episode.『10月12日(火)』



昔とは違うというのは


変わってしまったということ


人はそれを成長や発展と呼ぶけれど


退化や衰退にだって置き換えられる


大人になるということは


もう昔の君ではないということ


それがいいことなのだとしても


私は寂しいです


もうあの頃の君には会えないということなのですから


私だけが子供のままだ



      ※



ようやく踏み出した一歩


ずっと誰かに頼ることを拒んでいた


迷惑だろうからとか


そんなんじゃない


周りは一人でどうにかしていた


それが当たり前で


自分も自力で辿り着きたかった


同等でありたかった


でも自分がもし頼られたら


拒まず受け入れていただろう


自分のことだから言える


周りは違うのだと



      ※



それが仕事だったら


迷わず誰かを頼っていた


その決断が誰かに迷惑をかける


誰かへの迷惑は会社への迷惑


会社に迷惑をかけるということは


社会に迷惑をかけるということ


お金が絡んでいる


法律が絡んでいる


そういう柵で包まれた世界


だから意地を張ってはいられない


己を捨てるのは容易なことだった



      ※



社会は周りは自分より秀でたもので溢れている


自分より先輩で大抵年上で


年上だから経験値が違う


それが当たり前で


頼っても問題のない存在で


大人だから頼りやすい


でも学校は違う


同年代の連中は難しい


歳が近いからこそわからない


下に見られたら終わりだと見栄を張ってしまう


壁を感じてしまうのだ



      ※



わかっている


壁をつくってしまっているのは自分の方だと


勝手に決めつけ


勝手にわかった気になって


勝手に怯えている


それでもそれが友であったなら


幾分かマシであったように思う


そこにいるのが友ではないから


こんなにも怖いのだ


知らない知ろうとしない知りたくない


心を閉ざした自分のせいなのだ



      ※



わからないことがわかるようになって


他のことも理解できるようになって


気分が上がって


やる気に満ち溢れて


何もかもが上手く行く


人はそれを調子がいいと言う


わからないことはわからないまま


どうしようもないと諦めて逃げ続けて


でもどれだけ遠ざけようと


投げやりになろうと


私はまた挑戦するんだ



      ※



バイクに乗るため


バイクに乗るためと自分に言い聞かせて


今を生きる糧としている


バイクは車より死亡率が高いから


いつ事故をしてしまってもおかしくはない


だから今やれることは全部やっておく


挑戦は苦だけれど


死んで何もかもを失うよりはマシだから


怖いものはない


まるで戦場に赴くような覚悟だ


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