第八章:蒼の流星は空っぽの夜空に流れ落ちて/01

 第八章:蒼の流星は空っぽの夜空に流れ落ちて



 ――――数時間後、真夜中。

 間宮遥は独り、居候している戦部家の二階にある自室に引きこもっていた。

 あの後、戦いを終えた遥は戒斗とアンジェの二人をそれぞれ自宅まで送り届けて。その後はずっとこうして部屋に籠もっている。そもそも家が違うアンジェは当然としても、彼女は戒斗とすら話そうとしないまま……ずっと、部屋の中に引きこもっていた。

「…………」

 電気も点けず、カーテンも閉めていない暗い部屋の中。窓から僅かに差し込む月明かりだけが照らす自室の中で、遥はベッドの上で体育座りをして俯いていた。

(あの姿を……ウィスタリア・セイレーンの姿を見られてしまった以上、私はもうこの家には居られない。もう……戒斗さんやアンジェさんの傍には居られない)

 そうして体育座りをし、俯きながら遥は考える。部屋の中同様に、暗い表情をした横顔で。

(とても辛い。辛いことだけれど……でも、そうすることがお二人の為だから。神姫という超常の存在を知ってしまえば、きっと……戒斗さんやアンジェさんも戦いに巻き込まれてしまう)

 彼らと離れるのは、本当に辛い。一年半前からずっと、空っぽだった遥の傍に居てくれたヒトたちだ。過去の消えた、何もない空っぽの自分に寄り添ってくれていた……間宮遥にとって、最も大切な存在。

 そんな彼らと別れなければならないのは、遥にとって本当に辛いことだった。

 でも――――それ以上に、戒斗やアンジェを戦いに巻き込みたくないという思いの方が強かった。

(私自身、何のために戦っているのかも分からない。そんなものに……私の大切なヒトたちを、戒斗さんやアンジェさんを巻き込みたくない)

 巻き込むぐらいなら――――自分が此処から消えた方がマシだ。

 そう思うと、遥は決心し。体育座りの格好を崩してベッドを離れると、簡単に荷物を纏め。机の上に書き置きを残して、静かに部屋を出て行った。

 今までお世話になりました。どうか探さないでくださいと――――そんな書き置きを残して。

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