第七章 最新の注射方法
新しい注射とは、注射器そのものの変化でした。
今までは、細い注射器に注射針を装着して、インスリンを瓶から吸入して、タロの背中の皮膚を摘まんで注射する。という方法でしたが、新しい注射器は違います。
太いボールペンのような本体で、後ろ側にダイヤルが付いていて、インスリンそのものが本体の中に収めてあります。
注射方法としては、キャップを外し、別の袋の中で密封されている針部分を開封。キャップ付きのまま、回しながら本体へと装着。
後ろのダイヤルで注入するインスリンの量を目盛りで設定して、猫の横腹を消毒綿で消毒をして、針を射して、後ろのダイヤル部分を押す。
ダイヤル部分を押したまま針を抜いて、注射した横腹を再び消毒綿で綺麗にして、これで注入完了です。
針部分にキャップを被せて、まわして外し、本体はキャップを被せて冷蔵庫で保存。
使用済みの針は袋に入れて、病院に行った時に回収してもらいます。
注射そのものが片手で出来る事や、針そのものが極細で、一センチもないほど短く、横腹に針の根本まで注射しても内蔵を傷つける心配もありません。
針を抜くときに、後ろを押しっぱなしにするのは、間違っても猫の体液がインスリンに混ざったりしないようにです。
この方法は、以前に比べてとても楽に注射できるようになり、更にインスリンの効果も二十四時間に延長されていて、タロの嫌いな注射が一日一回となりました。
病院には、週に一度の朝に通っていて、検査の為に、インスリンは帰宅してから注射していたので、病院に行かない日でも、朝に注射してました。
注射が終わると、おやつを貰える。
この約束事をタロなりに覚えたようで、朝、私がリビングに来ると、タロもやってきて「ニャア」と要求してきます。
まあ「おやつ頂戴」と言っているのでしょうけど、注射は割と大人しくさせるようになりました。
タロがおやつを食べていると、コタローも物欲しそうに、椅子の後ろから見ています。
あげないのもかわいそうなので、注射の必要がないコタローにもおやつを与えておりました。
コタローはコタローでちゃっかりしていて、自分のお皿におやつが残っていても、タロのお皿に残っている場合、そちらのおやつを先に食べたりしてました。
目があいてない頃にうちへと貰われてきたタロと違い、コタローは兄弟猫と、母乳を卒業するくらいまでは育ってから拾われてきました。
母の友達が、カラスに襲われている子猫たちを助けた事で、コタローも助けられた。という経緯があります。
兄弟と過ごしていた頃を覚えているのでしょう。
餌の奪い合いを経験しているからこそ、コタローは自分のおやつをなるべくとっておきたい。と考えていたのかもしれません。
注射やおやつにも慣れてきたある日、私は今でもちょっとトラウマになっている出来事を経験しました。
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