巨樹探索
広い。めちゃくちゃ広い。
数時間かけて探索した結果、辿り着いた答えである。
彩乃の力を使って空を駆けたり、七機に手伝って貰いながら紐なしバンジーで下へと向かい、途中でブレーキをかけてもらいながらの探索はハラハラすることばかりで何度も肝を冷やした。
結果としては、何も成果を上げられずに元の場所へと帰ってきた。トイレや食事などの生理現象がまるで起こらないことが救いだった。
互いにお花摘みに行きますで青空放出なんてしたくないからな。
「何も見つかりませんね」
「そうだな」
色々と見て回って成果ゼロは精神に来る。前みたいに敵がすぐに来るならば危険はあっても楽だった。それだけに集中すればいいのだから。
だけど、今は違う。多くのものに気を配りながら地道に探索を進めなければならない。僅かな進捗に喜び、落胆する時間ばかりで一向に前に進まないのはモヤモヤする。
「なぁ一度帰るって出来るのか?」
「ん〜多分出来ると思うよ。でも、またここに来て探索する気力。ある?」
「無いなぁ」
一度出たらどうでもよくなりそうだ。
一樹のためだ。双葉さんのためだ。と、自分に言い聞かせたとしても、こんな広大なステージを攻略したいだなんて思えない。これがゲームであり、アイテムなどが隠されていたり、モンスターが現れて経験値になるならば話は変わってくるけれど、そんなことも無く。ただ単にグルグル上から下へ回っているだけ。
疲れるだけで気持ちがゴリゴリと削られる。
「彩乃はどうしたい?」
「私は、もう少し見て回ります」
「そっか。なら、諦めるのはナシだな」
五機を連れて空へと向かう彩乃を見送り、七機と下へ向かう。
最初は一緒に行動していたが、安全だと分かると別れての探索になっていった。二組居るのだ。わざわざ同じ所を探す必要はなく。広い巨樹を隅から隅まで探すには時間がいくらあっても足りない。
数時間かけての探索だって、ゲームで言えば進捗度数パーセントと言ったところだろう。細かい部分はかなり見落としている自信がある。
「そんな自信持たないでよ」
「仕方ないだろ」
自慢ではないけど観察眼をまるで養ってこなかった。注意深く見たところで変なものがあるかなんてまるで分からないのだ。
「もう。それで、どうするのさ?」
「反対側も下も上も軽くは見たろ。見てないのは、届かない葉っぱと根っこ。後は、巨樹の内部か」
上に行けば行くほどに伸びていくような感覚で、まるで届かない。枝伝いに登れそうなところを登りもしたが、宇宙に行けるわけもなく生い茂る葉っぱを睨むことしか出来なかった。
逆に下は、死ななくても強制的に元の位置に戻されるのでそもそも行けない。ある一定地点に到達したは回収されるようだ。
内部に入るには七機に斬って貰わなければならないが、回復する前に捜索しないといけないのでかなり大変になる。輪切りにしてもおかしなところがなかった時点で望み薄なのであるが、他に探すところがないのだ。
「内部に繋がる通路とか分かるか?」
「ん〜あるかも。って感じかな。今までも巨樹の封印はあったけどわざわざ中に入る物好きって居なかったし」
「面倒が勝るのかな」
「それだけじゃないんだけどね」
意味ありげに笑みを浮かべる。
何か言ってないことがありそうな視線が気になる。もしかしたら、今までの人はその言っていないことを聞いた結果行かないことを選択したのかもしれない。
「何が、ある?」
「にゃはは。そんな訝しむ目で見ないでよ。別に隠してることはないよ〜」
ぴょんぴょんと枝を飛び降り、鎖を使っての空中機動で移動する。枝自体が大きく間隔が広いので、空中機動でもぶつかることがない。前みたく肝を冷やすような動きではないので安心出来る。
「なら?」
「言ったでしょ。封印されているって。それを解放したらヤバいって話しただけだよ」
「……そうか」
危険なコッペリアンが封印されている。だから行かない。その考えも確かに真理である。だけど、どうしても戦力に乏しければ喉から手が出るのではなかろうか?
「制御出来ないってことか?」
「そんなところだね。それよりも、あそこ」
指差すのは、枝の密集地。その先には、ぽっかりと穴のようなものが開いている。
「なにかありそうだよ」
「だな」
回収地点のすぐ近く。ギリギリの位置だからこそさっきは見逃した場所。ゆっくりと高度を合わせて着地。
状況が前に進む瞬間であった。
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