第四十六歩【ルイとニーズ】
俺は背伸びをしながら資料館の入り口から外へ出る。
本に夢中になってしまったコタロウはまだ中にいるそうだが、しっかりしてるし大丈夫だろう。
まぁ、俺もランズさんの件以外に思いがけない収穫があったんだけどね。
やっぱり本は読んどけって事なんだろうな。
さてと、これからどうしたものか……
「おい、異界人」
俺の耳にその声が届いた時には俺の眼前には昨日とは違い真剣が突き付けられていた。
「出てくるのを待ってたぞ。さぁ、俺と勝負してもらおうか!」
「二、ニーズ君。俺さ、情けないことにメチャクチャ弱いんだよ。だから、君の期待には応えられないと思うなぁ……」
「隠すんじゃねぇ! 強くもない奴が龍王様や親父、それにリンにあれほど気に入られるもんか! 俺は騙されないぞ!」
もう、俺の力って過大評価されてばっかりで荷が重くって堪らない!
そんな強大な力持ってるんだったらこんなに焦ってないっての‼
「いいから付いて来い。ここでやり合ったらまた親父に見つかる!」
余程、バルファさんが怖いと見えて、辺りをきょろきょろと伺うニーズ。
そんなに怖いなら俺と絡まなきゃいいのに……
俺はそんなことを思いつつ、ニーズに着いて行く事にした。
いっその事なら一度ボコボコにされて興味を失ってもらおうと考えたのだ。
まぁ、殺されはしないだろう……多分。
そんな不安を抱えつつも到着したのは湖の奥にある森の中。
少し開けた場所、周りの木々の幹には刀傷の様なものがたくさん付いている。
「ここはいつも俺が追加の修練に使っている場所だ。俺以外に知っている者はいない」
なるほど、ここなら姉や父の目も届かないと。
「本気でかかってこい! 手加減なんてできる相手だと思うなよ‼」
手加減なんて俺がして欲しいくらいだっての……
やる気満々なようだが、今の俺にニーズに対抗できる術などほとんどない。
「最初に行っておくぞ。俺はかなり弱い‼ そのつもりで――」
俺は最後の注意喚起をしようと思ったが、その言葉が言い終わる前にいつの間にか天地が逆転している事に気付く。
俺は地面に背中から叩きつけられ、ようやく足を払われたのだと気づいた。
呻く俺の眼前にニーズの拳が迫る。
「そんくらいにしときな!」
突然に飛来した火球はニーズの拳を払いのける。
「仲間のフェニックス!? 汚いぞ!」
「面白かったから覗いていたがよ。あまりにも実力の差がありすぎるって思ってねぇ」
「これが本当の実力だっていうのか?」
バーンと対峙するニーズ。
俺はすかさず立ち上がり、ニーズに語り掛ける。
「あぁ、悔しいがこれが今の俺の実力だ」
「ならどうやってご子息や魔獣たちを助けて来たっていうんだ! 力を持たない奴には何も守れやしないだろ!」
「それは――」
俺がその質問に答えようとしたその時だった。
ピィィィィィィィィ ピィィィィィィ
何か笛の様な音が甲高く響き渡る。
「な、何だこれは?」
「こ、これは侵入者を告げる龍笛! 渓谷の方か!?」
ニーズはそう言うと翼を広げ飛び立つ。
「何やら起こったようだなぁ。おしゃべりボーイ、一度村へ戻るぜい!」
「あぁ、それは良いけど次はもう少し早く割って入って欲しいな……」
俺はそう呟くとバーンに乗り、一目散に村へと戻ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます