊2日潮干狩り旅行に参加いただきまことにありがとうございます」


 何か堅苦しい挨拶から入ったよ?


「当バスは現在、西條家別荘へ向けて走行中です。 目的地に着きましたら、荷物を置きまして昼食となります」


 か、完全にバスガイドになりきっちゃってない?

 しかも何か様になってるし。


「昼食後は、砂浜にて本日のメインイベントである潮干狩りを行います。 尚、急な旅行の企画でしたので、砂浜は貸し切れませんでした。 なので、他のお客様いらっしゃいますので、ご迷惑にならないようお願い申し上げます」


 貸し切るつもりだったんだ……。

 皆も同じ事を思ったのか、口をあんぐりと開けている。


「潮干狩りの後は、自由行動とします。 夕食は、潮干狩りで取った貝を使って皆で作りましょう。 明日の予定は、夕食時にでも伝えますわ」


 奈央ちゃんは、マイクを置いて席に座る。

 麻美ちゃんが、手を上げて質問を投げかける。


「あの! お風呂はどうなってるんですか?」

「別荘にありますわよ。 ただ、11人同時には入れないかと」

「な、なんで混浴前提なの?!」


 希望ちゃんが抗議の声を上げる。

 相変わらずだなぁ。


「だから、全員は無理ですってば。 女子4人ずつ2グループ、男子3人1グループに分けますから安心して下さい」

「な、なら良いけど……」


 希望ちゃんはそれで納得したらしい。

 麻美ちゃんは「別に混浴でも良かったのに」と大胆な発言をし、隣の渚ちゃんは「私はちょっと無理やなぁ」と呟くのだった。


 山道を抜けて20分程走り、ようやく奈央ちゃんの別荘に到着。

 もう何軒目かわからない別荘にお邪魔する。


「ひ、ひぇ……実家より広い……」


 渚ちゃんは驚愕していた。

 初めてだとそうなるよねぇ。 わかるわかる。


「部屋は2人1部屋ね。 私は自分の部屋を使うから後は自由どうぞ」


 私達だけになったから、素顔モードになっている。

 2人1部屋かぁ。 無難に希望ちゃんとかな。


「亜美ちゃん、一緒の部屋にしよー」

「うん、おっけー」


 希望ちゃんの方から誘ってきた。

 他もパートナーを決めている。

 部屋の鍵を受け取り、荷物を置きに向かうよ。


「105……ここだね」

「あら、隣ね」

「奈々美ちゃんは遥ちゃんと?」

「紗希が彼氏と一緒だからね」


 なるほど。


「じゃ、またお昼ご飯の時にね」

「うん」


 手を振りお互いの部屋に入る。


「うわわ、やっぱり広いよ」

「私と亜美ちゃんの部屋合わせたのより広いよね」


 部屋の中は、何故かダブルベッドがツインで置いてあり、大きな壁掛け液晶テレビがその正面にある。

 天井には高価そうなランプが並んでいて、窓からは海が一望出来る。

 大きな姿見やクローゼットもあり、快適空間である。


「一生この部屋に住みたいよ」

「あはは、そうだよね」


 希望ちゃんも同意してくれた。

 さて、お昼は放送で呼び出しがあるそうなので、それまでは退屈だ。

 他の部屋に遊びに行くのもアリだけど、今はゆっくり寛ぐ事にした。

 窓の外を眺めると、砂浜では現在進行形で潮干狩りを楽しむ人達の姿が見える。

 お昼からは、私達もあの中に入るんだねぇ。

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