第八章:大いなる闇の気配
第八章:大いなる闇の気配
時間は多少前後して、篠崎邸の広間。そこでは篠崎潤一郎と、姉の香菜とが何やら言葉を交わしている最中だった。
当主にして二人の祖父である十兵衛は珍しく不在だ。位置関係的には潤一郎が席に着き、少し離れた場所に香菜が立っているといった感じ。
また、潤一郎はすぐ傍に真を……翡翠真を伴っていた。
潤一郎に付き従うかのように、彼の座る席から数歩引いた場所に控えて真は立っている。
とにもかくにも、そんな位置関係の中――――この広間で、姉弟は言葉を交わしていた。
「潤一郎、貴方にはP.C.C.Sと、そして残る神姫を誘い出す為の作戦、その指揮に当たって貰いますわ」
「分かってるよ、姉さん。手筈通りにやってみせるさ。……それで? 僕は誰と誰を連れて行けばいいんだい?」
「貴方にはそこの翡翠真……グラファイト・フラッシュと、コフィン三〇体。加えて新開発の下級バンディット二体を預けますわ。仮にも私の弟であるのなら、上手く使いこなしてみせなさい」
「ふふっ……。姉さんの期待、存分に応えてみせるよ」
手持ち無沙汰な右手でくるくるとアルビオンシューターを回しつつ、爽やかな笑顔を湛えながら潤一郎はそう言い。すると後ろに振り返った彼は、自分の傍らに控える真にも「ねっ?」と笑顔を向けてみせる。
「…………脅威の殲滅、任務了解」
だが、真は光の消えた瞳で……意志というものが根こそぎ消え失せた瞳のまま、そう呟くのみで。そんな彼女の声は……嘗ての翡翠真からは、快活な彼女からは想像もできないほどに、何処までも無機質なものだった。
(第八章『大いなる闇の気配』了)
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