意識改革
ミカに対する反感が日を追うごとに高まる中、若い貴族達を中心に、結束を強める動きが見え始めていた。
あまりに腑抜けが過ぎて、下賎の出である女ごときに国をいいようにされてしまった親世代には任せておけないと奮起した者達だった。
ある者は父親の尻を叩き、またある者はいまだ煮え切らない態度を取る父親に成り代わって家の実権を握って、形骸化していた貴族による<合議制>を立て直すべく、積極的に発言を行うようにした。
それにより、<議会>はたびたび紛糾。ミカが強権を発動し強引に決を取るということが頻繁に起こるようになっていく。
すると、ミカの横暴にますます反発は強まり、若い貴族達は彼女の暴挙を抑えるための方法を探ろうと連日<勉強会>を開き、国家の在り方について白熱した議論を交わした。
そこには、ミカの右腕であるネイサンも<意見聴取>という形で呼ばれ、厳しい質問がぶつけられる。
それはさながら、<国会の代表質問>の様相を呈していたと言えるだろう。
もっとも、ただの揚げ足取りと難癖に終始するどこかの国の議会とは異なり、現在の国家運営の実態について鋭く迫るものであったが。
なにしろ、自分達貴族側のイエスマンぶりについても切り込み、それがいかに国家運営にとっては害毒になるかという点についても突っ込んでいたのだから。
彼ら若い貴族がなぜそこまでできたかと言うと、実はミカの<改革>の際に、それまでの枠組みとは異なる情報交換の場が設けられ、そこで次代を担うことになる彼らのために<勉強会>が頻繁に行われていたのである。
その中で意識改革も図られ、かつ、
『無知と怠惰は国を滅ぼす』
という認識を徹底的に植えつけられ、
『怠け者は損をする』
という実例を見せ付けられてきたのだ。
そこまでやっても意識改革できない者はふるい落とされたりもした。
それがここに来て国政の場でも活かされてきたということだろう。
もっとも、これらを主導したのもミカであったが。
誰しもが<平等>であることを保障できるだけのリソースはこの世界にはまだない。生かす者を選ばなければ皆で共倒れになる。
ならば、自らを厳しく律することができ、真に全体のことを考えられる者を優先して生かすべきだとミカは考えた。それができる者に教育といったリソースについても集中し、人材を育てることも徹底したのだ。
つまり、ミカは、自分に歯向かうことになるであろう者達こそを集中的に育ててきたということになる。
だが同時に、<法>を無視してテロを行う者については、それが何者であっても容赦しなかった。ゆえに、傍目には、恐怖によって国を支配していたようにも見えていただろう。
なおこの頃、<ミカの友人>は、様子見のためにおとなしくしていたので、そちらには影響は及んでいない。
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