第九章:ヴァルキュリア・フォーメーション/05

「でやぁぁぁっ!!」

 肉眼で追いきれないほどの超加速で、ミラージュカリバーを振りかぶりながらアンジェがバッタ型の怪人、グラスホッパー・バンディットの懐へと飛び込んでいく。

「シューッ……!!」

「カイトの邪魔はさせない!! カイトは……僕が守る!!」

 華奢な腕で振るうミラージュカリバーと、ハイキック気味に高く振り上げたグラスホッパーの脚とが激突し、斬り結ぶ。

 そうしてアンジェがグラスホッパーとの交戦を開始する中、戒斗は両手の拳銃を撃ちまくりながら、あの男に……篠崎潤一郎に迫っていた。

「あはははは!! いいね、やっぱりこうでないと!!」

 だが潤一郎は銃弾飛び交う中でも笑顔を見せながら、ひょいひょいっと軽快なステップを踏んで、戒斗の銃撃を軽々と避けてみせる。

「この野郎!!」

「楽しいね、やっぱり君と遊ぶのは楽しいよ!!」

「ほざくなよ……ッ!!」

「でも、そろそろ僕も本気を出させて貰うとしよう!!」

 苛立つ戒斗に潤一郎は笑顔でそう言いながら、横っ飛びに大きく飛んで射撃を回避。そのまま地面を転がると、膝立ちの格好になるように起き上がりながら……懐から何かを抜き放った。

 ――――アルビオンシューター。

 潤一郎が右手に握り締めるそれは、真っ白い大型拳銃のような武器だった。

「ふっ!」

 起き上がりざまにアルビオンシューターを懐より抜いた潤一郎は、それで戒斗を狙い撃つ。

 純白の大型拳銃の銃口で眩い閃光が瞬けば、そこから光弾が撃ち出される。

 そんな、半ば不意打ち気味な銃撃に戒斗は対応しきれず。回避も間に合わないまま、その光弾の直撃を食らってしまった。

「ぐあっ!?」

 幸いにして今日の戒斗はフルアーマー装備、増加装甲のアサルトアーマーで身を固めていたから、ダメージは大したことなかったものの……しかし完全な不意打ちを食らったせいか、戒斗は実際のダメージよりもずっと強く怯んでしまっていた。

 アサルトアーマーの胸部装甲から激しい火花を散らしつつ、戒斗は後ろに大きくたたらを踏む。

「覚悟しろ、悪党どもめ! お前たち悪の秘密結社の野望は……この僕が打ち砕く!!」

『READY』

 そんな戒斗を前に、純一郎は堂々たる態度で叫び。そうすればクルクルと回しながら顔の近くに持ってきたアルビオンシューター、その後端にある幅広のローディングゲートを開いた。

 アルビオンシューターから女声の電子音声が響く中、潤一郎は懐から分厚いカードのようなものを――――Bカートリッジを引っ張り出す。

 潤一郎は取り出したそのBカートリッジ、左手に握り締める真っ白い『アルビオン・カートリッジ』をローディングゲートから右手の拳銃、アルビオンシューターに装填する。

『GET READY』

 そのまま左手でローディングゲートをバチンと勢いよく閉じれば、アルビオンシューターから再び電子音声が鳴り響く。

 変身待機状態になった右手の銃から小気味の良い待機音が響く中、純一郎はアルビオンシューターを構え、雄叫びを上げながらトリガーを引いた。

「――――変身!」

『SET‐UP ALBION‐SYSTEM』

 そうして潤一郎がアルビオンシューターのトリガーを引いた瞬間、三度目の電子音声が鳴り響き……そうすれば、彼の身体は瞬時に真っ白い装甲に包まれていた。

 ――――レースカーのようにツルッとした、艶やかで曲線的な純白のボディと、目元に埋め込まれたゴーグル形状の青く大きなバイザー。

 その姿はまさしくアルビオン・システム……いいや、プロトアルビオンという名の、秘密結社ネオ・フロンティアの尖兵たるパワードスーツに相違なかった。

 そんな姿に変身を遂げた潤一郎はスッと戦闘態勢の構えを取り、そして高らかにこう宣言してみせる。

「覚えておけ、悪党ども! 僕は篠崎潤一郎、世界を救うヒーローの名だッ!!」

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