episode.『07月29日(月)』



生まれて初めて、素敵な夢を見た。


友が校長に直談判して開かれた豪華な文化祭。


世界中で一番大好きな女の子と文化祭を回る夢。


手を繋いで、写真を撮りあって。


笑顔の絶えない楽しいひと時。


最後に連絡先を交換しようとして、彼女は消える。


夢でもそれが嬉しかった。


ただ変な胸騒ぎがするんだ。



      ※



今まで、彼女の夢を見たのは数回程度。


肩と肩が触れ合う距離に彼女がいて、その隣に自分がいる。


ただそれだけの夢。


だから今日、彼女の隣を手を繋いで歩いて、忘れられない笑みを零してくれたことに違和感を覚えた。


それはまるで、お別れを告げにきたみたいで。


覚めてすぐ、嫌な予感がしたんだ。



      ※



今あるのは、無性の寂しさ。


彼女の夢を見れて嬉しかった。


でも、有り得るはずのないことだから。


こんなにも堂々とした、幸せすぎるデートのような感覚。


とても、嫌な予感がする。


もし、もしも彼女がいなくなる暗示だとしたら。


不安で胸がいっぱいになる。


今はただ、無性に君に会いたいよ。



      ※



大丈夫だよね?何もないよね?


ただの気のせいだよね?


自分がいなくなるだけなら別にいい。


けれど自分の知らないところで、誰かがいなくなるなんてこと、あってほしくないよ。


何も伝えられずずくで、一度も再会できぬままのお別れを知るなんて嫌だよ。


そんな悲しいことはないよ。


君に会いたいよ。



      ※



声がでかいヤツを陰キャとは呼ばない。


よく喋るヤツを陰キャとは呼ばない。


陰キャとは、性格の捻くれた暗いヤツのこと。


クラスカーストにいるからというのでは事足りない。


明るい時点で、そいつはもう陰の住人じゃない。


性根が暗く腐ったヤツ、ぼっちを極めた狼こそ、陰キャなのだと、私は思う。


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