鍵の手がかり

 一通り買い物が済み、フードコートで軽食を取る。

 試着を楽しみ満足そうな葦原。それとは対照的に疲労でうなだれる俺。

 買い物袋がかさばってしょうがない。これから帰らなきゃいけないことを考えると先が思いやられる。


「あー、楽しかったー。また来ようね」


「もう勘弁。次は他の男と行ってくれ」


「ちょっとー、人のことビッチみたいに言わないでくれる? 神崎だから誘ったんだし」


「……ん、悪かったな。まあ、気が向いたらまた付き合ってやるよ」


 結局、手がかりは何も得られなかった。ただ葦原の買い物に付き合っただけで、失われた記憶に繋がりそうなものは何もなかった。

 失われた記憶、か。

 そういえば、一つ心当たりがある。


「葦原さ、俺の母さんと会ったことあるっけ?」


 そう尋ねると、葦原は怪訝そうに首を傾げた。


「当たり前じゃん。私、幼馴染だよ?」


「そ、そうだよな。どんな人か覚えてるか?」


「はぁ? 何、急に。記憶喪失?」


「そうじゃないけど……」


「まあ、美人だよね、神崎ママ。大和撫子って感じ?」


「へぇ」


「マジで変なの」


 怪しまれはしたが、心当たりは確信へと変わった。

 やっぱり母さんのことが思い出せない。名前も容姿も、今どこにいるのかさえわからない。

 でも、なんで母さんなんだろう。レティさんが関係してるのか? 駄目だ、頭が痛くなってきた。

 考えてもわからないものはわからない。ただ疲れるだけだ。


「さて、そろそろ帰るか」

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