episode.『12月21日(月)』



どの企業の名前を聞いても


仕事内容を知っても


働きたいと思えない


何の魅力も感じない


人生の半分を捧げられるほど


価値があるのか


それだけに重きを置いている


転職はリセットボタンだ


再び就活の悪夢を呼び寄せる


面接なんて堅苦しい仕来り


それだけで人生を左右される


これほど残酷なことはないよ



      ※



就活を阻むのは親


一人暮らしにも保証人がいる


家出をすれば捜索願を出され


死ねば後追いされるだろう


何をするにも親に縛られる


何をしても親に阻まれる


この家に幸せなんてなかった


作り笑いばかり浮かべて


少しでも空気を和ませて


居心地をよくしようと気遣う


生まれてきて良かったなんて思えないよ



      ※



何の心の支えもない人間が


何もかもを抱えて生きていた


誰も何も知りもしない


意地でも気づかれまいと振る舞ってきた


それでも見つけてほしかった


こんな自分がいたことを


それが好きな人だとしたら


私はどれだけ報われただろう


夢や思い出に縋り


必死に足掻いていた私の涙を


貴方は拭ってくれますか?



      ※



漫画や小説を書籍化


アニメ化してラジオ出演


イベントのトークステージ


声優と友達になって


たくさん話をしてみたい


いつか学校を建てて


夢を応援する側に回りたい


親の所為


見る目のない者の所為


私のように現実に阻まれ


それでも夢を諦めず追う者


その才能の開花を手助けする存在


それが私の夢だった



      ※



夢を語れば誰もが笑う


頑張れなどと他人事を言う


背中を押す気も興味もない


何もしてやれることはない


だからこそ余計に


その一言に息が詰まる


自分一人で叶えるしかないと


誰も見つけてはくれない


誰も認めてはくれない中


叶うはずがない


私は日陰者として終わる


だから夢は夢として


語らずに潜めるよ



      ※



面接は嫌いだ


年上に敬語を使うのは当たり前でも


それ以上に礼儀を求められ


些細なミスが命取りとなり


それだけで全てを見透かしたように不適合者の烙印を押される


履歴書以上の内容を求められても困る


入りたくて入るわけじゃないから理由は漠然


優良故に仕方なく愛想良くして


ほんと物は言いようだな



      ※



私がその立場だったら


そう考えることがよくある


そんな仮定の話に意味はないと人は言う


けれど実際、適材適所と言うだろう


もしも自分がなどと考えれば


想定外のことにも対処できる


そんなことばかりしているから余計に思うんだろうな


この世界がつまらないと


想像を超えて来ない


ほんと退屈な世界だ



      ※



私がパーカーを着ると


彼女もパーカーを着るようになった


私が黒いセーターを着始めると


彼女は白いセーターを着始めた


冬になって黒コートを着ると


彼女も黒いコートを着ていた


ただ不思議と目で追ってしまう彼女に


薄々惹かれていることに気づきながら


私はやっぱり話しかけることができなかったんだ



      ※



私にとって県外に行くっていうのはさ


母国から外国へ赴くくらいに怖いことなんだ


自分から楽しみがあって動いたなら恐怖はない


それが自然な流れであれば問題はない


けれど急遽そんな予定を立てられたならそりゃ怖気ずきもするさ


適応しようと努力はする


それでも望まない土地への侵入はやっぱり怖いよ



      ※



引きこもることが許される家なら


どれだけ幸せでいられただろう


ただひたすらに好きなことだけをやっていられる


でも引きこもれる部屋もなければ、許される家じゃない


追い出されるか


家を出れば連れ戻される


絶対服従でしかない


だから裏も表も不安定な


歪でぐちゃぐちゃな


こんな自分が生まれたんだ


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