episode.『12月22日(土)/12月23日(日)』



私は本当に酷い父をもった。


自分が受けた境遇を子にも押し付ける。


その遺伝が少なからず私にもある事に吐き気がする。


何もかもに非協力的で自分勝手な言動ばかり。


『お前のため』ではなく、全てが『自分のため』。


罵詈雑言を並べ、歯向かえばわしゃ知らんと出ていけの一点張り。


ほんと面倒臭い。



      ※



私の父は最悪だ。


矛盾した言動。


気分を損ねると、最初はYESだった回答も急遽NOに変わる。


だから家族は皆、父の機嫌を取る。


つまりは父の言いなり。


父の愚痴は当人ではなく、全て母にあたる。


ただの卑怯な独裁者。


その血が私にもあるから、他人と関われない。


傷つける事が、何よりも怖いから。



      ※



この家に、助け以外の逃げ道はない。


助けがないのなら、逃げ道はない。


だから、耐え抜くしかない。


息苦しすぎて、私は本当に死にたくなる。


幾度か、本気で死のうとした事もある。


階段、水中、刃物、舌。


私は孤独に終わろうとして、未遂に終わる。


覚悟はあるけど、敗北者にはなりたくないんだ。



      ※



酷い親を持つと、子は苦労する。


それを知っていながら同じ境遇を強いる父は哀れだ。


私が父に感謝できるのは、そうはならないという意志をくれた事だけ。


家ですら気が抜けない生活。


上辺だけの関係を築き上げ、私を知る者は誰もいない。


私を知れば、皆いなくなる。


だから私は、一人でいいんだ。



      ※



本音を言えるって、どういう気分なんだろうね。


心を擦り減らして、無感情になった私にはわからないよ。


私は私を殺して生きている。


葛藤なんてした事ない。


言い訳ばかり並べて、逃げ道を選べる皆が羨ましい。


逃げ場すらない私は、もう死ぬしかないじゃないか。


私は生まれてよかったと思いたいよ。



      ※



心を病んでいるほど、想像力を掻き立てる。


不幸であればあるほど、もしもを描ける。


理想を築くには、満たされてはならない。


だから私は矛盾する。


願いを叶えるためには、望んではならない。


欲するのなら、手を伸ばしてはならない。


果報は寝て待てとは、まさにこの事。


ほんと、もどかしいよ――。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る