第十章:セカンド・イグニッション/深紅の乙女より愛を込めて/02
「だぁぁぁぁ――――っ!!」
セラが機銃掃射でコフィンたちを怯ませている間に、アンジェが敵の群れの中へと一気に飛び込む。
腕のアームブレードと脚のストライクエッジ、四振りの刃を振るい、すれ違いざまにコフィン数体を撃破。しかしアンジェは加速の勢いを緩めないままに次なる標的、センチピード・バンディットに飛び掛かる。
「っ!!」
「――――――」
蹴るようにアンジェが繰り出したストライクエッジと、センチピードが防御の為に掲げた右腕とが激突する。
…………手応えは、あった。
だがアンジェの脚、その刃はセンチピードの腕に浅く食い込みこそすれど……それ以上奥までは辿り着かない。
この感触、例えるなら……鎧に防がれているような感覚だ。
もっと言えば、
「――――――」
「くっ……!?」
刃が止められたと知るや、アンジェは咄嗟に飛び退く。
そうすれば、彼女が飛び退いた一瞬後にセンチピードはもう片方の腕を振るい、鋭い殴打を仕掛けてきた。
ひゅんっと風切り音がするぐらいの勢いで、センチピードの腕が空を切る。
センチピードはそのまま二度、三度と徒手格闘を仕掛けてきて……それをアンジェは後ろにバッバッと飛び退いて回避していく。
(この敵……見た目より、ずっと素早い!)
飛び退き、時にはアームブレードで受け流しながら、アンジェはセンチピードと相対しつつ……その実力に僅かな冷や汗を流していた。
――――――強い。
この敵、明らかに強敵だ。かつて彼女たちが戦ったバッタ怪人、グラスホッパー・バンディットに迫るレベルの強さ。それをこの気色悪いムカデ怪人は、センチピード・バンディットは確かに秘めていた。
どう考えても、甘く見て良いような相手ではない。
「――――――!!」
「なっ……!?」
アンジェがそう考えていた矢先、少し離れた場所に立っていたセンチピードはおもむろに右腕を虚空に向かって振るうと――――その手首の裏側から、鞭のようなものを勢いよく射出してきた。
唐突に向かってくる、仕込み武器めいたその鞭は……細かな棘の付いた、それこそムカデによく似た格好の細い鞭だ。
センチピードの仕掛けてきた、そんな不意打ちじみた攻撃。それに対しアンジェは反応が遅れてしまい……身体を拘束されることは避けられたものの、しかし完全に避け切ることは出来ず、左腕に鞭が絡みついてしまう。
「この……っ!」
アンジェは咄嗟にアームブレードで左手に巻き付いた鞭を切断しようとするが、しかし固定装備された刃では上手く切ることが出来ない。
「うわっ!?」
そうしてもがいていれば、センチピードは鞭を握る右手をグッと引き、力任せにアンジェの身体を手前へと引き寄せようとする。
驚いたアンジェは足をもつれさせながら、じりじりとセンチピードの元へと引き寄せられていく。
(これは、ちょっとマズいかな……!?)
アームブレードでは突破不可能。だとすれば、短剣を使えるヴァーミリオンフォームにフォームチェンジすべきか――――。
焦るアンジェが、しかし冷静さを失わない心でそう考えていた矢先。何処からか突然、蒼の閃光が流れ落ちてきて――――アンジェとセンチピードの間に割って入ってきた。
「――――ハァッ!!」
急降下してきた蒼の閃光は、手にしていた細身な長剣でセンチピードを斬り付け……堅牢なムカデ怪人に深手を負わせ、怯ませる。
青く長い綺麗な髪を揺らしながら、振り向く長身の影。蒼と白の神姫装甲に身を包んだその乙女の姿を、まさかアンジェが見紛うはずもない。
「遥さん……!」
「アンジェさん、遅くなりました。――――さあ、共に参りましょう」
――――間宮遥、神姫ウィスタリア・セイレーン。
蒼と白の神姫装甲に身を包み、右手に流麗な長剣を……聖剣ウィスタリア・エッジを携えた乙女が、誰もが待ち望んでいた彼女が、満を持してアンジェの前に現れていた。
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