第八章:深淵からの使者たち/02
一方同じ頃、いつものように純喫茶『ノワール・エンフォーサー』を手伝っていた間宮遥もまた、その気配を聡く感じ取っていた。
「……! この感覚は……!!」
あまりにも感じ慣れた、甲高い耳鳴りのような感覚。敵の出現を告げる、本能が訴えかける激しい警鐘。
その感覚を覚えると、ハッとした遥はすぐさま身に着けていたエプロンを脱ぎながら「すみません、急用が!」と戒斗の両親、厨房に立つ二人に叫びながら店を飛び出し、そのまま店の外に停めていた自分のバイクに跨がる。
二〇一九年式、カワサキ・ニンジャZX‐10R。
ステルス戦闘機のように鋭い黒のカウルが目を引くそのバイクに跨がれば、遥はすぐさまイグニッション・スタート。排気量一リッターの直列四気筒エンジンを叩き起こしながら、同時に黒いフルフェイス・ヘルメットを被り……すると遥は暖機運転の時間も待たぬまま、すぐさま公道へと全速力で飛び出していった。
(伊隅飛鷹、そして
――――そして。
(そして……私が何処の誰で、何故この力を得たのか。どうして神姫と戦っていたのか……本当の意味で、私はまだ自分のことを何も知らない)
――――だとしても。
(だとしても……私のこの胸には、今も戦う理由がある。戒斗さんやアンジェさん、セラさん……皆の笑顔を守るために、私は!)
揺れる心の中、しかしブレない心を抱きながら、遥もまた疾走する。本能が告げる方向へと向かって、ただ一直線に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます