学園トップの超絶美少女で、アイドル的存在かつ、天使みたいに性格もよくて人気者だがなぜか彼氏はいない女の子(とてもかわいい)に、告白されてしまいました。

青井椎茸

学園トップの超絶美少女で、アイドル的存在かつ、天使みたいに性格もよくて人気者だがなぜか彼氏はいない女の子(とてもかわいい)に、告白されてしまいました。


「す、好きですっ。私と、付き合ってください」


 夕焼けがとても綺麗に見える放課後の屋上。

 蒸し暑かった日中を詫びるように、涼やかな風が俺と彼女の髪を揺らしていく。


 彼女が俺を見上げる頰は、夕焼け色の空に負けず劣らず赤らんでいた。

 そりゃそうだろう。だって告白したのだから。


 授業終わりの放課後、そそくさと帰宅しようと下駄箱を開けた際に落ちてきた白い手紙。

 そこには驚くことに、


『一人で屋上に来てください。お話ししたいことがあります。 ――立花アイカ』


 と書かれてあったのだ。


 立花アイカ。


 その文面と名前を見たとき、俺は驚愕した。

 一体なぜ彼女が。

 まさにそう思った。


 彼女は、一言で言えば学園のアイドルである。

 一年生にもかかわらず、その知名度はとても高い。


 彼女が入学して来た時の騒ぎは、今でも忘れない。俺に非常に気になる話題であったからだ。


 曰く天使。

 曰く女神。


 そんな超絶美少女が入学して来たとの噂を小耳に挟んだ時は「さすがに言い過ぎだろ」と思った。


 しかしながら、女神や天使などという名前で呼ばれていた彼女の姿を、悪友と共に確認しに行き、実際に目の前にした時、俺は納得した。


 あぁ、彼女ならそのように言われるのも仕方ない。


 それほど立花アイカは可愛らしいのだ。俺もそこに反論しようとは思わない。

 だって、紛れもない事実なのだから。


 そんな、まさに学校のアイドル的存在な彼女に、俺はたった今告白されてしまった。


 手紙には『話したいことがあります』とだけしか書かれていなかった。

 故に俺はまさかそんな訳ないだろうと思っていた。

 しかし、それは俺の予想に反し、その『まさか』だったのだ。

 

 放課後の屋上に、下駄箱の中の白い手紙。

 いわゆる『青春の甘酸っぱいアレコレ』を想像しなかったと言えばウソになるが、あり得ないだろうと確信していた。


 だって彼女のような人物が俺に告白してくるなど、天地が逆さまになったとしてもないと思ったからだ。


 が、現に、俺は今、彼女に告白されている。


 ドキドキと俺の心臓は震えていた。

 

「ご、ごめん、聞き間違いかもしれないから、もう一回聞くけどさ、今なんて言った?」


「……」


 俺が聞き返すと、彼女は真っ赤になって俯いてしまった。

 あぁ、なんて可愛いんだ。

 こんなシチュエーションじゃなければ、そう思ったことだろう。

 しかし、今の俺の心中を支配しているのは、むしろ不安や恐怖の類だ。


 あり得ないことが現実に起こる。

 それが怖かった。


「……そ、その、私は、えーと……その」


 彼女は顔をうつむかせたまま、モニョモニョと唇を震わせる。


「……す、き、……って……」


「はぁっ?」


「だからっ! 好きです私と付き合ってくださいって言ったの!」


 勢いに任せたように叫んで、はぁはぁと激しく息を切らず彼女。

 

 ……残念なことに、聞き間違いではないようだ。


 彼女は俺に怒ったような視線を向けてくる。

 その瞳には、怒りか、恥ずかしさからか、涙がたまっていた。


 俺は、本当にどうしたらいいのか分からず、焦る。


「い、いや、まず純粋な疑問なんだけどさ。……なんで俺なんだ?」


「……そ、それは、」


 俺が疑問の目で彼女を見つめると、気まずくなったように目を逸らされる。


「……い、言いたくない……、です」


 彼女はボソボソとか細い声で言った。


 いや、マジで意味がわからないんだが。


 誰か助けてくれ。

 あ、もしかしてドッキリか!?


 ハッとして俺は背後に振り返る。


 思った通りそこには『ドッキリ大成功』という看板を持った悪友たちがいるということもなく、ただただ夕焼け色の空が広がっていた。


 違うのか。じゃあ一体どういうことなんだっ!


