科学のロウソクに火を灯せ! 五人の科学オタクの異世界科学教室

 女神ピタラスの導きで異世界へ転生したのは、それぞれ数学、物理学、地学、化学、生物学に秀でた五人のオタクたちだった!

 そのうちの一人、貴族の少年グラルの前世は「ジェットコースターを積分する」という奇妙な夢を抱く数学オタク。積分とは、簡単に言えば関数の放物線グラフで囲まれた面積を求める方法のこと。つまり単なる線に新しい次元を加えるということだ。

 女神から科学の発展を命じられ、グラルに与えられた【積分魔法】は、人や物の可能性を広げて新しいスキルを生み出す能力。

 その【積分魔法】と頭脳を活かし、異世界の最高学府に主席入学を果たしたグラルが、大好きな数学を広めるため、常識はずれの行動と活躍で周囲の度肝を抜いていく学園風景が痛快なのだ。

 元からこの世界に科学がなかったわけではない。なんらかの理由で研究が途絶えて、曖昧な知識だけが伝わってしまっていた。どうして科学は衰退してしまったのか。その歴史の謎に迫っていくミステリーも興味深い。

 グラルたちの熾した科学の火は、まだロウソクの火のように小さいが、たしかにこの世界に火は灯ったのだ。

 科学の発展は、人類の発展。五人のオタク、いや、五人の賢者たちが広げる科学に期待がふくらむ。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)