第163話 最高の誕生日
☆亜美視点☆
今、私の17歳の誕生日を祝うために、奈央ちゃんが予約してくれたレストランでパーティー中です。
最高級の素材を使った料理達に、私達のほっぺは落ちまくり。
こんなお肉の味を知ってしまったら、スーパーの安物なんか食べられなくなっちゃうよ。
「んむんむ。 うーん美味しい」
「マジでな」
「口に合って良かったわ」
見る見るうちにお皿の上の料理が消えていく。
奈央ちゃんは、優雅にゆっくりと食べている。 わ、私達お行儀悪いのかな?
「ん? あーマナーとか気にしなくていいわよ? その為にVIPにしたんだし」
そこまで、私達の事を考えてくれていたんだね。
奈央ちゃんありがとうだよ。
私達は、出された料理をあっという間に間食して、一息ついている。
「美味しかったー。 ごちそうさまでした」
「ふふ、少ししたらデザートのバースデーケーキを持ってきてもらいましょ」
そういえば、ケーキもあるって言ってったっけ。
食べられるかな。
まあ別腹だし大丈夫かな。
「ねぇ、ケーキ来るまでの間にプレゼントお渡しタイムしよー」
紗希ちゃんが声を上げる。
毎年なんだか悪いなぁ……。
一応皆で割り勘って形取ってくれてるみたいだけど。
「そうねー。 ちょっと時間あるし、そうしましょうか」
「持ってきてるんだ……」
学校から直行って決まってたから、家に置いてあって後日渡されるものだと思ってたよ。
「よし、じゃあまず私と宏太、それから麻美からも」
「あ、麻美ちゃんまで!」
奈々ちゃんは鞄から、綺麗に包装された箱を取り出して、私に手渡してきた。
「ありがとう。 なんだろこれ?」
「マグカップよ」
マグカップなのね。 嬉しい。
ここで開けると割っちゃったら嫌だし──。
「帰ってから開けるね」
「ええ。 多分気に入ると思うわよ。 宏太と麻美が選んだんだけどね」
「ほうほう」
宏ちゃんはどうか知らないけど、麻美ちゃんが選んだのなら大丈夫そうだね。
楽しみだなー。
「じゃあ、次は私と夕也くんからね」
この間、2人で買いに行ったやつだね。
さて、何をくれるんだろうか?
「はいこれ」
希望ちゃんが出してきたのは、見覚えのあるお店の名前のロゴが入った紙袋。
一体何だろう?
「見てもいい?」
「うん」
私は、いそいそと紙袋の中身を確認する。
中に入っていたのはバッグ。
それも──。
「猫さんバッグ!」
私が、この間欲しいと思ったけど諦めたやつ。
嬉しい。
「これ欲しかったの。 ありがとう、2人とも」
これも大事にしよう。
「じゃあ次は私達ね」
今度は奈央ちゃん達である。
紗希ちゃん、遥ちゃんも合同である。
紗希ちゃんが取り出したのは、小さな袋。
何が入ってるんだろ?
「開けてもいいよー」
「うん」
とても小さな袋なので、丁寧に開ける。
これは……。
「イヤリングかな?」
「そーよー」
「ちょっと待って、この石もしかして」
「4月の誕生石だよ」
遥ちゃんがそういう……。
つまりこれは本物の。
「ダ、ダダ、ダイヤー?!」
「まあ、小さいやつだから安いわよ」
「そりゃあんたにすりゃそうでしょうよ……」
こんな凄い物、貰っちゃっていいのかな?
