透明人間は楽じゃない
私はついに透明人間になった。これで万引きやのぞきがやり放題だと思ってウキウキだったのだが、重大な見落としがあった。それは食べたものが透けて見えて、ウンチまで透けて見えるのだ。
しかし外に出ないわけには行かないので、ある日空きっ腹で道を歩いていたら、ウンチが空中を浮遊していると警察に通報されて、捕まってしまった。そして研究所送りになって、消化器系の研究サンプルとして人体実験を受け、ひどい目にあわされた。
やっとのことで夜中に研究所を抜け出して、家に帰ることができた。
しかし外に出る時が問題だ。今回はコートを着て、顔は包帯をぐるぐる巻きにして、目だけは包帯を巻くと何も見えなくなるのでサングラスをかけて、帽子をかぶると言ういでたちだ。当然ジロジロ見られるので、なんのために透明人間になったのかわからない。
そこで、しばらく飯を食わないで、浣腸をして腹の中を空っぽにした。そしてやっと完全な透明人間になったのだ。
しかし腹が減ってかなわないので、早速コンビニに万引きに行こうとした。普段からエコには心がけているので、エコバッグを持って行こうとして、ハタと気づいた、エコバッグだけが空中を浮遊しているのを見て、人はどう思うだろうか? そこで夜を待ったが、腹が減って腹が減って。やっとよい闇に紛れてコンビニに行ったが、コンビニは当然あかりがついている。そこで全速力で好物のカレーを盗もうとしたのだが、急いでいたので間違って大嫌いなハヤシライスを盗んでしまった。しかし、とにかく腹が減っていたので、それを食った。またしばらくは何も食わないで浣腸をしないといけない。浣腸の補充もしなければいけないので、今度は浣腸の万引きにも行かなくてはいけない。
また腹の中を空っぽにして、完全な透明人間と化した俺は、のぞきをすることにした。ある家に忍び込んで風呂場のドアを開けると、真っ裸の爺さんと鉢合わせになりった。沖縄みあげのお菓子のような物をぶら下げた爺さんが、突然ドアが開いたのに何も不思議がる様子もなく出て来たので、ははあ、この爺さんかなりボケてるなあと思った。しかし最初ののぞきの結果がこれかよ。
最近は『置き配』という便利なシステムが始まっている。そこで俺は食料品から日用品までネット通販の置き配に頼ることにした。そして、今度またよい闇に紛れてのぞきに行こうと思っている。それだけが唯一の楽しみだ。しかし、あの爺さんの沖縄みあげがまぶたにこびり付いている。
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