第十一章:強襲、白き流星/04

 そんな風に遥と潤一郎が猛攻を繰り広げている中、その傍らではチーター・バンディットとアンジェが目にも留まらぬ速さでの苛烈な応酬を繰り返していた。

「グルルルル……ッ!」

「この敵……僕の速さに追いついてきている……!?」

 常人の眼では捉えきれないほどの速さでの戦い。そんな戦いの中、チーター・バンディットはアンジェと対等かそれ以上の速さで戦っていた。

 ――――神姫ヴァーミリオン・ミラージュは、速度に秀でた神姫だ。

 しかも、今の姿は速度特化形態のヴァーミリオンフォーム。その超加速は、普通なら他の神姫も、バンディットも……誰も追いつけないレベルの速さを誇る。

 だが――――チーター・バンディットはその速さに、彼女の最大の武器である速さに追いついてきているのだ。

 そのことが、アンジェの心を何よりも動揺させていた。

「だぁぁぁぁっ!!」

「グルルルル……!!」

「っ、速すぎる……!?」

 アンジェが繰り出すミラージュカリバーの斬撃と、チーターの両手から伸びる猛獣のような大きな爪とが幾度となく斬り結ぶ。

 その回数、一秒で何十回。それほどまでの熾烈にして超高速な斬撃の応酬の中、互いに五分五分の戦いを繰り広げていたが……しかし、徐々にアンジェが押されていく。

 原因は、何よりもアンジェの戦闘経験の浅さだった。

 能力的にはあくまで五分五分か、どちらかがどちらかを僅かに勝る程度の拮抗した相手。だが問題は、アンジェが未だ経験不足の神姫という点だ。

 その経験の浅さが、徐々に戦況をアンジェの劣勢へと傾かせていた。

「グルルルル…………ッ!!」

「ぐぁ……っ!?」

 斬り結ぶ中、不意を突かれたアンジェの手からミラージュカリバーが吹っ飛んでいく。

 同時にチーターの爪に神姫装甲を浅く引っ掻かれ、アンジェは細かな火花と破片を散らす。負ってしまった僅かなダメージのせいで、思わず超加速も停止してしまい……静止したアンジェは、その場に膝を突いてしまった。

 …………完全に、追い詰められた。

 そんな危機一髪の状況にアンジェが陥った時――――彼女の耳に、誰かの声が聞こえてきた。

「――――――離れろ、アンジェ!!」

 何処からか木霊してきた、聞き慣れた声。その声に従い、アンジェがその場から咄嗟にバッと飛び退くと。すると、今の今まで彼女が戦っていた場所……今まさにチーターが立つ場所に機銃掃射が放たれる。

「ちょっと、冗談でしょう……!?」

「……!」

「カイト……カイトっ!!」

 飛び退くアンジェと、他の二人。驚く神姫たち三人が一斉に振り向けば。そこにはコンテナヤードに滑り込んできた軍用の四輪駆動車、ウェズの運転するハンヴィーと……その銃座から顔を出す、包帯まみれの戒斗の姿があった。

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