第二章:紅蓮の乙女/04
「セラってば、やっぱり此処に居たんだ」
唖然とした顔で見下ろしてくるセラに気付き、アンジェは頭上の彼女を見上げながら笑顔で声を掛ける。
「アンタ、どうしてアタシが此処に居るって分かったの?」
「んー、セラなら多分この場所じゃないかなーって思ったんだ」
「鍵は一応かけ直しておいたはずだけど、アンタどうやって……」
ぽかーんとした顔のまま、セラが続けざまに疑問をストレートにぶつけてみると。するとアンジェは二つ目の質問の後、手の中に在った何かを頭上のセラの方に見せつけてきた。
それは……見たところ、鍵のようだった。
防犯性の高いディンプル式とかじゃない、普通のピンタンブラー用の溝が刻まれた鍵だ。今の話の流れで見せてきたことを察するに、屋上ドアの合鍵だろうか……?
「それは?」
「昔この学園に居た不良さんから貰ったんだ。とっても優しい不良さんから、僕だけの王子様から……ね」
不思議に思ったセラが怪訝そうに首を傾げながら問うてみると、するとアンジェはその合鍵を両手で包み込み、胸の前で握り締めながら……遠い目をして、至極幸せそうな顔でそう呟いていた。
「お昼、一緒にどうかな?」
そうした後で、アンジェはまた見下ろしてくるセラの顔を見上げつつ、彼女にそんな提案を持ちかける。
提案されたセラは、そのまま貯水槽の傍から飛び降り。アンジェの隣にトンっと軽快に着地しつつ……「拒否する理由もないわ」と肩を竦めてみせた。
「やった♪ じゃあセラ、一緒に食べよっ♪」
セラが一緒に昼食の時間を共にしてくれることになれば、アンジェは嬉しそうにニッコリと微笑んで。そんな彼女の純真無垢な笑顔を傍で眺めながら……セラは改めて思っていた。
――――やっぱり、不思議な
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