第四章:君との幸せな日々が、永遠に続きますように――――。/03

 店を出た二人は、車を使わずにそのまま歩きで出掛けていった。

 夕暮れ時の住宅街、空も街も茜色に染まった夕焼けの中を、戒斗とアンジェは二人横並びになって歩いて。そのまま歩くこと十数分、戒斗がアンジェに連れられていった先は……家から一番近い私鉄の駅だった。

「いつも車ばっかりだったから。たまには電車に乗ってカイトとお出かけしたかったんだー」

 どうしてわざわざ電車なのか、と戒斗は不思議に思っていたのだが、アンジェ曰くそういう理由らしい。

 言われてみれば、確かにアンジェと移動するのは大体が乗り慣れたZ33でだ。学園への送り迎えもそうだし、何処へ行くにも基本は車での移動。徒歩で何処かに出掛ける機会は……無くはないが、しかし電車に乗ることといえば本当に稀だ。

 いや、記憶にある限りは一度もない。少なくとも戒斗が運転免許を取得してからは一度も無かったはずだ。

 だから、アンジェがたまには電車で出掛けてみたいと思う気持ちも分かる。

「そういうことか」

 戒斗はそんなアンジェに納得しつつ、二人で切符を買い。夕焼けに照らされるホームで暫し待った後、滑り込んできた銀色の私鉄電車に二人で乗り込んだ。

 流石にラッシュを外した中途半端な時間帯というだけあって、車内はかなり空いている。特に苦もなく座席、横一列の長いベンチシートの隅に座った戒斗とアンジェは、暫しの間そのまま電車に揺られることにした。

「たまには良いモンだな、こういうのも」

「でしょー? 気分転換じゃないけどさ、最近は特に色々あったし……こういうのも良いかなって思ったんだ」

 ガタンゴトンと揺れる電車の座席に横並びになって座りつつ、窓から差し込む夕焼けに照らされながら……何気ない会話を、二人で交わす。

「ホント、最近は色々あったもんな」

「ねー。遥さんのことだったり、僕が神姫になったことだったり。セラや有紀さん、P.C.C.Sのことだったり……本当に、短い間に色々あったよね」

「ありすぎて困るぐらいだ」

「だね。本当に色んなことがあって……何も知らなかった頃が、ずっと昔のことみたいに感じるよ」

「もう何年もこうしている気分だよな、本当に」

「でも……全部最近のことで、そんなに時間は経っていないんだから不思議だよね」

「全くだ。本当に……不思議な感覚だよ、何もかもが」

「遥さんとだって、ずっと一緒に居る気がするのに。それでもまだ一年半ちょっとだっけ? なんだか不思議だよね、時間の感覚って」

「長くもあり、短くもある。時間の感じ方なんて常に一定なワケじゃない。結局……何もかもが、俺たち次第なのかもな」

「そうだね……」

 そうして言葉を交わしつつ、電車に揺られながら……二人は、目的地へと向かっていく。

 電車に揺られた先、アンジェの目指した目的地は……この先の終点にある、都市部の繁華街だ。

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