第十五章:BLACK EXECUTER/02
「…………!」
潤一郎がそんな風に撃破され、地面に這いつくばったのを見て。翡翠真は現在の状況を判断し……撤退を選択。遥とセラの二人との交戦を中断すれば、一気に潤一郎の元まで飛んでいく。
「っ、待ちなさい!」
「逃がすワケには……!」
それをセラと遥は追おうとするが、しかし不意を突かれたが故に反応が僅かに遅れ。彼女たちが追撃するよりも、ボロボロの潤一郎の身体を真が肩に担ぐ方が早かった。
「……劣勢、一時撤退」
「ああ……すまない真、恩に着るよ……」
「……任務終了。撤退開始」
ボロボロの潤一郎に礼を言われても、真はまるで意に介さぬまま。感情も抑揚もない声でただ呟くと、そのまま潤一郎を担いでこの場を離脱する。
同時に、アンジェと交戦していたチーターも隙を見て逃げ出していってしまった。
「逃がすかぁっ!!」
逃走を図るチーターを見て、戒斗は雄叫びを上げながら追おうとした。
すると有紀が「戒斗くん、乗れ!」と彼に叫び、傍らのガーランドを……蒼いスーパー・マシーンを指差す。
「乗れって……先生、まさかコイツも!?」
「ああそうだ! ヴァルキュリアXG用の戦闘支援ビークル、その名もガーランド! 詳しいことは乗ってから本人に直接聞きたまえ!!」
「本人って……!?」
戸惑いながらも戒斗は車の左側に乗り、ヴァルキュリアXGを着装した格好のままで運転席に滑り込む。
『お初にお目に掛かります、マスター』
「っ!? 喋った!?」
とすれば唐突にガーランドの合成音声が車内に木霊するから、何も知らぬ戒斗は素っ頓狂な声で驚く。
『私はガーランド。貴方が乗られているこの戦闘支援ビークル……厳密に言えば、これに搭載された人工知能システム、と言うべきでしょうか』
「ああ……なるほど、そういうことか。喋る車なんて、先生もまたとんでもないモンを作ったな……ナイトライダーかよ」
短い会話で納得しつつ、有紀ならやりかねないと納得しながら……戒斗が最後にそんな皮肉を口走ると。
『でしたら、私の名前を変更しますか? 貴方がお望みであれば、名を
すると、ガーランドはそんな彼の皮肉に更なる皮肉で返してきた。
「いいさ、ガーランドのままでいい」
『分かりました。……詳しい説明は後にしましょう。標的の追跡が目的ですね?』
そんなガーランドの皮肉に呆れ返り、肩を竦めつつ戒斗は「ああ」と頷き肯定する。
「追いつけるか?」
『私ならば追いつけます』
「よし……じゃあ行こうぜ、ガーランド」
『イエス・マイロード』
どうやら皮肉屋な性格らしいガーランドに呆れつつも、戒斗はニヤリとし。目の前のステアリングを握り締めれば、ギアをドライヴ位置に叩き込んで、アクセル・ペダルを底まで踏み込み。自らが駆る蒼い閃光、ガーランドを疾走させる。
逃げたチーターを先んじて追いかけていったアンジェを追う形で、戒斗もまたガーランドとともに走り出した。
――――――絶対に、逃がしはしない。
(第十五章『BLACK EXECUTER』了)
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