第四章:君との幸せな日々が、永遠に続きますように――――。/02
「お二人とも、お帰りなさい」
そうして戒斗とアンジェが一旦家に帰り、カランコロンとベルの鳴る純喫茶『ノワール・エンフォーサー』の扉を潜っていくと。すると丁度カウンター席の辺りで接客をしていた遥が、笑顔で二人を出迎えてくれていた。
「ただいまー、遥さんっ」
「ただいまだ」
「入れ違いになってしまいましたね。ついさっきまで、此処にセラさんがいらっしゃったんですよ?」
「えっ、セラが来てたの?」
驚くアンジェに、遥は「はい」と頷いて肯定する。
「お昼頃からずっといらしたんですけれど、ついさっき……本当にさっき、五分ぐらい前に帰られたんです。何か悩みごとがあったみたいですけれど、私がお話を聞いている中で……セラさんなりに、答えを出せたみたいです」
「……そっか、遥さんに相談してたんだ」
遥の言葉を聞いて、アンジェは嬉しそうに薄く笑みを浮かべた。
何せアンジェは……セラの抱えている悩みと、そして二人があの時、あの立体駐車場で言い争った神姫同士であることを知るほぼ唯一の立場だ。それだけに、セラが遥に相談し……そして彼女に打ち明ける中で答えを得たという事実は、アンジェにとって……とても嬉しいことだったのだ。
「ところで、お二人はこれから何処かへお出かけに?」
そうしてアンジェが笑顔を見せている傍ら、遥は二人の様子を見てそんなことを訊いてくる。
「……よく分かったな、ひょっとして遥はエスパーか何かか?」
それが完全に図星だったものだから、戒斗は大真面目に驚いた顔をして遥に言う。すると遥はクスッと小さく笑い、
「ふふっ。生憎と神姫の力はあっても、誰かの心を読む力までは持ち合わせていませんよ。ただ、アンジェさんの様子を見ていたら、何となくそうかなと思っただけです」
「なるほどな……」
「えへへ、遥さんには全部お見通しかぁ。今からカイトとお出かけするんだー」
「そうですか。でしたら……この時間ですし、お二人とも夕食は外で摂られますか?」
「だねー。カイトが良ければ、だけれど」
「アンジェの好きにしてくれ。……というか、なんでわざわざ帰ってくる必要があったんだ? 着替えるワケでもなさそうだし」
「ん? たまには車でお出かけじゃなくて、カイトとお散歩しながら行きたいなーって」
「…………アンジェらしい答えだよ、本当に」
やれやれと肩を揺らす戒斗と、クスッと彼に微笑むアンジェ。そんな二人を笑顔で眺めつつ、遥は戒斗とアンジェにこんな見送りの挨拶を投げ掛けた。
「では、お二人ともお気を付けて。何かあれば……すぐに私が駆けつけますから」
「うんっ。じゃあ遥さん、行ってきまーすっ」
「悪いな遥、明日は俺も店手伝うから」
「いえいえ、お気になさらず。お二人とも、楽しんできてくださいね」
柔らかな笑顔を浮かべる遥に見送られながら、戒斗とアンジェはそのまま店を後にしていった。
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