episode.『01月02日(土)』



正月は嫌いだ


テレビが面白くない


アニメもやってない


振り返り放送ばかりでつまらない


おせちは腹が太らない


お年玉は貰えない


年賀はがきは面倒


友達とは遊べない


何も面白くない


いつもかつも行事は大抵


つまらないものばかりだ


楽しいなんて感情は


思い込みでは埋まらない


年は越さなくていいよ



      ※



根暗なヤツよりも


明るいヤツを見ている方が


笑い話ができて


気持ちが晴れると言うけれど


それを私に求められても困る


私がどれだけ作り笑いを浮かべて


どれだけ明るく振る舞っていたか


それが苦ではなかったけれど


素を受け止めてくれるはずがないのだ


貴方が思っている以上に


私は醜く歪んだいるから



      ※



2年くらい少し前の話


何度も好きだと言ってくれた人がいた


おそらくそれが


迷信と謳われる


最初で最後のモテ期だった


二人とも歳も性格も極端に違う


会ったこともない人


声と名前だけは把握している


話す度に癒されて


優しくて面白いと言ってくれた


それでも私は


その告白を受け入れられなかったんだ



私には愛しき人がいたから


心に居座り続ける片想い


他の誰と結ばれようと


忘れられない人だから


そんな人がいながら


誰かと結ばれてしまったら


きっと貴方を傷つけてしまう


そんな未来が見えてならない


たとえその意中の子に断られたとしても


この思いからは逃れられはしないだろう


私は一生、孤独だよ



只々一途に


女々しく引きずってきた


この誰も知らない思いは


墓場まで持って行こう


それでも見つけてもらえないのは寂しいから


日記を残しておこうと思うんだ


貴方の知らない私がいたと


誰に向けたわけでもない


たとえ誰の目にも止まらなくとも


最後まで私が私の味方であったと


生きた証とするために



      ※



他人を責めるくらいなら


自分を責めた方が楽


相手の言動を性格や仕草


表情から把握して


その場の状況


話の流れから


全てを悟ってしまえば


幾分か納得のいく結論に至る


私がわかった気になった時


その分析は的を射ていた


そうやって勝手に同情し


反省しては傷をつくって


私は全てを嫌いになっていたんだ



      ※



また今年も


近所の人気のない神社で一人


階段に腰掛けて


山と川と青空に囲まれ


育った田舎町を眺めながら


耳元から流れる歌を口遊む


腹から出した声が風に攫われ


誰に届くでもなく儚く散る


今日は今までで一番のでき


でもここで歌うから


上手く歌えるんだよね


景色と歌と自分を重ねてさ


ほんと切ないよ


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