必然
ミカが<道具>として加わると、元メイドの囚人達で済ましていた者達さえも、
『元女王様とヤれる!』
ということで、ミカの方に群がった。
するとその分、元メイドの囚人達が担当する男の数が減ったのも事実である。
元メイドの囚人達はそれに心底ホッとしていた。そして同時に、
『この女をもっと懲らしめてやればいい…!』
などと内心では思っていた。自分達が仕えていたルパードソン家を破滅させた張本人であるミカが男達の<慰み物>になるのは当然の報いだと思っていた。同時に、自分達がその一部とはいえ肩代わりさせられることを理不尽にも感じていた。
だからミカがどんな風に扱われようとも、それに対して同情する者はいない。
初日の<仕事>の後で牢に戻ったミカは用意された食事を摂り、意識を失うようにして眠った。
けれど、窓の外が明るくなり始めた頃には目を覚まし、昨夜はできなかった自分自身の手入れを始める。
「……」
黙々と。ただ黙々と。
一通りの手入れが終わると、軽く体を動かして、異常がないかを確かめた。
乱暴に扱われた膣や肛門は痛むもののそれ以外は特に問題なさそうだと確認できると、再びベッドに横になり、体の痛む部分に意識を集中し、自身の免疫や代謝機能が傷を癒していくことをイメージしつつ、深くゆっくりと呼吸を行った。
確実に酸素を取り込み、それを全身にくまなく送り届け、己が持つ能力を活性化させることをイメージした。
これは、地下牢で前歯が折れた時にもずっと行っていたことだった。
それがどれだけ効果があったのか医学的に証明はできないものの、現に彼女は回復し、そして今も、完全ではなくても健康な肉体を維持していることは事実だ。
彼女の決して折れない心が、自己免疫機能を最大限に高めている可能性はある。
泣こうが喚こうが、自分に下された<審判>は覆らない。私欲で帝国を貪り多くの国民を虐げ死に追いやった、
<歴史上最も忌むべき悪女>
という評価は覆ることはなく、自分はそれに相応しい扱いを受けるだけだ。
ミカはそれを理解し、納得し、受け入れていた。
そして自分に残された時間も、求められる役目があるのならばそれを完遂するのみ。
『泣き言を垂れ流して物事が上手くいくなら、誰も苦労などせん。泣き言を並べる時間も惜しんで己の目的に向かって必要なことを完遂する者だけが、真の満足を得られるのだ……』
彼女の精神は、そういう形で最適化され、揺らぐことがなかった。
揺らぐ必要がないのだ。
ここでこうやって男達に嬲られることさえ、彼女にとっては、
『生きていれば呼吸をする』
のと変わらないほどの<必然>なのだから。
呼吸をすることを嘆く人間などいないのと同じなのだから。
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