第149話 全国の猛者集結

 ☆亜美視点☆

 

 現在、食堂に集まり夕食を食べている。

 他校の子達との交流も兼ねて、弥生ちゃんや、東京の宮下さんと同席している。

 希望ちゃんが意外と頑張って会話に参加していて、ちょっと驚いた。

 成長したねぇ。


「しかし、こうやって見ると凄い面子よね」

「そやなぁ。 月学の皆は言わずもがな、宮下さんも1年の中では抜けてる方やしね」

「あっちには大阪銀光の1、2年生の黛姉妹もいるし」

「あー、あの2人の息ぴったりなノーサインプレーには苦労したわね」


 確か、インターハイで対戦したね。

 奈々ちゃんが言ってたように、姉妹間のノーサインから繰り出される息の合ったプレーに苦戦したから覚えてるよ。


「1年生は8人で2年生が12人でしたわね?」

「そやね。 まあ、ポジション争いに1年も2年もあらへんけどな。 実力主義やよ」

「ま、そうよね」


 皆凄いやる気になってるねぇ。

 私もやるからにはメンバーに選ばれて世界戦デビューしたいしたいね。

 

 食事が終わった後は、ミーティング。

 そのまま食堂で始める。

 

「えー、今回は全日本U-18強化合宿の招集に応じてくれて感謝する。 今日から1週間、ここに集まったメンバーはライバルであり仲間だ」


 監督は、車の中でも話していた練習スケジュールやなどを細かく説明していく。

 ポジション別に練習メニューが微妙に変わるようである。

 さらにポジションだけど、攻撃的オポジットは今回入れない予定との事。

 月学の奈々ちゃんのポジションだ。

 ということは、普段オポジットの選手もアウトサイドヒッターになるのかな。

 後、多分私もアウトサイドヒッターとして呼ばれてるんだよね。


「レギュラーメンバーは紅白戦など動きを見て決める。1年生、2年生とか関係無い」


 皆の顔が引き締まるのがわかった。 ここに来ている皆は真剣なんだ。

 手を抜くことは許されないね。


「最終日には大学生と試合をやってもらう。 大学生に勝てないようでは世界には勝てないぞぉ」


 中々厳しい事言ってくれるね。


「今回のメンバーは、はっきり言って過去最強だと思っている。 世界の度肝抜いてやるぞ」


 どれだけ私達に期待しているのかがわかる言葉だよ。

 私達は、静かに頷くのだった。


「まとめ役を1人決めたいのだが、立華女子2年の眞鍋! やってもらえないか?」

「わかりました」


 眞鍋さんが、今のところのリーダーという形に落ち着いた。

 彼女は京都立華の正セッターで、奈央ちゃんのポジション争いでライバルになる人だ。


「朝食は朝6時半からだ。  その後の練習は7時半からとする。 以上解散!」


 監督の言葉とともに、その日は解散となった。

 明日も朝早いようなので、早めに休んだ方が良いかもしれない。

 私と希望ちゃんは部屋に戻り、就寝の準備をする。


「なんだか、皆の気迫凄かったね」

「うん。 負けられないよね」


 私のポジションは特に激戦区だ。

 奈々ちゃん、弥生ちゃん、宮下さんに黛の姉さんの方。

 2年生も岡山の川崎先輩や長野の南先輩等、凄い人達が集まっている。


「リベロは希望ちゃんと、京都の上野さんの2人だね」

「うん」

「そういえば、今日は頑張って皆とコミュニケーション取ってたね? びっくりだったよ」

「け、結構頑張ったでしょ? おかげで疲れちゃったよ……」

「あはは、お姉さんは嬉しいよ」


 だんだん、私の手を離れていく気がするのはちょっと寂しくはあるけど。


「さて、もう寝ちゃおうか? 明日から大変だよきっと」

「うん、おやすみなさい」


 明日からの練習に備えて、私達は早めに眠りにつくのだった。

 本当は、夕ちゃんにちょっと電話でもとか思ってたんだけど、余裕無さそうだよ。

 


 ◆◇◆◇◆◇



 翌朝、本格的な練習が始まった。

 朝は軽く体操をした後にランニング。

 基本的には皆同じコートで練習する。


 セッターの人が順番にトスを上げて、アタッカーがそれをスパイクなりなんなりを打つ。

 リベロや、手の空いているアウトサイドヒッターがレシーブするという流れ。

 基本的な練習であるが、監督はおそらく各選手の動きを見ているのだろう。

 すでにポジション争いは始まっているのだ。


「っぁ!」

「はいっ!」


 テンポ良く回転していく。

 皆、動きが良いね。

 普段からしっかり練習してきている証拠だよ。

 今年のインターハイは、厳しい戦いになりそう。


 昼からは実戦に近い形での、攻撃の練習。

 サインの確認、実際にブロックを入れてのスパイクの打ち分け等。

 セッターを何回毎に替えて、色んな人のトスやジャンプに合わせる練習もする。


 さすかに代表合宿に呼ばれたメンバーだけあり、

 すぐに対応してみせる。

 リベロの希望ちゃん達は、せっせとボールをレシーブ。

 最近の希望ちゃんは、反応速度が前より早くなった気がする。

 何が見えているのかわからないけど、相手が腕を振ると同時に動いている事がある。


「次、清水」

「はいっ」


 私はサインを出して助走する。

 奈央ちゃんが、私に合わせてトスを上げる。

 サイン通り、完璧なトスが上がる。


「っ!」


 クイックの速い攻撃に、希望ちゃんもたじたじ。

 お昼の練習後は、少し休憩を挟み15時から17時まで再度練習。

 17時以降は自由に練習するなり休息を取るなりといった感じだ。


 ◆◇◆◇◆◇


 初日の練習を終えて、近くの大浴場で汗を流す。


「皆、レベル高いね」

「そやなぁ」

「特に月学4人は何なの?」


 宮下さんが、私達を見てそう言った。


「な、何なのと言われても……」

「清水さんはまあ、仕方ないとして、西條さんも藍沢さんも雪村さんも、かなりやばいわよ?」

「そうかしら?」

「そんな事ないと思うけど……」

「私は当然ですわ」


 三者三様の反応を示す。

 ところで、私は仕方ないって何?


「あれやろ、いつもこんなんが近くにおるから、自分が大した事無い様に感じるんやろ」


 と、弥生ちゃんが私を指差す。


「こんなんって……皆して人を人外扱いするぅ」

「亜美、諦めなさいって。 全国共通でそういう認識されてるのよ、あんたは」

「こっちのもね」

「ウチは、亜美ちゃんよりマシやで」


 弥生ちゃんも大概化け物なのになぁ。

 何だか私ばかり言われるのは、少し不服だよ。


「それにしてもー……」


 宮下さんの目線が、少し下に下がる。


「清水さんと藍沢さん、良い物持ってるわよねぇ……」


 宮下さんが言っているのは十中八九、胸の事だろう。


「そやねん。 ようそれで跳んだり出来るわ」

「出来るでしょ……」


 奈々ちゃんが、呆れたように言う。

 別に困った事も無いね。


「彼氏も喜ぶでしょ?」

「さあ、喜んでるのかしら?」

「おや、藍沢さんは彼氏いるんだぁ?」

「しまった……」


 簡単な誘導に引っかかって奈々ちゃんはその後、宮下さんから根掘り葉掘り聞かれるのだった。

 その後は、希望ちゃんが夕ちゃんと別れた話になり、弥生ちゃんから「亜美ちゃん、チャンスやん」と言われるのだった。

 ちなみに、宮下さんは彼氏募集中らしい。

 女子校だから大変みたいだよ。

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