どうしよどうしよー。
「着けてみてよ」
「う、うん」
促されて、イヤリングを耳に着けてみる。
イヤリング自体初めて着ける。
「ど、どう?」
「おおー」
「綺麗じゃない。 控えめな感じでいいわね」
私は、鞄から手鏡を出して自分でも確認してみる。
奈々ちゃんの言う通り、あまり主張しない感じのちょっとしたアクセントという感じで良い。
「夕ちゃん。、どうかな?」
「おう、可愛い」
「夕也、語彙力鍛えろよお前……」
「うるさいなー」
夕ちゃんと宏ちゃんが、口論しているけどそれは置いておいて。
「ありがと3人とも。 大事にするよ」
「良いって事よー」
「そーそー」
「大体8割奈央が払ってくれたし」
遥ちゃんがそういうと「そういうのは黙っておきなさいよ」と、奈央ちゃんにダメ出しされていた。
本当に皆には感謝だよ。
「えへへ。 皆ありがとう。 このお返しは皆の誕生日にするからね」
皆は笑いながら「期待してるよー」と、返してくれた。
まずは夕ちゃんの誕生日だね。
プレゼントするものは決まっている。
今度買いにいかなきゃ。
「さて、そろそろケーキ持ってきてもらう?」
プレゼントお渡しタイムが終了したところで、デザートのケーキタイムとなるようだ。
奈央ちゃんがベルを鳴らすと、大きなケーキを乗せたカートがやってきた。
「うわわ、凄い!」
大きさもさることながら、飾りつけも凄い。
私の誕生日を祝うメッセージが描かれたチョコレート。
私をモデルにしたと思われる、女の子の形をした砂糖菓子。
その周りには、皆を模した砂糖菓子が私を囲むように立っている。
「こりゃ凄い」
「ふふ、この砂糖菓子は皆の写真見せて作らせたのよ」
「ぐすっ」
急に涙がこみ上げてくる。
嬉しい……嬉しいよぉ。
私のためにここまでしてくれて、本当に嬉しい。
「ちょ、ちょっと亜美ちゃん? 泣かないでよ」
「嬉しいんだもん……」
奈央ちゃんが、ロウソクに火を灯して明かりを消すようにスタッフさんに指示を出すと、すぐに部屋が暗くなった。
「さ、亜美ちゃん。 消して」
「うん」
私は、一息で17本のろうそくの火を消す。
「おめでとう!!」
皆から拍手とお祝いの言葉を贈られる。
「今までの誕生日で一番嬉しいかも」
「ふふ、私に任せて正解だったでしょー」
「そうね。 私達じゃこれだけの事は出来ないものね」
奈々ちゃんがそんなことを言うけど、奈央ちゃんが首を振って訂正する。
「お金をかければいいってもんじゃないわよ。 ようは、気持ちなんだから。 今日は、私に出来ることを最大限にやっただけで、あんた達の誰が主催しても、亜美ちゃんにとっては最高の日になってたわよ。 ね?」
「うん!」
その通りだ。
誰がやってくれても、気持ちさえこもっていればどんな質素なパーティーだって最高のものになるよ。
「さて、んじゃ切ってもらうわね」
スタッフさんが、ケーキを人数分に切り分けて、それぞれのケーキにそれぞれを模した砂糖菓子を乗せてくれる。
食べるのが勿体ないよ。
「じゃあ、いただきます」
勿体ないけど、せっかく作ってくれたのだ。
食べないと失礼だよね。
私もケーキを口に運ぶ。
「んむ……うわわ、美味しい! 何これ!」
生クリームからして市販のケーキと違う。
この芳醇な甘さとフワフワ感は何?
「最っ高級の素材を使ってるのよ」
「奈央の友達で良かったー」
「だーかーらー」
「あはははは」
でも、本当に皆の友達で良かったって思うよ。
ゆっくりと味わいながらケーキを食べる。
スポンジケーキもフワフワで、口の中でとろけるようだ。
フルーツを細かく切ったものも入っているのか、時々こりこりとした食感もある。
「女子の胃袋ってどうなってんだ?」
「別腹ってのがあるらしいぞ」
男子2人は、首を傾げながらもケーキをゆっくりと頬張っていた。
ケーキを食べ終えて、皆で談笑タイムを挟む。
「そういえば、A組はどんな感じ?」
「ん? そうねぇ、大して変わんないわよ?」
「そうなんだ。 Bも変わらないかな。 紗希ちゃんがムードメーカーだよね」
「いやいやー、騒がしくてごめんねー」
「この子は1年の頃からそうよー」
奈央ちゃんが、紗希ちゃんの頭をポンポンと弱く叩きながら言う。
紗希ちゃんがいるとクラスも明るいよ。
「体育祭、燃えるわねー。 今年は亜美と対決できるのね」
「そういえばそうだわ。 打倒亜美ちゃん!」
奈々ちゃんと奈央ちゃんが、ゴゴゴゴォと音を立てながら燃えている。
この2人の、私に対するライバル心は本当に凄い。
私も頑張んなきゃね。
「さて、そろそろ遅くなるお開きとしましょうか。 帰りは車用意してもらってるから乗って帰ってね」
車っていつぞやのリムジンだろうか?
私達はお腹も一杯になり、満足してレストランを出る。
店の外には予想通りリムジンが停車しており、それに乗り込み順番に家に送ってもらう。
最初に私達の家に寄ってくれた。
「今日は皆ありがとう。 凄く楽しかったよ」
「ふふ、そう言ってもらえて良かったですわ。 それではおやすみなさい」
「おやすみー」
私と希望ちゃん、夕ちゃんは手を振ってリムジンを見送るのだった。
今日は本当に楽しい誕生日だった。
皆の誕生日の時は、ちゃんとお返ししないとね。
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