衝撃

 放課後の帰り道。


「葦原、一つ聞きたいことがあるんだけどさ」


「あ、待った。情報料ちょうだい」


「おごらねぇぞ。大したことは聞かないからさ」


「じゃあ、神崎の家行っていい?お菓子くらいあるでしょ」


「はいはい、それで妥協するよ。ったく」


 葦原を家に上げ、お菓子とジュースでもてなす。

 つくづく遠慮を知らないやつだ。顔は可愛いのにモテないのも頷ける。


「それで、聞きたいことって?」


「俺の母さんのことなんだけど」


 葦原はわずかに目を細めた。


「神崎さぁ、私のことからかってんの? 記憶喪失じゃないのに、なんでそんなこと聞くの?」


 言葉に詰まる。

 どう説明したものか。ここが俺の記憶の中で失われた記憶を取り戻しに来た、とか言ってもどうせ信じてもらえないだろうしな。いよいよ頭がおかしくなったと思われてしまう。

 だが、嘘をついても仕方がない。真実をありのまま、というわけにもいかないが、ある程度は話さなければ理解してもらえない。


「実は母さんのことが思い出せなくてさ。母さんの名前とか顔とかどこにいるのかとか、全然わかんないんだ。なんでこんなことになったのかもわからない」


 葦原は目を見開き、やがてまつ毛を伏せた。

 しばらく無言が続く。

 やはり葦原は何か知っている。


「神崎、ごめんね……」


「どうして謝るんだ?」


「だって、こんなことになってるなんて思わなかったから……私がもっと気付いてあげてたら……」


「なんだよ、どういうことだよ」


「神崎、お母さんはもういないの」

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