巨樹ダンジョン 脱出

彩乃との合流はつつがなく行われた。

飛び降りた時点でリスポーンした俺を彩乃が出迎えたからだ。集合時間に来なくて心配かけたことをめちゃくちゃ怒られた。

連絡の取りようがなかったから仕方なかったのだけれど、心配かけたのは事実なので甘んじて怒りには身を委ねることした。


正座で怒られたから足が痺れて動けなくなったのはご愛嬌だ。


「さて、そろそろ帰ろっか」

「帰れるの? 帰ってもいいの?」

「ここでやることはやったからな。二葉姉には会えた」

「それ、ほんとかなぁ」


信用してないわけではなさそうだが、説明が下手すぎたのだろう。不安げだ。

まだ、やることがあるかもしれないと思っているのか、首を傾げている。


「ほんとだよ。そして、助け出すにも、連れて行くにも、封印をどうこうするにも、俺たちではどうしようもないってことは分かった」

「手札の問題だね〜手札を増やすか。使い方を変えないとだね」

「おう。だから、カードを引くために帰る。最悪、ここは放置かな」


封印内容は別としてもその脅威度は測れない。全滅しないと出られないレベルの化け物を解放するリスクを負いながら二葉姉を連れ出すのは厳しい気がするのだ。

ただ、気になるのは……


出てもこっちの陣営は負けるってとこだな。


普通ならば逆転の札であるはずなのに、出したら敗北って意味が分からない。詳しく聞いたところで教えてくれるのかも不明。

面倒事であることだけは確かなので棚上げでもいいだろう。今は考えても仕方ないしな。


「いいの?」


彩乃が、問いかけてくる。

その「いいの?」は、ここを放置してもいいのかと言うことなのだろう。だが、その答えを出すのは俺ではない。答えを出すに相応しい奴は他にいる。


「今は、いいんだよ」


笑顔を返せば、不満げな顔をされる。俺にどうしろって言うのだろうか?


「じゃあ、そろそろ帰ろっか〜」

「帰る方法は分かるのか?」

「もっちろんだよ。ちゃーんと聞いたからね。次からは使えないだろうけど」

「と言うことは、次に入る時は覚悟が必要ってこと?」

「そゆこと〜」


七機は、ボーッとして会話に参加しない五機の手を取る。「タイミングを合わせてよね?」と言葉を投げた。こくりと頷いたのを合図に手を離し、対艦刀を作り出すと宙に飛んで乗っている枝を切断した。


「いっけ」


くっつくよりも先に五機が巨大な枝を蹴り飛ばす。立っている場所が無くなり、無重力体験をしていると彩乃が抱きしめてくれるのですぐに何とかなった。彩乃の柔らかさと匂いを感じながら、巨樹から離れていく。


さてさて。一樹はどうするだろうか……

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