 俺は頭を抱える。


 彼女は、俺の前でモジモジと身をよじって、顔をうつむかせている。

 時々俺の方をチラリと見上げては、ハッとして視線を逸らすというのを繰り返していた。


「……ごめん、もう一度確認しておきたいんだけどさ、その、付き合うっていうのは、恋人同士になる的な意味であってる……よな?」


 彼女は控えめにコクコクと頷いた。


 マジか。マジかマジかマジかマジか。


 いや、確かに、漫画や小説なら、こういう風なことになるというのも、あり得るのかもしれないが……。


「マジで俺と恋人になりたいって……?」


「……うん」


 彼女の様子を見るに、冗談というのも考えづらい。


 しかし、そうだとすれば、俺はこういうしかない。


「ごめん。付き合うっていうのは、さすがにな……。確かにこんな可愛い子に告白されたら、男として嬉しいんだろうと思う。可愛いよ。間違いなく世界で一番可愛い」


「っ! な、なな、なっ、そ、そんなこと……っ」


 慌てたようにして、彼女はその顔をさらに真っ赤にする。

 

「性格も天使みたいだし、天使みたいに可愛いし、将来は絶対いいお嫁さんになる」


「う、ぅぅ……」


 彼女は深く顔をうつむかせた。プシューっと恥ずかしさの煙が頭から吹き出しそうな勢いだ。


「でも、お前の告白は、さすがに受けられないだろ」


 そう言うと、突如ときて彼女が俺の腹に抱きついてきた。


「ちょっ、お前何して」


「もう、こうするしかないの……」


 目に涙を溜めた彼女が、上目遣いでジッと俺を見る。


「はぁ? どういう意味だよ」



「だからっ、私が平穏な学校生活を送るには、――もう、に恋人になってもらうしかないの!」



「……いや、だから、意味が分からんってば。

 あのな、いくらお前が俺のことを大好きでもいいよ。俺だってお前のことは好きだよ。むしろ愛してると言ってもいい。

 だけどな、俺たちはだぞ? 説明くらいしてくれたっていいだろうが」


 そう言うと、彼女――世界で一番可愛い俺ののアイカは、ためらいがちに口を開いた。


「そ、その……だから、その……、私……」


「なんだよ」


「告白されすぎて、困ってる、から……」


「……え? なんだって?」


「うぅ……っ、だから言いたくなかったのに、」


 彼女の話によると、マジで身の程知らずの男共に言い寄られ過ぎて困っているとのことだ。


 そこでアイカが思い出したのが、俺のことだ。


 実は、俺とアイカはとある理由により苗字が違う。

 故に、俺とアイカが実の兄妹であるという事実を知る者はほとんどいない。

 知られると絶対面倒なことになるので、なるべく知られないようにしているのだ。


 だからアイカは、俺を虫(おとこ)除けに使おうと考えた。


「そ、その……、お兄ちゃんだったら別に、恋人ってことにしても嫌じゃないし……、お兄ちゃんのことは普通に好きだし、その、ちょうどいいかな、って?」


「ちょうどいいね……。でもそれだと、今度は俺が被害を受けることになりそうだな」


 間違いなく俺は嫉妬の渦に巻き込まれるだろう。

 アイカは可愛いから仕方ないが。


「はぁ、分かったよ」


「えっ、付き合ってくれるのっ?」


「違う。でも、お前のその悩みは何とかしてやる。お兄ちゃんだからな、そんな回りくどいことせずに普通に頼めばいいんだよ。

 お前の頼みだったら、何だって聞いてやるからさ」


「じゃ、じゃあ、私の恋人になって欲しい……んだけど……」


 俺はバカなことを言う妹の小さな額を、デコピンで弾く。


「いたぁっ、うぅーっ、何でも聞いてくれるって言ったのに」


「バカかお前は、何でもってのは言い回しだ」


 かすかに赤くなったおでこを抑えて、不満げに俺をにらむアイカ。


 俺は小さくため息をつくと、屋上の出入り口に向かった。


「あ、お兄ちゃん待ってっ」


「お前に言いよる身の程知らず共の話は、帰るときに聞くからさ。ほら、さっさっと帰るぞ」


「……はぁい」


 渋々と言った様子で俺の後をつけてくる妹であった。







おわり。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学園トップの超絶美少女で、アイドル的存在かつ、天使みたいに性格もよくて人気者だがなぜか彼氏はいない女の子(とてもかわいい)に、告白されてしまいました。 青井椎茸 @aoshitake

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画