チューニング

 獣のボスの乗り心地は、お世辞にもいいとは言えなかった。

 振り落とされないようにしっかりしがみつきながら、吐きそうになるのをなんとかこらえながら、顔を上げればもうアビータの峡谷が目前に迫っていた。

 アビータからの記憶は薄い。

 来た時と同じように飛空艇と馬車を乗り継いだのだろうが、ほぼ無意識の状態でティルナのギルドまで帰ってきた。


 ――睡魔に取り憑かれ、丸一日が経った。


 ひどい筋肉痛は残っているものの、疲労は大分ましになった。そうなると今度は別の欲求を満たしたくなるもので、俺たちは重い身体を引きずりながらレストランへと急いだ。

 テーブルが皿に埋め尽くされ、運ばれてくる料理を見境なく胃の中へとぶち込む。無限に食べられそうな心持ちではあったが、皿を一つ一つ平らげていくにつれて動かす手が緩慢になっていく。


「お腹もいっぱいになってきたし、今まで通りの生活に戻れそうね」


「そうだな。依頼が溜まってる頃だろうし、明日から仕事再開だ」


 バーサーカーの力を取り戻し、体調も戻りつつある。明日になれば本調子に戻るだろう。

 気合を入れていかないとな。これから忙しくなりそうだ。

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